判旨
公判調書において証拠調べの請求、同意、採用決定及び順序が記載されている場合、個々の書類について具体的な実施状況の明記がなくとも、その順序に従い適法に証拠調べが行われたものと認めるのが相当である。
問題の所在(論点)
公判調書に証拠調べの順序や採用決定の記載がある一方で、個別の証拠調べの実施状況が具体的に記されていない場合に、適法な証拠調べがなされたと認められるか。証拠裁判主義(刑訴法317条)及び証拠調べの手続的適法性が問題となる。
規範
刑事訴訟法に基づく証拠調べの手続において、公判調書(別紙証拠標目書を含む)に、検察官による証拠調請求、それに対する被告人側の同意(刑訴法326条1項)、裁判所の採用決定、及び証拠調べの順位が順次記載されている場合には、特段の事情がない限り、記載された順序に従って適法に証拠調べが行われたものと推認される。
重要事実
被告人が窃盗罪に問われた事案。第一審において、司法警察員作成の被告人供述調書及び現行犯逮捕手続書が証拠として掲げられた。第一審の第一回公判調書には、検察官がこれらを含む証拠の請求をし、弁護人が同意して裁判所が採用決定したこと、並びに証拠調べの順位が記載されていた。しかし、個々の証拠について具体的にどのような方法(朗読等)で証拠調べが実施されたかについては、詳細な記載が欠けていた。
あてはめ
本件では、第一回公判調書に、検察官が別紙証拠標目書記載の通り証拠調べの請求をした旨が記録され、その標目書には問題となった二個の書類が含まれていた。また、裁判官が刑訴法326条1項の同意を問い、各同意を得て採用決定をしたこと、さらに証拠調べの順位まで具体的に付されている。このような公判記録の体裁に照らせば、当該順序に従って必要な証拠調べの実施(提示、朗読等)が行われたと認めるのが相当である。したがって、証拠によらずに事実を認定したとの違法は認められない。
結論
公判調書の記載から、証拠調べが順序に従って実施されたと認められるため、適法な証拠調べの手続を経ており、訴訟法上の違法はない。
実務上の射程
実務上、公判調書の記載から証拠調べの実施を包括的に推認することを認めた射程の長い判例である。答案上は、証拠調べ手続の瑕疵が主張される場面で、公判調書の形式的記載(請求・同意・採用・順位)を根拠として、実質的な証拠調べの実施を肯定する際の論拠として使用できる。
事件番号: 昭和26(あ)3177 / 裁判年月日: 昭和29年2月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白を内容とする書面等の証拠調べは、他の証拠の取り調べが終わった後にしなければならないとする刑事訴訟法301条の規定は、被告人の自白よりも先に証人尋問等の他の証拠調べを行う手続を否定するものではない。 第1 事案の概要:被告人が窃盗等の罪に問われた事件において、第一審裁判所は、まず被害者の…