拘置所長が,死刑確定者から再審請求の弁護人宛ての信書の発信を申請されたのに対し,刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律139条2項の規定により発信を許すことができないものとして当該信書を返戻した行為は,便箋7枚から成る当該信書の1枚目に支援者ら4名の氏名,住所等が記載され,2枚目以降に専ら当該支援者らに対する連絡事項等が支援者らごとに便箋を分けて記載されていたものであり,当該死刑確定者がその全部を当該弁護人宛ての信書として発信しようとしたことに拘置所の規律及び秩序の維持の観点から問題があったことなど判示の事情の下においては,国家賠償法1条1項の適用上違法であるとはいえない。
拘置所長が死刑確定者から発信を申請された信書を返戻した行為が国家賠償法1条1項の適用上違法であるとはいえないとされた事例
刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律139条2項,国家賠償法1条1項
判旨
死刑確定者が、弁護士を名宛人とする信書に第三者(支援者等)宛ての連絡事項等を記載した書面を同封して発信を申請した場合において、当該部分は名宛人との「交友関係の維持」等の必要性が認められず、かつ刑事施設の規律及び秩序を害するおそれがあるとした拘置所長の判断に不合理な点はない。したがって、同信書の発信を許さず返戻した行為は、国家賠償法1条1項の適用上違法ではない。
問題の所在(論点)
死刑確定者が、特定の相手方(弁護士)を名宛人としつつ実質的に第三者への転送を目的とする内容を同封した信書の発信を申請した場合に、刑事収容施設法139条2項に基づきこれを不許可(返戻)とした拘置所長の処置が国家賠償法1条1項にいう違法な行為にあたるか。
規範
刑事収容施設法139条2項に基づく信書の発受の許可につき、同条所定の「交友関係の維持その他その発受を必要とする事情」の有無は、当該信書の「発受の相手方」との関係で検討されるべきである。また、同条項に基づく不許可等の判断は、刑事施設の規律及び秩序を害するおそれがあるか否か等の観点から、施設長の合理的な裁量に委ねられる。
重要事実
死刑確定者であるXは、再審請求の弁護人aに宛てた信書(本件信書)の発信を申請した。本件信書は、1枚目にaへの近況報告等が記載されていたが、2枚目から7枚目には、aを介して第三者である支援者ら4名に転送することを目的とした、支援者ら各自への連絡事項や感謝の言葉が便箋を分けて記載されていた。大阪拘置所長は、本件信書が死刑確定者の外部交通制限の潜脱を図るものであり、拘置所の規律及び秩序を害するおそれがあるとして、本件信書を返戻した。
あてはめ
まず、本件信書のうち支援者らに宛てた部分は、発信の相手方であるa弁護士との「交友関係の維持」に関わるものでないことは明らかである。次に、Xが支援者ら各自宛ての信書として個別に申請せず、一括してa宛ての信書に含めて発信しようとしたことは、刑事施設の規律及び秩序の維持の観点から問題がある。そのため、本件信書の発信を許可した場合に「拘置所の規律及び秩序を害するおそれ」があるとした施設長の判断に不合理な点は認められず、裁量の範囲内といえる。したがって、義務に違反した違法な公権力の行使とは解されない。
結論
本件各信書の返戻行為は、国家賠償法1条1項の適用上、違法ではない。
実務上の射程
判決文からは不明(損害論については判断を要せず、請求棄却が維持された)。
事件番号: 平成15(オ)422 / 裁判年月日: 平成18年3月23日 / 結論: 破棄自判
1 監獄法46条2項は,具体的事情の下で,受刑者のその親族でない者との間の信書の発受を許すことにより監獄内の規律及び秩序の維持,受刑者の身柄の確保,受刑者の改善,更生の点において放置することのできない程度の障害が生ずる相当のがい然性があると認められるときに限り,この障害の発生防止のために必要かつ合理的な範囲においてのみ…
事件番号: 平成7(行ツ)66 / 裁判年月日: 平成11年2月26日 / 結論: 棄却
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