判旨
複数の犯行が包括一罪を構成するか否かは、証拠関係に照らして判断されるべきであり、事実関係として一罪を構成すると認められない場合には、併合罪として処理される。
問題の所在(論点)
複数の犯罪的行為について、証拠上包括一罪として一個の刑罰評価に服すべきものと認められるか、あるいは別罪として併合罪(刑法45条前段)の関係に立つか。
規範
包括一罪の成否については、個々の行為の態様、時間的・場所的近接性、及び犯意の単一性等の諸要素を総合考慮し、社会通念上一個の犯罪として評価できるか否かによって判断する。
重要事実
被告人が複数の犯罪行為に及んだとされる事案において、弁護人はこれらの行為が包括一罪を構成すると主張して上告したが、原審までの認定事実によれば、包括一罪を構成するに足りる証拠上の裏付けが欠如していた。
あてはめ
本件記録上の証拠を精査しても、個々の犯罪行為を一つの包括的な犯罪として一括して評価すべき特段の事情は認められない。証拠関係に基づき、本件犯罪を包括一罪と認めることはできないため、別個の犯罪として処理した原判決に不当な点はない。
結論
本件犯罪を包括一罪と認めることはできず、併合罪として処理されるべきであり、上告は棄却される。
実務上の射程
罪数論において包括一罪の成否が争われる場合、形式的な主張のみならず、具体的な証拠に基づく事実認定が不可欠であることを示す。実務上は、犯意の単一性や継続性を立証する事実の有無が決定的な分水嶺となる。
事件番号: 昭和28(あ)2816 / 裁判年月日: 昭和30年10月14日 / 結論: 棄却
市役所の税務課職員が、市税滞納者から徴収して業務上保管中の滞納税金を連続して着服横領した場合に、その犯行は二年余の長期間に五〇回余り行われたもので各個の犯行が必ずしもはなはだ近接しているものではなく、犯行の共犯者も時によ相異して行為の態様が必ずしも同一ではないし、また各種滞納税金を徴収保管するに従い随時自己の必要に応じ…