弁護人が午前中に警察署に赴いて勾留中の被疑者との接見の申出をし検察官に電話で即時又は昼食時間中の接見を求めたが、被疑者が現に取調べ中であり、勾留の満期を控えて、右取調べが昼食時間を挟んで夕方まで続く可能性があり、昼食時間の開始と終了の時刻及び午後の取調べの終了時刻を予測することが不可能であったため、検察官が接見の日時を翌日に指定する意向を示したところ、弁護人が即時又は昼食時間中の接見に固執して当日の取調べ終了後又は翌日以降の接見を希望せず間もなく警察署を退去したなど判示の事実関係の下においては、接見の日時を翌日に指定しようとして、即時又は当日の昼食時間中若しくはその直後の接見を認めなかった検察官の措置に違法があるとはいえない。 (反対意見がある。)
弁護人からの被疑者との接見の申出に対しその日時を翌日に指定しようとして即時又は当日の昼食時間帯の接見を認めなっかた検察官の措置が違法とはいえないとされた事例
国家賠償法1条1項,刑訴法39条1項,刑訴法39条3項
判旨
接見指定の要件である「捜査のため必要があるとき」とは、接見を認めると取調べの中断等により捜査に顕著な支障が生ずる場合に限られる。取調べ中や間近い時の取調べ予定がある場合は原則としてこれに該当し、勾留満期間近で終了時刻が予測できない状況下では、昼食時間中の接見を認めず翌日に指定することも適法である。
問題の所在(論点)
取調べ中または取調べ予定がある場合に、即時または昼食時間中の接見を認めず、翌日以降を指定する措置が、刑訴法39条3項の「捜査のため必要があるとき」の要件を満たし、適法か。
規範
刑訴法39条3項本文の「捜査のため必要があるとき」とは、接見を認めると取調べの中断等により捜査に顕著な支障が生ずる場合に限られる。具体的には、①現に取調べ中、②実況見分・検証への立会い中、③間近い時に右取調べ等をする確実な予定があり、接見を認めれば取調べ等の開始が遅れるおそれがある場合、原則としてこれに該当する。指定にあたっては、弁護人と協議し、できる限り速やかな日時を指定して防御の準備をさせる措置を講じなければならない。
重要事実
弁護人である上告人らが、勾留満期を数日後に控えた被疑者らとの接見を申し出た。当時、被疑者らは取調べ中、または昼食休憩を挟んで午後の取調べが確実な予定であった。検察官は、取調べの終了時刻が予測不可能であり、かつ身柄拘束中の被疑者にとって食事・休息が重要であるとして、即時または昼食時間中の接見を認めず、翌日以降の日時を指定しようとした。これに対し、弁護人らが即時または昼食時間中の接見に固執して協議が調わず、接見が実施されなかったため、国家賠償を請求した。
あてはめ
本件各接見申出時、被疑者らは取調べ中か、間近い時に取調べをする確実な予定があった。当時、捜査官による取調べは勾留満期を控えた最終段階であり、終日継続する可能性が高く、終了時刻の予測も不可能であった。このような状況下では、接見を認めれば取調べの中断等により捜査に顕著な支障が生じたといえる。また、被疑者にとって食事・休息の時間は重要であり、これを確保する必要性も考慮すれば、即時や昼食時間中の接見を避け、翌日の日時を指定しようとした検察官の判断は、指定権の行使として合理的な範囲内にある。
結論
検察官が接見の日時を翌日に指定しようとした措置に違法はなく、国家賠償法上の違法性は認められない。
実務上の射程
接見指定権行使の適法性判断のリーディングケース。答案では、まず「顕著な支障」という規範を立て、本件のような「勾留満期直前」「取調べの継続性・予測困難性」「食事・休息の必要性」という事実を拾って、指定の合理性を基礎づける際に用いる。ただし、反対意見が示す通り、昼食時間を当然に取調べの一部とみなすのではなく、個別具体的に「顕著な支障」を検討する姿勢が重要である。
事件番号: 平成7(オ)105 / 裁判年月日: 平成12年6月13日 / 結論: その他
一 弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者から被疑者の逮捕直後に初回の接見の申出を受けた捜査機関は、即時又は近接した時点での接見を認めても接見の時間を指定すれば捜査に顕著な支障が生じるのを避けることが可能なときは、留置施設の管理運営上支障があるなど特段の事情のない限り、被疑者の引致後直ちに行う…