判旨
業務上横領罪において、同一の業務上の占有という状況下で反復して行われた複数の領得行為は、包括して一罪(包括一罪)として認定することが可能である。
問題の所在(論点)
業務上横領罪において、数回にわたる領得行為が行われた場合、それらを包括して一罪として認定することが許されるか(刑法253条の罪数論)。
規範
同一の犯意に基づき、かつ時間的・場所的に近接した状況下で、同一の業務上占有にかかる財物を反復して領得する行為は、各行為を個別の犯罪とせず、業務上横領の包括一罪として認定するのが相当である。
重要事実
被告人が、業務上の占有に係る財物を領得した事案において、第一審判決は判示第一及び第二の事実につき、それぞれ個別の罪としてではなく、一連の包括的な一罪として認定処断した。これに対し弁護人は、数個の犯罪として併合罪の判示方法を用いるべきであるとして判例違反を主張した。
あてはめ
本件では、判示第一及び第二の事実は、それぞれ同一の業務上の地位に基づき、一定の期間内に継続して行われたものである。このように同一の法的評価を受けるべき一連の行為については、併合罪として処理するのではなく、業務上横領の包括一罪として認定・処断するのが妥当である。
結論
被告人の各行為を業務上横領の包括一罪と認定した判断に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
横領や背任、窃盗などの領得罪において、同一態様の行為が反復される場合に包括一罪の構成をとる際の根拠となる。答案上は、数個の行為が独立した犯罪か、一つの犯罪の構成部分かを画定する場面(訴因の特定や罪数評価)で活用する。
事件番号: 昭和29(あ)1742 / 裁判年月日: 昭和31年7月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】業務上横領罪において、同一の機会または継続した犯意に基づき、数回にわたり金員を横領した行為について、原判決が包括一罪と解した判断を維持し、併合罪とする主張を退けた。 第1 事案の概要:被告人が業務上占有する他人の金員を、複数回にわたって横領した行為について、原判決はこれを包括一罪として認定した。こ…