弁護人の事務所、検察庁及び被疑者が勾留されている警察署の位置関係などから、検察庁において接見指定書を受領して右警察署に持参することが弁護人にとって過重な負担となるものではなく、弁護人が申し出た接見の日時までに相当の時間があるために、弁護人が検察庁まで接見指定書を受け取りに行くことにしても接見の開始が遅れることはなく、検察庁から弁護人の事務所に対して接見指定書をファクシミリで送付することができないなど判示の事情の下においては、接見指定書を交付する方法により接見の日時等を指定しようとして、弁護人に対し検察庁において接見指定書を受領するよう求め、その間右指定をしなかった検察官の措置に違法があるとはいえない。 (反対意見がある。)
弁護人からの被疑者との接見の申出に対し書面を交付する方法により接見の日時等の指定をしようとした検察官の措置が違法とはいえないとされた事例
国家賠償法1条1項,刑訴法39条1項,刑訴法39条3項
判旨
検察官による接見日時の指定方法は、著しく合理性を欠き、迅速かつ円滑な接見交通を害さない限り、接見指定書の受領・持参を求めることも許容される。また、指定権限のない留置官等が、権限のある検察官への連絡や指示を待つ間、合理的な範囲で接見を待機させることも違法ではない。
問題の所在(論点)
1. 指定権限のない捜査機関が、指示を仰ぐために弁護人を待機させることが刑訴法39条3項に違反するか。 2. 検察官が接見指定書の受領・持参を要求する指定方法が、同項の裁量を逸脱し違法となるか。
規範
1. 刑訴法39条3項にいう「捜査のため必要があるとき」とは、接見を認めると取調べの中断等により捜査に顕著な支障が生ずる場合に限られる。これには、現に取調べ中である場合のほか、間近い時に取調べ等を行う確実な予定があり、接見を認めると予定通りの開始が困難になる場合も含まれる。 2. 接見日時の指定方法は捜査機関の合理的裁量に委ねられ、口頭のみならず接見指定書の交付によることも許される。ただし、その方法が著しく合理性を欠き、迅速かつ円滑な接見交通を害する結果となる場合は違法となる。 3. 指定権限のない捜査機関が、権限ある機関に連絡・指示を仰ぐための合理的な範囲内の待機は許容される。
重要事実
恐喝未遂容疑で勾留中の被疑者の弁護人が、警察署の留置場にて接見を申し出たが、留置官(指定権限なし)に検察官への連絡を理由に待機を求められた。その後、検察官は接見を認めたものの、接見指定書を検察庁まで取りに来て持参することを要求した。弁護士事務所、検察庁、警察署はいずれも自動車で10分内外の距離にあった。弁護人はこれを接見交通権の不当な制限であるとして国家賠償を請求した。なお、申出時点では、間近い時に取調べの確実な予定があった。
あてはめ
1. 留置官は指定権限を有しないため、権限ある検察官に連絡し指示を受ける手続が必要である。その間の待機は合理的範囲内であり、違法とはいえない。 2. 本件では、事務所・検察庁・警察署が近距離にあり、事務員による受領も許容されていたことから、指定書の受領・持参が弁護人にとって過重な負担であったとはいえない。また、申出時に取調べの確実な予定があるなど直ちに接見できない状況にあったため、受領のために接見開始が遅れたともいえない。したがって、指定方法は著しく合理性を欠くものとは認められない。
結論
警察官および検察官の措置はいずれも刑訴法39条3項に違反せず、国家賠償法上の違法性も認められないため、請求は棄却される。
実務上の射程
接見交通の「時間的指定」の適法性判断のリーディングケース。接見指定書持参の要求は、地理的状況や緊急性等の個別事情に照らして判断される。実務上は、取調べ予定の「確実性」と指定方法の「合理性」が争点となるため、事案の具体的距離や時間の事実を拾う際の基準として用いる。
事件番号: 平成7(オ)105 / 裁判年月日: 平成12年6月13日 / 結論: その他
一 弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者から被疑者の逮捕直後に初回の接見の申出を受けた捜査機関は、即時又は近接した時点での接見を認めても接見の時間を指定すれば捜査に顕著な支障が生じるのを避けることが可能なときは、留置施設の管理運営上支障があるなど特段の事情のない限り、被疑者の引致後直ちに行う…