漁業協同組合の理事会の議決が,当該議決について特別の利害関係を有する理事が加わってされたものであっても,当該理事を除外してもなお議決の成立に必要な多数が存するときは,その効力は否定されるものではない。
特別の利害関係を有する理事が加わってされた漁業協同組合の理事会の議決の効力
水産業協同組合法37条2項
判旨
漁業協同組合の理事会において、特別の利害関係を有する理事が加わって議決がなされた場合であっても、当該理事を除外してもなお定足数を満たし、かつ議決の成立に必要な多数が存するときは、その効力は否定されない。
問題の所在(論点)
漁協の理事会において特別の利害関係を有する理事が加わってなされた議決の効力、および、そのような議決を経てなされた町長の貸付決定(公金支出)が裁量権の逸脱として違法となるか。
規範
1. 地方公共団体の長の公金支出等に係る判断は、原則としてその裁量に委ねられるが、合理的な手続を欠くなど裁量権の範囲を逸脱・濫用した場合には違法となる。 2. 水産業協同組合法37条2項(特別利害関係人の排除)の趣旨は、議決の公正を図り組合の利益を保護する点にある。したがって、特別の利害関係を有する理事が議決に加わったとしても、当該理事を除外してもなお議決の結果に変動が生じない(議決要件を充足する)場合には、議決の効力は失われない。
重要事実
町長Dは、台風被害を受けた漁業者の支援等を目的として、A漁協に対し1000万円を貸し付けた。本件貸付けの要件を定めた規則(本件規則)は公布手続の不備により効力を生じていなかった。また、貸付けの前提となる漁協理事会の議決には、実質的な資金の受け取り手であるB及びその子Cが理事として参加していた。しかし、B・Cを除いた残りの理事6名のうち4名(出席定足数を充足)が出席し、全員一致で賛成していた。
あてはめ
1. 本件規則が効力を欠く以上、本件貸付けの可否は町長の裁量に委ねられる。もっとも、貸付けにあたり漁協の意思決定の適正さを確認することは合理的である。 2. B及びCは貸付けの直接的な利害関係人であり「特別の利害関係を有する理事」に当たる。しかし、B・Cを除外しても、議決に加わることができる理事(6名)の過半数である4名が出席し、全員の賛成により議決要件を満たしている。そのため、B・Cの参加により議決の結果に変動は生じておらず、議決は有効である。 3. したがって、Dは有効な議決に基づき貸付けを行っており、手続的な不備があるとはいえない。
結論
本件議決を無効とすべき瑕疵があるとはいえず、本件支出負担行為等が町長の裁量権の範囲を逸脱してされたものとはいえない。
実務上の射程
株式会社の取締役会決議(会社法369条2項)に関する通説・判例(最判昭54・2・23)と同様の理屈を漁業協同組合にも適用したものである。答案上は、特別利害関係人の参加が結論に影響しない場合の「瑕疵の治癒」または「無効否定」の論拠として利用できる。
事件番号: 平成19(受)1056 / 裁判年月日: 平成21年11月27日 / 結論: 破棄差戻
A銀行が,県から要請を受け,県において再建資金の融資を計画していたB社に対し,上記融資が実行されるまでのつなぎ融資として9億5000万円を融資した後に,B社に追加融資をしてもその回収を容易に見込めない一方で,これをしなければB社が破綻,倒産する可能性が高く,県のB社に対する融資により回収することを予定していた上記つなぎ…