判旨
被告人の自白を内容とする書面等の証拠調べは、他の証拠の取り調べが終わった後にしなければならないとする刑事訴訟法301条の規定は、被告人の自白よりも先に証人尋問等の他の証拠調べを行う手続を否定するものではない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法301条に基づき、被告人の自白を内容とする書面の証拠調べよりも先に、証人尋問等の他の証拠を調べる手続をとることは、同条が定める証拠調べの順序として適法か。
規範
刑事訴訟法301条は、被告人の自白を内容とする書面又は供述を録取した書面の証拠調べにつき、他の証拠の取り調べが終わった後でなければ、これをしてはならないと規定している。この規定は、証拠調べの順序に関するものであり、予断排除の観点から自白が他の証拠の証明力に不当な影響を及ぼすことを防止する趣旨である。したがって、自白よりも先に他の証拠(証人尋問等)を調べる手続は、同条に適合する正当な証拠調べの手順である。
重要事実
被告人が窃盗等の罪に問われた事件において、第一審裁判所は、まず被害者の店員、保安係、および警視庁巡査の計3名に対する証人尋問を実施した。その後に、被告人の弁解録取書や供述調書といった自白を内容とする証拠書類の取り調べを行った。弁護側は、自白の証拠調べを他の証拠の後に行うべきとした判例があることを根拠に、本件の証拠調べの順序を違法であると主張して上告した。
あてはめ
刑事訴訟法301条は、自白の取り調べを最後に行うことを求めている。本件において、裁判所はまず被害者店員や巡査等の証人3名を尋問しており、これは同条にいう「他の証拠」を先行させたものといえる。その上で、これらの取り調べが終了した後に被告人の弁解録取書や供述調書の証拠調べを行っている。この順序は、自白によって裁判官に予断を生じさせないという同条の趣旨に合致しており、何ら不法な点は認められない。
結論
本件のように証人尋問を先行させ、その後に被告人の自白を内容とする書面を調べる手続は、刑事訴訟法301条に則った正当なものであり、適法である。
実務上の射程
証拠調べの順序(刑訴法301条)に関する基本判例である。答案上は、伝聞例外(321条1項2号後段・3号等)の検討後に、証拠調べの適法性(順序)が問題となる場面で、条文の趣旨(予断排除)に触れつつ、自白が後順序となることの正当性を基礎づける際に活用できる。
事件番号: 昭和27(あ)6892 / 裁判年月日: 昭和29年7月6日 / 結論: 棄却
証録を調べてみると所論の前科取調書は、検事が他の証拠書類とともに冒頭に取調の請求をしたものであるが、その取調は、他の証拠を取り調べた後になされことが認められるから、なんら違法はない。