一 弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者から被疑者の逮捕直後に初回の接見の申出を受けた捜査機関は、即時又は近接した時点での接見を認めても接見の時間を指定すれば捜査に顕著な支障が生じるのを避けることが可能なときは、留置施設の管理運営上支障があるなど特段の事情のない限り、被疑者の引致後直ちに行うべきものとされている手続及びそれに引き続く指紋採取、写真撮影等所要の手続を終えた後、たとい比較的短時間であっても、時間を指定した上で即時又は近接した時点での接見を認める措置を採るべきである。 二 接見の日時等の指定をする権限を有する司法警察職員が、逮捕された被疑者の依頼により弁護人となろうとする者として逮捕直後に警察署に赴いた弁護士から初回の接見の申出を受けたのに対し、接見申出があってから約一時間一〇分が経過した時点に至って、警察署前に待機していた弁護士に対して接見の日時を翌日に指定した措置は、即時又は近接した時点での接見を認めても接見の時間を指定すれば捜査に顕著な支障が生じるのを避けることが可能であるにもかかわらず、犯罪事実の要旨の告知等引致後直ちに行うべきものとされている手続及びそれに引き続く写真撮影等所要の手続が終了した後も弁護士と協議することなく取調べを継続し、その後被疑者の夕食のために取調べが中断されたのに、夕食前の取調べの終了を早めたり、夕食後の取調べの開始を遅らせたりして接見させることをしなかったなど判示の事情の下においては、国家賠償法一条一項にいう違法な行為に当たる。
一 弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者から被疑者の逮捕直後に初回の接見の申出を受けた捜査機関が接見の日時等の指定に当たって採るべき措置 二 被疑者の依頼により弁護人となろうとする者から被疑者の逮捕直後に初回の接見の申出を受けた捜査機関が接見の日時を翌日に指定した措置が国家賠償法一条一項にいう違法な行為に当たるとされた事例
国家賠償法1条1項 刑訴法39条1項、刑訴法39条3項 憲法34条前段
判旨
接見指定権の行使が認められる場合であっても、初回の接見については、時間を指定するなどして即時又は近接した時点での接見を認めるよう検討すべきであり、一方的に翌日以降を指定することは、特段の事情がない限り被疑者の防御権を不当に制限し違法となる。
問題の所在(論点)
逮捕直後の初回接見申出に対し、取調べ中であることを理由に翌日の日時を指定した接見指定が、刑訴法39条3項但書に反し、国家賠償法1条1項の違法を構成するか。
規範
刑訴法39条3項の「捜査のため必要があるとき」とは、接見を認めると取調べの中断等により捜査に顕著な支障が生ずる場合に限られる。同要件を満たす場合でも、指定は防御準備権を不当に制限してはならない(同項但書)。特に、逮捕直後の初回接見は防御の準備に極めて重要であるため、捜査機関は弁護人等と協議し、短時間でも即時又は近接した時点での接見を認めることが可能か検討すべきである。これが可能なのに取調べを理由に接見を拒否し、初回接見を遅らせることは、防御権の不当な制限として違法(国賠法1条1項)となる。
重要事実
東京都公安条例違反で現行犯逮捕された被疑者A1の弁護人となろうとする弁護士A2が、引致後まもない午後4時35分に初回接見を申し出た。捜査主任官Dは、A1が取調べ中であること、夕食時間帯は戒護体制が手薄になること等を理由に、A2と協議することなく待機させた。その後、Dは午後5時45分に至り、翌日午前10時以降の日時を一方的に指定した。実際には、夕食後に予定されていた取調べは担当者の別件対応等により行われていなかった。
あてはめ
本件申出時、A1は取調べ中または確実な予定があったため、自由な接見を認めれば捜査に顕著な支障が生じる状況にあり、指定権自体は発生していた。しかし、初回接見は弁護人選任や助言を得る重要な機会であり、取調べを短時間中断する、あるいは夕食時間の前後を調整する等の措置により、合理的な範囲で接見時間を確保することは可能であった。DはA2と協議する姿勢を示さず、予測可能な夕食終了後の接見すら検討せずに一方的に翌日を指定した。これは、接見時間のやり繰りによって捜査への顕著な支障を回避できたといえる状況下で、A1の防御権を不当に制限したものである。
結論
捜査主任官の措置は刑訴法39条3項に違反し、注意義務に違反する過失があるため、国賠法1条1項の違法を構成する。
実務上の射程
初回接見の重要性を強調したリーディングケース。答案では、指定権行使の適法性を論じる際、単に「取調べ中」という事実だけでなく、時間のやり繰り(短時間の接見許可)が可能であったか、弁護人と協議したかという「指定の態様」の相当性を検討する枠組みとして用いる。
事件番号: 平成5(オ)1189 / 裁判年月日: 平成12年2月22日 / 結論: 棄却
弁護人の事務所、検察庁及び被疑者が勾留されている警察署の位置関係などから、検察庁において接見指定書を受領して右警察署に持参することが弁護人にとって過重な負担となるものではなく、弁護人が申し出た接見の日時までに相当の時間があるために、弁護人が検察庁まで接見指定書を受け取りに行くことにしても接見の開始が遅れることはなく、検…