死刑確定者又はその再審請求のために選任された弁護人が再審請求に向けた打合せをするために刑事施設の職員の立会いのない面会の申出をした場合に,これを許さない刑事施設の長の措置は,上記面会により刑事施設の規律及び秩序を害する結果を生ずるおそれがあると認められ,又は死刑確定者の面会についての意向を踏まえその心情の安定を把握する必要性が高いと認められるなど特段の事情がない限り,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用して死刑確定者の上記面会をする利益を侵害するだけではなく,上記弁護人の固有の上記面会をする利益も侵害するものとして,国家賠償法1条1項の適用上違法となる。
死刑確定者又はその再審請求のために選任された弁護人が再審請求に向けた打合せをするために刑事施設の職員の立会いのない面会の申出をした場合にこれを許さない刑事施設の長の措置が国家賠償法1条1項の適用上違法となる場合
刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律第2編第2章第11節第2款 面会,刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律121条,刑訴法39条1項,刑訴法440条1項,国家賠償法1条1項
判旨
死刑確定者と再審請求弁護人との秘密面会を許さない刑事施設の長の措置は、施設の規律・秩序を害するおそれや、死刑確定者の心情安定把握の必要性などの特段の事情がない限り、裁量権の逸脱・濫用として国家賠償法上違法となる。
問題の所在(論点)
死刑確定者と再審請求弁護人との再審準備段階における秘密面会の拒否が、刑事施設の長の裁量権の逸脱・濫用(国家賠償法1条1項)にあたるか。特に、再審請求弁護人に秘密面会の「固有の利益」が認められるかが問題となる。
規範
刑事収容施設法121条ただし書の裁量権行使にあたり、刑事施設の長は死刑確定者の「正当な利益」を尊重すべき職務上の義務を負う。再審請求弁護人の援助を受ける機会を実質的に保障する必要性から、死刑確定者は再審請求前の打合せ段階でも秘密面会の利益を有し、これは弁護人にとっても十分な活動に不可欠な「固有の利益」である。したがって、秘密面会の申出に対し、①施設の規律・秩序を害するおそれがある、又は②死刑確定者の心情の安定を把握する必要性が高いなどの「特段の事情」がない限り、これを許さない措置は、裁量権の範囲を逸脱・濫用したものとして国家賠償法1条1項の適用上違法となる。
重要事実
死刑確定者X1と、その再審請求弁護人として選任された弁護士X2・X3は、再審に向けた打合せのために広島拘置所長に対し、職員の立会いのない秘密面会を3回にわたり求めた。X1は、事前の職員との面接で「心情面での不安要素はない」旨を述べており、また弁護方針の相談や精神鑑定の意向確認といった具体的な打合せの必要性があった。しかし、拘置所長はいずれの際も秘密面会を認めず、立会いのある一般面会のみを許容した。これに対しXらは、本件各措置により精神的苦痛を被ったとして、国に対し損害賠償を求めた。
あてはめ
本件において、被上告人らは再審請求に向けた具体的な打合せのために秘密面会を申し出ている。これに対しX1は、事前の面接で再審準備に関し心情面の不安はない旨を述べていた。また、判決文中の事情を勘案しても、秘密面会によって拘置所の規律・秩序が害される具体的なおそれや、X1の心情安定を特に注視すべき切迫した必要性があったとは認められない。すなわち、本件において「特段の事情」は存在しない。それにもかかわらず秘密面会を一律に拒んだ拘置所長の措置は、死刑確定者の秘密面会をする利益のみならず、再審請求弁護人の固有の利益をも侵害するものであると評価される。
結論
本件各措置は、拘置所長が裁量権の範囲を逸脱・濫用したものとして、被上告人ら全員に対する関係で国家賠償法1条1項上違法となる。
実務上の射程
再審請求弁護人について、刑訴法39条の秘密交通権の類推ないし同条の趣旨に照らした「固有の利益」を認めた点に大きな意義がある。答案上は、接見交通権の制限の文脈ではなく、刑事収容施設法121条ただし書の解釈(行政裁量の逸脱濫用)の問題として論じるべきである。
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