一 刑訴法三九条三項の規定にいう「捜査のため必要があるとき」には、捜査機関が弁護人から被疑者との接見の申出を受けた時に、間近い時に被疑者を取り調べたり、実況見分、検証等に立ち会わせたりするなどの確実な予定があって、弁護人の必要とする接見を認めたのでは右取調べ等が予定どおり開始できなくなるおそれがある場合が含まれる。 二 弁護人から被疑者との接見の申出を受けた者が接見の日時等の指定につき権限のある捜査官でないときは、右申出を受けた者が権限のある捜査官に連絡しその措置について指示を受けるなどの手続を要する間、弁護人が待機させられ、また、その間接見ができなかったとしても、それが合理的な範囲内にとどまる限り許される。 三 弁護人が事前に連絡しないで警察署に赴き、代用監獄に留置中の被疑者との接見を申し出たところ、右申出を受けたのが留置主任官であったため、同人が当該事件の捜査に当たっていた他の警察署捜査主任官を通じて検察官に連絡して指示を求めるなどの一連の手続のために約二八分を要し、その間に弁護人が自発的に警察署を退去してしまったなど判示の事情があるときは、右の間、捜査機関が弁護人と被疑者との接見交通を許さなかったことになるとしても、国家賠償法一条一項にいう違法な行為に当たらない。
一 刑訴法三九条三項の規定にいう「捜査のため必要があるとき」に当たる場合 二 弁護人からの被疑者との接見の申出が接見の日時等の指定権限のない捜査官に対してされた場合の措置 三 弁護人からの被疑者との接見の申出に対し応答が遅れても違法とはいえないとされた事例
国家賠償法1条1項,刑訴法39条1項,刑訴法39条3項,憲法34条前段
判旨
接見等の申出を受けた際に権限のある捜査官への連絡や指示等の手続に要した時間は、それが合理的な範囲内にとどまる限り、接見指定権(刑訴法39条3項)の行使に伴うものとして許容される。
問題の所在(論点)
接見申出を受けた捜査官が指定権限を有しない場合に、権限官への連絡等の手続のために弁護人を待機させることが、刑訴法39条3項に基づく接見指定権の適法な行使として認められるか。
規範
捜査機関は、接見等の申出があったときは原則として即時に機会を与えなければならない。もっとも、捜査の中断による支障が顕著な場合(現に取調べ中であるほか、間近い時に取調べ等の確実な予定がある場合を含む)には、例外的に日時等を指定できる。また、申出を受けた者が指定権限を有しない場合に、権限のある捜査官へ連絡し指示を受ける等の手続を履践することは、これに要する時間が合理的な範囲内にとどまる限り許容される。
重要事実
弁護人である上告人は、事前連絡なく午前9時15分頃に警察署を訪れ、留置主任官に接見を申し出た。留置主任官は指定権限を有する検察官に電話で指示を仰ぎ、検察官は「弁護人から検察官に電話するよう伝えてほしい」と回答した。この回答が警察署に届いたのは午前9時43分頃であったが、上告人はその約3分前に既に警察署を退去していた。
あてはめ
本件では、接見申出から回答までに要した時間は約28分である。事前連絡のない突然の来署であったことや、権限のある検察官への連絡・指示の受領という一連の手続に要した時間に照らせば、この程度の待機時間は合理的な範囲内にとどまる。したがって、当該手続中に接見が遅滞したとしても、弁護権を侵害する違法な接見指定(拒絶)には当たらないと解される。
結論
接見申出に伴う連絡等の手続に要した時間は合理的な範囲内であり、接見指定権の行使として適法である。
実務上の射程
接見指定の適法性が争われる国家賠償請求事件において、即時接見が原則であることを前提としつつ、実務上の連絡に要する時間(事務的遅延)の許容限度を画する基準として用いる。
事件番号: 昭和58(オ)379 / 裁判年月日: 平成3年5月10日 / 結論: その他
一 刑訴法三九条三項の規定にいう「捜査のため必要があるとき」には、捜査機関が弁護人から被疑者との接見の申出を受けた時に、間近い時に被疑者を取り調べたり、実況見分、検証等に立ち会わせたりするなどの確実な予定があつて、弁護人の必要とする接見を認めたのでは右取調べ等が予定どおり開始できなくなるおそれがある場合が含まれる。 二…