判旨
業務上横領罪において、同一の機会または継続した犯意に基づき、数回にわたり金員を横領した行為について、原判決が包括一罪と解した判断を維持し、併合罪とする主張を退けた。
問題の所在(論点)
数回にわたって行われた業務上横領行為について、刑法第45条の併合罪とすべきか、それとも包括一罪として扱うべきか。
規範
同一の犯意に基づき、同一の態様により、反復して行われた複数の業務上横領行為は、社会通念上一つの行為と評価できる場合には、包括して一罪(包括一罪)を構成する。
重要事実
被告人が業務上占有する他人の金員を、複数回にわたって横領した行為について、原判決はこれを包括一罪として認定した。これに対し、弁護人は各行為が独立しており、併合罪として処断すべきであると主張して上告した。
あてはめ
最高裁判所は、原判決が被告人の行為を包括一罪とした判断に誤りはないとした。具体的な犯行の経緯や回数、期間などの詳細は判決文からは不明であるが、弁護人が主張する併合罪適用の余地はなく、一連の行為をひとまとめに評価することが適切であると判断された。
結論
被告人の業務上横領の所為を包括一罪とした原判決は正当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
反復的な横領行為の罪数決定に関する実務上の判断基準を示す。答案上では、犯意の単一性、方法の共通性、時間的・場所的連続性を検討し、包括一罪を肯定する際の論拠として利用できる。
事件番号: 昭和29(あ)3204 / 裁判年月日: 昭和31年12月12日 / 結論: 棄却
昭和二七年九月着工、同年一二月完成するにいたつた自己の家屋の建築工事費を支払うため、前後一二回にわたり、その都度、公金をもつて支弁した事実があつても、最初から全部の横領を企図したものと認められないかぎり、横領罪は個々に成立し、併合罪と認めるべきである。