弁護人が警察署に赴き勾留中の被疑者との接見の申出をしたのに対し、申出を受けた留置主任官が、接見の日時等を指定する権限のある検察官から被疑者と弁護人との接見についていわゆる一般的指定書が送付されていたのに弁護人が具体的指定書を所持していなかったので、右検察官に連絡して指示を受けるために三度にわたり検察庁に電話をしたが、右検察官が朝の登庁前であったため、連絡が取れないまま約四五分を経過した後、右権限のある他の検察官と連絡が取れ、その後は同検察官が弁護人と協議したなど判示の事実関係の下においては、右連絡が取れるまでの間弁護人を待機させた留置主任官の措置に違法があるとはいえない。 (反対意見がある。)
弁護人からの被疑者との接見の申出に対し接見の日時等の指定権限のない捜査機関が右権限のある検察官に連絡が取れるまでの間弁護人を待機させた措置が違法とはいえないとされた事例
国家賠償法1条1項,刑訴法39条1項,刑訴法39条3項
判旨
弁護人等からの接見申出に対し、代用監獄の留置係員が権限のある捜査機関に連絡を取り、指示を受ける等の手続を採るために待機が生じても、それが社会通念上相当な範囲内であれば違法とはいえない。本件では、検察官と連絡がつかない中で3度にわたり連絡を試み、45分後に上司と協議させた措置は、合理的な範囲内の対応として適法とされた。
問題の所在(論点)
接見指定の権限を持たない留置係員が、権限を有する検察官との連絡のために弁護士を待機させた措置が、刑事訴訟法39条3項および国家賠償法上、違法となるか。
規範
1. 捜査機関は、接見申出があった場合、取調べ中断等により捜査に顕著な支障が生じる場合に限り接見指定ができるが、その際も弁護人等と協議し、できる限り速やかな接見を可能にする措置を採らなければならない。 2. 接見申出を受けた者が指定権限のない捜査機関(留置係員等)である場合、権限のある捜査機関へ連絡し指示を受ける手続を要する。この手続に伴う待機や遅延が「合理的な範囲内」にとどまり、その措置が社会通念上相当と認められるときは、違法とはならない。
重要事実
弁護士である上告人は、午前8時40分、代用監獄の留置係員に対し勾留中の被疑者との接見を申し出た。留置係員は、検察官から「接見指定をする可能性がある」旨の一般的指定書を受け取っていたため、具体的指示を仰ぐべく直ちに検察庁へ電話した。しかし、担当検察官が登庁前で不在だったため、午前8時55分、9時20分と計3回連絡を試みた。ようやく9時25分(申出から45分後)に公安部長と連絡がつき、上告人と部長との協議が開始された。上告人は、この待機時間が接見交通権を侵害するとして国家賠償を請求した。
あてはめ
1. 留置係員は、権限ある検察官から一般的指定書を送付されていたため、独断で接見を許容せず指示を仰ぐ必要があった。 2. 係員は申出直後から、検察官が不在という状況下においても、計3回にわたり継続的かつ速やかに連絡を試みている。 3. 最終的に45分後に上席者(公安部長)との連絡を確保し、協議の場を提供している。 4. 以上の経過は、指定権限の有無を確認し適切な措置を採るための事務処理として「合理的な範囲内」にあり、社会通念上相当な対応といえる。したがって、接見交通権の不当な制限にはあたらない。
結論
留置係員の措置は違法とはいえず、上告を棄却する。
実務上の射程
接見交通権の制限に関する「合理的な遅延」の許容限度を示す射程を持つ。権限なき係員が「直ちに」連絡を試みている限り、担当者不在による数十分程度の待機は適法とされる可能性が高い。答案上は、接見交通権の重要性と、組織的な意思決定に要する不可避な時間の調整原理として活用する。
事件番号: 平成15(オ)975 / 裁判年月日: 平成16年9月7日 / 結論: その他
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監獄法施行規則一二一条本文、一二七条一項本文は、憲法一三条、三二条に違反しない。