判旨
適法な証拠調べを経ていない証拠を事実認定に用いることは違法であるが、当該証拠が犯罪構成要件に直接関わらない事項の証明資料にすぎず、他の適法な証拠によって犯罪事実が十分に認められる場合には、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するとまでは認められない。
問題の所在(論点)
適法な証拠調べを経ていない証拠を判決の基礎とした場合、常に原判決を破棄すべき違法(刑事訴訟法411条1号)にあたるか。
規範
刑事訴訟法上、証拠調べをしていない証拠を判決の基礎とすることは許されない(証拠裁判主義)。しかし、上告審において原判決に証拠調べ未了の証拠を採用した違法がある場合でも、当該証拠が犯罪の構成要件に直接関係しない事項に関するものであり、かつ他の適法な証拠によって犯罪事実の認定が十分に可能であるならば、判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認めることはできない(刑事訴訟法411条1号参照)。
重要事実
被告人A、Bらの刑事事件において、原判決は、適法な証拠調べを経ることなく「示談書」と題する書類を証拠として採用し、有罪の認定を行った。この示談書は、犯罪構成要件そのものではなく、犯罪の日時に関する証明資料として用いられたものであった。
あてはめ
本件における「示談書」は、犯罪構成要件に該当する事実そのものではなく、犯罪の日時という付随的な事項に関する証明資料にすぎない。また、被告人の犯行自体は、示談書以外の原判決が挙げた他の適法な証拠によって十分に認定が可能である。したがって、証拠調べを経ていない証拠を採用した手続上の違法は存在するものの、これによって直ちに判決の結果に影響を及ぼし、破棄しなければ著しく正義に反するような重大な違法があるとはいえない。
結論
本件各上告を棄却する。原判決に証拠調べをしない証拠を採用した違法はあるが、破棄を要するほどの重大な違法とは認められない。
実務上の射程
証拠裁判主義の原則(刑訴法317条)に反する重大な手続違反があったとしても、それが構成要件に直接関わらない付随的事実の認定に用いられたにすぎず、かつ他の証拠により有罪の結論が揺るがない場合には、刑訴法411条1号の破棄事由には該当しないとする判断枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和25(あ)2850 / 裁判年月日: 昭和27年12月8日 / 結論: 棄却
検察官が冒頭陳述の後本件犯罪に関する被害届等と共に、所論前科調書及び素行調書の取調を請求したのに対し、被告人及び弁護人は証拠調に異議がなく、右書類を証拠とすることに同意した為め、順次証拠調が実施せられ、右前科調書及び素行調書は、前記被害届等の本件犯罪に関する証拠書類が取り調べられた後にその取調がなされている場合には、第…