一 受刑者の提起した民事訴訟事件における右受刑者の訴訟代理人である弁護士が,本人尋問の準備等のために必要であるとして三〇分を超える接見の許可を申請したのに対し,接見時間を三〇分以内に制限して接見を許可した刑務所長の処分は,右受刑者には親族との接見とは別に訴訟代理人である弁護士との間で原則として月二回の接見が許可されており,他方,当該刑務所は多数の長期刑の受刑者を収容していて接見業務が繁忙で,申請どおりの接見を許可した場合には他の受刑者との間の処遇の公平を害し,接見業務に支障が生ずるおそれがあったなど判示の事情の下においては,刑務所長の裁量権の範囲を逸脱し,又は,これを濫用したものとはいえない。 二 受刑者が収容先の刑務所保安課職員に暴行を加えられたこと等を理由として提起した国家賠償請求事件における右受刑者の訴訟代理人である弁護士が,事実調査等のためとして刑務所職員の立会いなしの接見の許可を申請したのに対し,刑務所職員の立ち会いを条件として接見を許可した刑務所長の処分は,右受刑者が,客観的にはその様な事実を認め難いにもにもかかわらず,正常な姿勢で座れないなどと主張して,居房内において床に転ぶような姿勢を長時間にわたって続け,また,職員に対して反抗的な態度を継続して度々懲罰処分を受けており,不測の事故を防止するなどのため刑務所職員を接見に立ち会わせる必要性が特に大きかったなど,判示の事情の下においては,刑務所長の裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したものとはいえない。 (一,二につき反対意見がある。)
一 受刑者とその訴訟代理人である弁護士との接見の許可につき刑務所長が接見時間を三〇分以内に制限したことが裁量の範囲内であるとされた事例 二 受刑者とその訴訟代理人である弁護士との接見の許可につき刑務所長が刑務所職員の立会いを条件としたことが裁量の範囲内であるとされた事例
監獄法45条,監獄法50条,監獄法施行規則121条,監獄法施行規則124条,監獄法施行規則127条1項,監獄法施行規則127条3項
判旨
受刑者と弁護士との接見において、所長が接見時間を30分に制限し、又は職員を立ち会わせることは、特段の事情がない限り、監獄法上の裁量権の範囲内として国家賠償法上の違法を構成しない。
問題の所在(論点)
刑務所長が受刑者と代理人弁護士との接見に対し、接見時間の制限や職員の立会いを付すことが、監獄法に基づく裁量権の逸脱・濫用として国家賠償法上違法となるか。
規範
刑務所における接見の態様(時間・立会いの有無)は、施設運営の正常化、受刑者間の公平、規律・秩序維持、適切な処遇の実施という目的から、刑務所長の裁量に委ねられる。この判断は、社会通念上著しく妥当を欠き、裁量権の範囲を逸脱又は濫用したと認められる場合でない限り、国家賠償法1条1項の違法とはならない。この理は、相手方が代理人弁護士であっても同様である。
事件番号: 平成10(オ)528 / 裁判年月日: 平成12年9月7日 / 結論: 棄却
監獄法施行規則一二一条本文、一二七条一項本文は、憲法一三条、三二条に違反しない。
重要事実
受刑者Xは、国を被告とする国家賠償請求訴訟を提起し、その代理人弁護士らと接見を申請した。徳島刑務所長は、本人尋問の準備等を目的とした接見について、規則の原則通り「30分以内」の制限を付し(本件接見1・2)、また、刑務所職員の暴行を主張する訴訟の調査を目的とした接見について「職員の立会い」を条件とした(本件接見3)。Xは、これらの制限により接見の機会を違法に制約されたとして国家賠償を請求した。
あてはめ
(1)時間制限について、Xには既に月2回程度の頻回な接見機会が与えられており、30分を超える接見を認めれば他の受刑者との公平を害し業務に支障を来す恐れがあった。ゆえに、尋問準備という目的を考慮しても、原則通りの時間制限は著しく妥当を欠くとはいえない。(2)立会いについて、Xは過去に職員への暴行や反抗的態度で頻繁に懲罰を受けており、不測の事故防止や動静把握の必要性が高かった。接見目的が刑務所内の事実調査であっても、立会いを条件としたことが著しく妥当を欠くとはいえない。
結論
所長の各処分は裁量権の範囲内であり、国家賠償法上の違法性は認められない。
実務上の射程
受刑者の弁護士接見についても、刑事被告人の接見交通権(刑訴法39条1項)のような強力な保障は及ばず、行刑上の規律や管理の必要性が優先されることを示した。民事訴訟準備のための接見であっても、原則として監獄法令(現:刑事収容施設法)の枠内での制約を肯定する実務上の指針となる。
事件番号: 平成29(受)990 / 裁判年月日: 平成30年10月25日 / 結論: 破棄差戻
刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律79条1項2号に該当するとして保護室に収容されている未決拘禁者との面会の申出が弁護人又は弁護人となろうとする者からあった場合に,その申出があった事実を未決拘禁者に告げないまま,保護室に収容中であることを理由として面会を許さない刑事施設の長の措置は,未決拘禁者が精神的に著しく不…
事件番号: 平成5(オ)1485 / 裁判年月日: 平成12年3月17日 / 結論: 棄却
弁護人が警察署に赴き勾留中の被疑者との接見の申出をしたのに対し、申出を受けた留置主任官が、接見の日時等を指定する権限のある検察官から被疑者と弁護人との接見についていわゆる一般的指定書が送付されていたのに弁護人が具体的指定書を所持していなかったので、右検察官に連絡して指示を受けるために三度にわたり検察庁に電話をしたが、右…