一 捜査機関は、弁護人から被疑者との接見の申出があつたときは、原則として何時でも接見の機会を与えるべきであり、現に被疑者を取調中であるとか、実況見分、検証等に立ち会わせる必要があるなど捜査の中断による支障が顕著な場合には、弁護人と協議してできる限り速やかな接見のための日時等を指定し、被疑者が防禦のため弁護人と打ち合せることのできるような措置をとるべきである。 二 被疑者取調中に弁護人から接見の申出を受けた警察官が、接見の日時等の指定権限を内部的に制限されているため、右弁護人に対し権限を有する捜査本部の捜査主任官の指定を受けるよう求め、かつ、右申出を捜査本部に伝達したなど、判示の事情があるときには、右警察官が捜査主任官の指定のないことを理由に接見を拒んでも、国家賠償法一条一項にいう違法な行為にあたらない。
一 弁護人から被疑者との接見の申出があつた場合に捜査機関のとるべき措置 二 弁護人の被疑者に対する接見の申出を拒んだ警察官の行為が国家賠償法一条一項にいう違法な行為にあたらないとされた事例
憲法34条前段,刑訴法39条1項,刑訴法39条3項,国家賠償法1条1項
判旨
接見交通権(刑訴法39条1項)は憲法に由来する重要な権利であり、捜査機関による接見日時の指定(同条3項)は必要やむを得ない例外的措置に限られる。取調べ担当官に指定権限がなく、弁護人が権限者と協議可能な状況で、弁護人側の非協力もあって遅滞が生じた場合、担当官が指定がないことを理由に接見を拒んだ行為は直ちに違法とはいえない。
問題の所在(論点)
接見指定権限を持たない個別の捜査員が、指定権者による指定がないことを理由に接見を拒否した行為が、国家賠償法上の違法(刑訴法39条違反)にあたるか。
規範
接見交通権は身体拘束された被疑者の防御権に直結する基本的重要権であり、弁護人等の固有権でもある。刑訴法39条3項による接見日時の指定は、捜査の中断による支障が顕著な場合に、弁護人等と協議して「できる限り速やかな接見」のための措置を講じるべき必要やむを得ない例外的措置である。指定権限のない捜査官が、権限ある者との協議を促し、連絡を仲介している状況下では、指定がないことを理由に接見を拒んでも直ちに国家賠償法上の違法とは評価されない。
重要事実
弁護士である被上告人は、逮捕された被疑者Eとの接見のため布施署を訪れた。当時Eは取調中であり、接見指定の権限は枚岡署の捜査主任官等にあった。取調担当官Dは自らに権限がない旨を伝え、被上告人に対し捜査主任官の指定を受けるよう求めたが、被上告人は「指定書の持参要求は違法だ」と主張して対立し、強引に取調室へ向かおうとする等の実力行使に及んだ。Dは電話で主任官への仲介を試みたが、被上告人と主任官の電話協議も感情的対立により不調に終わった。結果的に接見まで約4時間を要したため、被上告人が国賠請求を提起した。
あてはめ
Dには接見指定の権限がなく、現にEを取調中であったため、捜査主任官の指定を仰ぐよう求めたことには合理性がある。Dは度々捜査主任官に状況を報告しており、接見を仲介する意思がなかったとはいえない。また、被上告人も電話連絡の機会がありながら指定書の要否という形式的論争に拘泥し、強引な実力行使に出るなど紛争を深刻化させた側面がある。このような状況下で、Dが権限者の指定がないことを理由に即時接見を拒んだことは、社会通念上相当な範囲内にとどまり、違法とまでは評価できない。
結論
警察官Dが接見を拒んだ行為は違法とはいえず、国賠法上の責任は認められない。原判決を破棄し、差し戻す。
実務上の射程
接見交通権と捜査の必要性の調整に関するリーディングケースである。答案上は、まず39条3項が「必要やむを得ない例外的措置」であることを示し、原則即時接見の立場を明示する。あてはめでは、指定の要否だけでなく、指定に向けた協議の経過や、弁護人側の態様も考慮して「遅滞の帰責性」や「捜査官の行為の相当性」を論じる際の指針となる。
事件番号: 平成5(オ)1189 / 裁判年月日: 平成12年2月22日 / 結論: 棄却
弁護人の事務所、検察庁及び被疑者が勾留されている警察署の位置関係などから、検察庁において接見指定書を受領して右警察署に持参することが弁護人にとって過重な負担となるものではなく、弁護人が申し出た接見の日時までに相当の時間があるために、弁護人が検察庁まで接見指定書を受け取りに行くことにしても接見の開始が遅れることはなく、検…
事件番号: 平成12(受)243 / 裁判年月日: 平成17年4月19日 / 結論: その他
1 弁護人から検察庁の庁舎内に居る被疑者との接見の申出を受けた検察官は,同庁舎内に,その本来の用途,設備内容等からみて,検察官が,その部屋等を接見のためにも用い得ることを容易に想到することができ,また,その部屋等を接見のために用いても,被疑者の逃亡,罪証の隠滅及び戒護上の支障の発生の防止の観点からの問題が生じないことを…