1 法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)132条の2にいう「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」とは,法人の行為又は計算が組織再編税制に係る各規定を租税回避の手段として濫用することにより法人税の負担を減少させるものであることをいい,その濫用の有無の判断に当たっては,①当該法人の行為又は計算が,通常は想定されない組織再編成の手順や方法に基づいたり,実態とは乖離した形式を作出したりするなど,不自然なものであるかどうか,②税負担の減少以外にそのような行為又は計算を行うことの合理的な理由となる事業目的その他の事由が存在するかどうか等の事情を考慮した上で,当該行為又は計算が,組織再編成を利用して税負担を減少させることを意図したものであって,組織再編税制に係る各規定の本来の趣旨及び目的から逸脱する態様でその適用を受けるもの又は免れるものと認められるか否かという観点から判断するのが相当である。 2 新設分割により設立された分割承継法人が当該分割は適格分割に該当しないとして資産調整勘定の金額を計上した場合において,分割後に分割法人が当該分割承継法人の発行済株式全部を譲渡する計画を前提としてされた当該分割は,翌事業年度以降は損金に算入することができなくなる当該分割法人の未処理欠損金額約100億円を当該分割承継法人の資産調整勘定の金額に転化させ,これを以後60か月にわたり償却し得るものとするため,本来必要のない上記譲渡を介在させることにより,実質的には適格分割というべきものを形式的にこれに該当しないものとするべく企図されたものといわざるを得ないなど判示の事情の下では,法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)132条の2にいう「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」に当たる。 3 法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)132条の2にいう「その法人の行為又は計算」とは,更正又は決定を受ける法人の行為又は計算に限られるものではなく,同条各号に掲げられている法人の行為又は計算を意味する。
1 法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)132条の2にいう「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」の意義及びその該当性の判断方法 2 新設分割により設立された分割承継法人の発行済株式全部を分割法人が譲渡する計画を前提としてされた当該分割が,法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)132条の2にいう「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」に当たるとされた事例 3 法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)132条の2にいう「その法人の行為又は計算」の意義
(1~3につき)法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)132条の2 (2につき)法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)2条12号の11イ,法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)57条1項,法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)57条2項,法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)62条1項,法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)62条の8,法人税法62条の3,法人税法施行令(平成22年政令第51号による改正前のもの)4条の2第6項
判旨
法人税法132条の2にいう「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」とは、組織再編税制を租税回避の手段として濫用することを指し、不自然な手順の有無や事業目的の存否を総合考慮して判断すべきである。本件のように、実質的には適格分割の要件を満たす支配関係が継続しているにもかかわらず、本来不要な株式譲渡を介在させて形式的に非適格分割を作出し、欠損金を資産調整勘定に転化させる行為は同条により否認される。
事件番号: 平成27(行ヒ)75 / 裁判年月日: 平成28年2月29日 / 結論: 棄却
1 法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)132条の2にいう「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」とは,法人の行為又は計算が組織再編税制に係る各規定を租税回避の手段として濫用することにより法人税の負担を減少させるものであることをいい,その濫用の有無の判断に当たっては,①当該法人の行為又…
問題の所在(論点)
法人税法132条の2(組織再編成に係る行為又は計算の否認)の適用要件である「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」の意義、および同条が規定する「その法人の行為又は計算」に、更正処分を受ける法人以外の行為も含まれるか。
規範
法人税法132条の2にいう「不当に減少させる結果となると認められるもの」とは、法人の行為又は計算が組織再編税制に係る各規定を租税回避の手段として濫用することにより法人税の負担を減少させるものであることをいう。濫用の有無は、①当該行為又は計算が、通常は想定されない手順や方法に基づいたり、実態とは乖離した形式を作出したりするなど、不自然なものであるか、②税負担の減少以外に合理的な事業目的等が存在するか、等の事情を考慮し、組織再編税制の本来の趣旨・目的を逸脱する態様でその適用を受け、又は免れるものと認められるか否かという観点から判断する。
重要事実
完全子会社b社に多額の未処理欠損金(期限切れ間近のものを含む)を有するa社は、b社の事業を新設会社(上告人)に分割。本来、グループ内再編として適格分割の要件を満たす状況であったが、a社はb社による上告人株式の第三者(i社)への譲渡をあらかじめ計画に介在させた。これにより、形式的に「完全支配関係の継続見込み」という適格要件(施行令4条の2第6項1号)を欠落させ、非適格分割として処理した。この結果、上告人は多額の資産調整勘定を計上し、その償却費を損金算入することで法人税負担を軽減しようとした。しかし、実際には当該株式譲渡の数日後にb社自体もi社に買収・合併されており、グループ全体で見れば移転資産への支配は継続していた。
あてはめ
本件分割は、期限切れ間近の欠損金を資産調整勘定に転化させ、60か月間にわたり損金算入することを目的として、本来必要のない一時的な株式譲渡を介在させている。これは①通常想定されない不自然な手順であり、実態(支配の継続)と乖離した形式(非適格分割)を意図的に作出したものである。また、②当該譲渡は数日で資金が還流する予定であり、税負担減少以外の事業目的も認められない。したがって、適格分割による譲渡損益の繰延べという組織再編税制の趣旨を逸脱し、規定を濫用したものといえる。また、同条の「その法人」には、更正を受ける上告人自身だけでなく、分割法人であるb社の行為も含まれると解される。
結論
本件分割は、法人税法132条の2の「不当に減少させる結果となると認められるもの」に該当し、税務署長による否認処分は適法である。上告を棄却する。
実務上の射程
組織再編税制における「濫用」の判断基準を「手順の不自然さ」と「事業目的の欠如」という二要素を中心に具体化した重要なリーディングケースである。特に、条文上の形式的要件をあえて外して(「逆も課税」を回避して)税務上のメリットを得ようとする行為に対し、実質論から否認のメスを入れる際のメルクマールとなる。答案上は、組織再編税制の趣旨(資産支配の継続による課税繰延べ)に遡って論証することが求められる。
事件番号: 令和2(行ヒ)303 / 裁判年月日: 令和4年4月21日 / 結論: 棄却
1 法人税法132条1項にいう「これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」とは、同項各号に掲げる法人である同族会社等の行為又は計算のうち、経済的かつ実質的な見地において不自然、不合理なもの、すなわち経済的合理性を欠くものであって、法人税の負担を減少させる結果となるものをいう。 2 …
事件番号: 平成12(行ヒ)32 / 裁判年月日: 平成16年7月13日 / 結論: 破棄自判
無限連鎖講を主宰していた個人が,その事業主体が法人でない社団で代表者の定めがあるものになったとして,同社団名義で法人税,法人事業税,法人県民税及び法人市民税の申告をした場合につき,外形的事実に着目する限りにおいては,その社団というものが,意思決定機関,業務執行機関,代表機関等の団体としての組織を備え,その意思決定を多数…
事件番号: 平成16(行ヒ)326 / 裁判年月日: 平成18年2月23日 / 結論: 破棄自判
我が国の銀行が,本来は外国法人が負担すべき外国法人税(外国の法令により課される法人税に相当する税)について対価を得て引き受ける取引を行い,同取引に基づいて同銀行が負担した外国法人税が上記対価を上回るため,同取引自体によっては損失を生ずるが,上記外国法人税の負担を自己の外国税額控除の余裕枠を利用して国内で納付すべき法人税…