判旨
包括一罪を構成する数個の行為のうち、個々の行為について独立した補強証拠を要するか。判例は、包括一罪を全体として認定する場合、個々の行為ごとに補強証拠を要せず、全体としての補強証拠があれば足りるとした。
問題の所在(論点)
包括一罪を構成する数個の犯罪的行為のうち、特定の行為について独立した補強証拠が存在しない場合に、自白のみで当該事実を認定することが許されるか(補強証拠の範囲)。
規範
憲法38条3項及び刑訴法319条2項にいう補強証拠の要否について、包括一罪と認定される事案においては、罪を構成する個々の行為ごとに独立した補強証拠を必要とするものではなく、自白以外の補強証拠を総合して包括一罪としての犯罪事実を全体的に認定できれば足りる。
重要事実
被告人は、総額11万8,700余円の着服横領(業務上横領罪)の事実に問われ、第一審判決はこれを包括一罪として認定した。弁護人は、そのうち1万円の横領行為について独立の補強証拠がなく、被告人の自白のみで認定されているとして違憲・違法を主張し、上告した。第一審では、被告人の自白のほかに、司法警察員作成の各参考人の供述調書や、押収された証拠物件が補強証拠として示されていた。
あてはめ
本件において、第一審判決は11万8,700余円の横領行為を全体として包括一罪と認定している。この場合、挙示された司法警察員作成の各供述調書や証拠物件等の補強証拠を総合すれば、判示された包括一罪を全体的に認定することが可能である。したがって、特定の1万円の行為のみを切り離して、それに対する独立した補強証拠の欠如を理由に認定の不当を訴えることは、包括一罪の認定を前提とする限り理由がない。
結論
包括一罪として認定される場合、個々の行為ごとに独立した補強証拠は不要であり、全体として補強証拠が備わっていれば、自白に基づき犯罪事実を認定できる。
実務上の射程
業務上横領や常習特殊窃盗などの包括一罪において、個別の実行行為すべてについて直接的な裏付け証拠がない場合でも、自白と全体的な状況証拠(補強証拠)があれば有罪認定が可能であることを示す。実務上は、犯罪事実の同一性が認められる範囲において補強証拠の機能を緩和する法理として活用される。
事件番号: 昭和26(あ)4015 / 裁判年月日: 昭和28年3月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法38条3項が要求する自白の補強証拠は、犯罪事実の全部にわたって存在することを要するものではなく、自白の真実性を保障し得る証拠があれば足りる。 第1 事案の概要:被告人が自白をしている刑事事件において、第一審判決が有罪を宣告した。弁護人は、第一審判決には被告人の自白を裏付ける補強証拠が不足してお…