1 代用監獄である警察署に勾留中の被疑者甲乙について「接見等の指定に関する通知書」を発した検察官が,留置担当官から弁護人が甲との接見の申出をしたことの連絡を受けて約40〜45分後に,乙との接見の申出をしたことの連絡を受けて約34分後にそれぞれ接見指定をしない旨の回答をしたことは,甲については弁護人が閉庁日(土曜日)に事前の連絡なく突然に警察署に赴いたものであり,乙については弁護人が担当検察官の登庁前に事前の連絡なく突然に警察署に赴いたものであるため,いずれも担当検察官への連絡が直ちには取れなかったこと,担当検察官は連絡を受け次第速やかに回答をしたことなど判示の事情の下では,これを違法ということはできない。 2 代用監獄である警察署に勾留中の被疑者について弁護人から接見の申出を受けた留置担当官が,検察官から「接見等の指定に関する通知書」が発せられていたことを失念して接見指定書の有無を確認しないまま接見を開始させたが,その直後にこれに気付き,検察官に対して接見の申出があったことを連絡するため直ちに接見を中断させた措置は,抵抗の姿勢を示した被疑者の左腕をつかんで接見室から連れ出したなどの態様等を考慮しても,これを違法ということはできない。 (2につき,反対意見がある。)
1 代用監獄である警察署に勾留中の各被疑者について「接見等の指定に関する通知書」を発した検察官が留置担当官から弁護人が接見の申出をしたことの連絡を受けて約40〜45分後又は約34分後に接見指定をしない旨の回答をしたことが違法とはいえないとされた事例 2 代用監獄である警察署に勾留中の被疑者について弁護人から接見の申出を受けた留置担当官が検察官から「接見等の指定に関する通知書」が発せられていたことを失念して接見を開始させた直後にこれに気付き接見を中断させた措置が違法とはいえないとされた事例
国家賠償法1条1項,刑訴法39条1項,刑訴法39条3項
判旨
接見指定に関する通知書の発出は内部的連絡文書として適法であり、通知に基づく検察官への照会のために弁護人を待機させても、それが合理的な範囲内であれば違法ではない。また、過誤により開始した接見を中断させる措置も、開始直後の対応など社会通念上相当と認められるときは適法である。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法39条3項に基づき、(1)検察官が「接見等の指定に関する通知書」を発出することの適否、(2)検察官への照会のために弁護人を待機させることの適否、(3)過誤により開始した接見を中断させる措置の適否が、国家賠償法1条1項の違法の評価において問題となった。
規範
1.検察官による「接見等の指定に関する通知書」の発出は、指定権の適切な行使と捜査の必要との調整を図る内部的な事務連絡文書であり、それ自体は違法ではない。 2.接見の申出を受けた者が指定権限のない捜査機関(留置係官等)である場合、権限のある捜査機関に連絡・指示を仰ぐ手続が必要であり、それに伴う待機が合理的な範囲内にとどまる限り許容される。その際、検察官は合理的な時間内に回答すべき義務を負うが、回答までに要した時間が社会通念上相当であれば違法とはいえない。 3.過誤により連絡手続を経ずに接見を開始させた後、これに気づいて中断させる措置も、接見開始直後に行われるなど、態様が社会通念上相当と認められるときは違法ではない。
重要事実
弁護士である原告は、土曜日の閉庁日や検察官の登庁前、事前の連絡なく代用監獄に赴き接見を申し出た。留置係官は、検察官から「通知書」が発せられていたため、検察官への照会が完了するまで原告を約34分〜45分間待機させた。また、一つの事案では、係官が「通知書」を失念して接見を開始させたが、その直後(約5分後)に別の中断措置を講じ、接見室の消灯や被疑者の連れ出しを行って接見を中断させ、検察官の回答を待った。
あてはめ
1.通知書は指定権行使の機会を確保するためのものであり、直ちに接見交通権を侵害しない。 2.本件では、土曜日や早朝の突然の申出に対し、係官や事務官が速やかに連絡を試みており、回答までに要した約34〜45分という時間は、連絡が取れ次第速やかに回答された結果であって、故意の遅延もなく合理的な範囲内といえる。 3.接見中断についても、接見開始直後に手続漏れに気づいてなされたものであり、連れ出し等の態様を含め、適正な手続を確保するための措置として社会通念上相当と認められる。
結論
検察官の回答遅延および留置係官による待機・中断措置はいずれも違法ではなく、国家賠償請求は認められない。
実務上の射程
本判決は、接見指定の運用(事務連絡文書による運用)に一定の合理性を認める。答案上は、接見交通権(39条1項)と捜査の必要性の調整において、即時接見が原則としつつも、指定権者への連絡等に伴う「合理的な範囲内の待機」が許容される際の考慮要素(申出の時間帯、事前連絡の有無、連絡手続の迅速性)として引用すべきである。
事件番号: 平成5(オ)1485 / 裁判年月日: 平成12年3月17日 / 結論: 棄却
弁護人が警察署に赴き勾留中の被疑者との接見の申出をしたのに対し、申出を受けた留置主任官が、接見の日時等を指定する権限のある検察官から被疑者と弁護人との接見についていわゆる一般的指定書が送付されていたのに弁護人が具体的指定書を所持していなかったので、右検察官に連絡して指示を受けるために三度にわたり検察庁に電話をしたが、右…