原判決が各窃盜の事實を認定する證據中に所論の窃盜被害追加届を舉示していること及び論旨に指摘の昭和二四年四月二六日の原審第二回公判調書中の記載部分に「各盜難被害届」「盜難被害品追加届」の記載は存在するが所論の盜難被害追加届の記載が存しないことは所論のとおりである。しかし所論の盜難被害追加届に「…盜まれた品物は一、イデ…ンアン紙(B判)六連時價…であることがわかりましたので追加届書を以て申上げます」(記録一三二丁)「…盜まれた品物は一イ、ンデアン紙(B判)十連時價‥であることが判明致しましたので右の通り事實訂正届書を以て申上げます」(記録一三三丁)と記載されていることは記録上明らかである。されば所論盜難被害追加届はその實盜難被害品追加届に外ならぬものと認められるから原審第二回調書中に記載された「盜難被害品追加届」に包含されて適法に證據調を經たものであることを推認するに充分である。從つて原判決には論旨のような證據調をした形跡のない書類を他の證據と綜合して犯罪事實を認定した違法は存しない。
「盜難被害追加届」を事實認定の資料としながら證據調では「盜難被害品追加届」として公判調書に記載した場合の判決の正否
舊刑訴法337條,舊刑訴法338條
判旨
証拠調べの対象となった書面の名称が記録上の記載と厳密に一致しなくても、内容が同一であると認められる場合には、適法な証拠調べを経たものと解される。
問題の所在(論点)
公判調書上の記載名称と判決が援用した書面の名称が一致しない場合に、適法な証拠調べの手続きを経たものと認められるか。証拠によらない事実認定(証拠裁判主義)の成否が問題となる。
規範
判決において証拠として採用できるのは、適法な証拠調べの手続きを経た証拠に限られる。ただし、公判調書等の記載において当該書面の名称が必ずしも正確に引用されていない場合であっても、記録上の内容から判断して、実際に証拠調べがなされた書面と実質的に同一性が認められる場合には、証拠調べの手続きを経ていない証拠によって事実を認定した違法(証拠によらない事実認定)は存しない。
重要事実
被告人が窃盗罪に問われた事案。原判決は、事実認定の証拠として「盗難被害追加届」を挙示していたが、原審の公判調書には「各盗難被害届」「盗難被害品追加届」との記載はあるものの、語句が厳密に一致する「盗難被害追加届」との記載は存在しなかった。このため、弁護人は、証拠調べを経ていない書類に基づいて事実を認定した違法があるとして上告した。
あてはめ
記録を確認すると、問題の「盗難被害追加届」には、盗まれた品物として「インデアン紙(B判)六連」等の明細が記載されている。この内容は、公判調書に記載された「盗難被害品追加届」と実質的に同一であると認められる。したがって、名称の些細な相違にかかわらず、当該書面は「盗難被害品追加届」として包含され、適法に証拠調べの手続きを経たものと推認するのが相当である。
結論
本件書面は適法な証拠調べを経たものといえるため、原判決に証拠によらない事実認定の違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
証拠調べ手続きの厳格性を問い直すものではなく、公判調書の記載と証拠の同一性が実質的に確認できる場合の判断手法を示す。実務上は、判決書と調書の名称が不一致であっても、内容から同一性が明らかならば違法とはならないとする論理として活用できる。ただし、あくまで旧刑訴法下の判断であり、現行法下でも証拠の特定には慎重さが求められる点は変わらない。
事件番号: 昭和27(あ)3485 / 裁判年月日: 昭和29年3月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】第一審判決が事実認定の証拠とした書面と、公判調書に証拠調べが行われた旨の記載がある書面とが、作成名義等の表示において多少の差異があっても、記録上同一の書類と認められる限り、証拠手続に違法はない。 第1 事案の概要:第一審判決は、事実認定の証拠として「C提出の盗難被害届」を挙げた。一方、第一審第一回…