1 弁護人から検察庁の庁舎内に居る被疑者との接見の申出を受けた検察官は,同庁舎内に,その本来の用途,設備内容等からみて,検察官が,その部屋等を接見のためにも用い得ることを容易に想到することができ,また,その部屋等を接見のために用いても,被疑者の逃亡,罪証の隠滅及び戒護上の支障の発生の防止の観点からの問題が生じないことを容易に判断し得るような部屋等が存しない場合には,接見の申出を拒否することができる。 2 検察官が検察庁の庁舎内に接見の場所が存在しないことを理由として同庁舎内に居る被疑者との接見の申出を拒否したにもかかわらず,弁護人がなお同庁舎内における即時の接見を求め,即時に接見をする必要性が認められる場合には,検察官には,捜査に顕著な支障が生ずる場合でない限り,秘密交通権が十分に保障されないような態様の短時間の「接見」(面会接見)であってもよいかどうかという点につき,弁護人の意向を確かめ,弁護人がそのような面会接見であっても差し支えないとの意向を示したときは,面会接見ができるように特別の配慮をすべき義務がある。 3 弁護人が,検察官から,検察庁の庁舎内には接見のための設備が無いことを理由に同庁舎内に居る被疑者との接見の申出を拒否されたのに対し,接見の場所は被疑者が現在待機中の部屋でもよいし,検察官の執務室でもよいなどと述べて,即時の接見を求めたこと,弁護人は,勾留場所が代用監獄から少年鑑別所に変更されたことをできる限り早く被疑者に伝えて元気づけようと考え,接見を急いでいたこと,ごく短時間の接見であれば,これを認めても捜査に顕著な支障が生ずるおそれがあったとまではいえないことなど判示の事情の下においては,検察官が,立会人の居る部屋でのごく短時間の「接見」(面会接見)であっても差し支えないかどうかなどの点についての弁護人の意向を確かめることをせず,上記申出に対して何らの配慮もしなかったことは,違法である。
1 弁護人から検察庁の庁舎内に居る被疑者との接見の申出を受けた検察官が同庁舎内に接見の場所が存在しないことを理由として接見の申出を拒否することができる場合 2 検察官が検察庁の庁舎内に接見の場所が存在しないことを理由として同庁舎内に居る被疑者との接見の申出を拒否したにもかかわらず弁護人が同庁舎内における即時の接見を求め即時に接見をする必要性が認められる場合に検察官が執るべき措置 3 弁護人から検察庁の庁舎内に居る被疑者との接見の申出を受けた検察官が同庁舎内に接見の場所が存在しないことを理由として接見の申出を拒否するに際し立会人の居る部屋でのごく短時間の「接見」であっても差し支えないかどうかなどの点についての弁護人の意向を確かめることをせず上記申出に対して何らの配慮もしなかったことが違法とされた事例
刑訴法39条,国家賠償法1条1項
判旨
検察庁内に適切な接見設備がない場合、特段の事情がない限り接見拒否は直ちに違法とはならないが、即時の接見の必要性が認められる場合には、検察官は秘密交通権が制限された態様の「面会接見」の意向を確認し、特別の配慮をすべき義務を負う。
問題の所在(論点)
検察庁庁舎内において接見設備が不十分な場合、検察官が接見申出を拒否することが刑訴法39条1項・3項等に照らし違法となるか。また、検察官に国家賠償法上の過失が認められるか。
規範
1. 庁舎内に、被疑者の逃亡・罪証隠滅・戒護上の支障を防止できる設備(専用室に限らず、検察官が容易に想到・判断可能な場所)が存在しない場合、接見拒否は直ちに違法とはならない。 2. もっとも、即時に接見する具体的必要性が認められる場合、検察官は、捜査に顕著な支障が生ずるおそれがない限り、立会人付きの短時間面会等の「面会接見」で足りるかについて弁護人等の意向を確かめ、可能な限り実施できるよう特別の配慮をすべき義務を負う。
重要事実
弁護士である原告が、放火容疑で勾留中の被疑者(少年)との接見を広島地検庁舎内で申し出た。担当検事Dは、庁舎内に接見室がないこと等を理由に拒否した。第1事件では、勾留場所が少年鑑別所に変更された直後で、原告は被疑者を元気づけるため急いでいた。第2事件では、再逮捕直後で黙秘権の教示や弁護人選任届の受領が必要な状況であった。検察官はいずれも接見を拒否し、代替案の提示や意向確認も行わなかったが、当時の取調べ状況から短時間の接見は可能であった。
あてはめ
1. 広島地検の同行室は本来の用途が留置用であり、検察官が接見場所として容易に想到・判断できる設備とはいえないため、通常の接見拒否自体は直ちに違法ではない。 2. しかし、本件では勾留場所変更の告知や選任届受領といった「即時の接見の必要性」が認められ、取調べまで時間的余裕もあった。それにもかかわらず、D検事が「面会接見」の意向確認や特別の配慮を怠った不作為は違法である。 3. もっとも、当時は本判決のような配慮義務の基準が確立されておらず、庁舎内接見不可とする実務慣行もあったため、D検事に過失があったとはいえない。
結論
検察官の配慮義務違反(不作為)は客観的に違法であるが、当時の状況下で過失は認められないため、国家賠償請求は棄却される。
実務上の射程
検察庁における接見交通権(39条1項)と捜査の必要性の調整に関する重要判例。設備不足を理由とする拒否の限界と、検察官の「面会接見」に向けた配慮義務を提示した点に射程がある。答案では、設備がない場合の不作為の違法性を論じる際の規範として活用する。
事件番号: 平成7(オ)2512 / 裁判年月日: 平成12年2月24日 / 結論: 棄却
弁護人が午前中に警察署に赴いて勾留中の被疑者との接見の申出をし検察官に電話で即時又は昼食時間中の接見を求めたが、被疑者が現に取調べ中であり、勾留の満期を控えて、右取調べが昼食時間を挟んで夕方まで続く可能性があり、昼食時間の開始と終了の時刻及び午後の取調べの終了時刻を予測することが不可能であったため、検察官が接見の日時を…
事件番号: 平成10(オ)529 / 裁判年月日: 平成12年9月7日 / 結論: 破棄自判
一 受刑者の提起した民事訴訟事件における右受刑者の訴訟代理人である弁護士が,本人尋問の準備等のために必要であるとして三〇分を超える接見の許可を申請したのに対し,接見時間を三〇分以内に制限して接見を許可した刑務所長の処分は,右受刑者には親族との接見とは別に訴訟代理人である弁護士との間で原則として月二回の接見が許可されてお…
事件番号: 平成5(オ)1485 / 裁判年月日: 平成12年3月17日 / 結論: 棄却
弁護人が警察署に赴き勾留中の被疑者との接見の申出をしたのに対し、申出を受けた留置主任官が、接見の日時等を指定する権限のある検察官から被疑者と弁護人との接見についていわゆる一般的指定書が送付されていたのに弁護人が具体的指定書を所持していなかったので、右検察官に連絡して指示を受けるために三度にわたり検察庁に電話をしたが、右…
事件番号: 平成29(受)990 / 裁判年月日: 平成30年10月25日 / 結論: 破棄差戻
刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律79条1項2号に該当するとして保護室に収容されている未決拘禁者との面会の申出が弁護人又は弁護人となろうとする者からあった場合に,その申出があった事実を未決拘禁者に告げないまま,保護室に収容中であることを理由として面会を許さない刑事施設の長の措置は,未決拘禁者が精神的に著しく不…