検察官が冒頭陳述の後本件犯罪に関する被害届等と共に、所論前科調書及び素行調書の取調を請求したのに対し、被告人及び弁護人は証拠調に異議がなく、右書類を証拠とすることに同意した為め、順次証拠調が実施せられ、右前科調書及び素行調書は、前記被害届等の本件犯罪に関する証拠書類が取り調べられた後にその取調がなされている場合には、第一審の訴訟手続には何等刑訴二九六条、三〇一条違反のかどはない。
証拠調の請求に際し、検察官がその他の証拠と一括して前科調書や素行調書を提出することは、裁判所に対し被告人につき不利益な予断を抱かしめることになるか
刑訴法296条,刑訴法298条,刑訴法301条,刑訴規則193条
判旨
本件犯罪に関する証拠書類が取り調べられた後に被告人の前科調書等を取り調べることは、刑事訴訟法に違反せず合憲である。また、窃盗の目的物の表示は、事案を特定できる程度に判示されていれば十分である。
問題の所在(論点)
1. 被告人の前科・素行に関する証拠を、犯罪事実の証拠とあわせて取り調べる手続が、刑事訴訟法や憲法に違反するか。2. 窃盗罪の判決において、目的物の表示はどの程度の具体性が求められるか。
規範
被告人の前科や素行に関する証拠の取調べ順序について、本件犯罪事実に関する証拠書類(被害届等)の取調べが先行し、その後に前科調書等の取調べが行われる形式は、刑事訴訟法上適法である。また、窃盗の目的物の表示については、判決において対象を特定できる程度の表示があれば、不明確として違法となることはない。
重要事実
被告人A及びBによる窃盗事件において、第一審の検察官は、冒頭陳述の後に被害届等の本件犯罪に関する証拠書類とともに、前科調書および素行調書の取調べを請求した。被告人及び弁護人はこれに同意し、裁判所は、まず本件犯罪に関する証拠を取り調べた後、順次、前科・素行調書を取り調べた。被告人側は、このような証拠取調べの順序や、判決における窃盗目的物の表示が不明確であることを理由に上告した。
あてはめ
証拠調手続について、記録によれば犯罪事実に関する被害届等の取調べが完了した後に、被告人の前科・素行に関する書類の取調べが行われている。被告人及び弁護人もこの証拠調に異議なく同意しており、予断排除の観点等から訴訟手続に違法があるとはいえない。また、窃盗の目的物の表示については、第一審判決が判示する程度の記載があれば、目的物の同一性を特定し、審判の対象を明確にするものとして十分であり、不明確な点はないと解される。
結論
本件の証拠調手続に刑事訴訟法違反や憲法違反の事由は認められず、判決の目的物表示も適法であるため、上告を棄却する。
実務上の射程
証拠調の順序に関する実務上の指針を示すものである。犯情に関する証拠と被告人の経歴に関する証拠の取調べを峻別し、前者の後に後者を行う実務慣行の適法性を認めている。答案上は、証拠能力や予断排除原則(刑訴法298条以下、規則等)に関連して、適切な取調べ順序が守られているかを検討する際の基礎となる。
事件番号: 昭和24(れ)2483 / 裁判年月日: 昭和25年2月9日 / 結論: 棄却
原判決が各窃盜の事實を認定する證據中に所論の窃盜被害追加届を舉示していること及び論旨に指摘の昭和二四年四月二六日の原審第二回公判調書中の記載部分に「各盜難被害届」「盜難被害品追加届」の記載は存在するが所論の盜難被害追加届の記載が存しないことは所論のとおりである。しかし所論の盜難被害追加届に「…盜まれた品物は一、イデ…ン…