水産業協同組合の理事が、漁業権の放棄に対する補償金を組合員に配分するに際し、他の組合員については過去三年間の水揚高の合計を基準にして配分額を算定しているのに、格別の理由もなく一部の組合員についてだけ過去一年間のみの水揚高を基準にして配分額を算定することは、不当な職務の執行にあたり、水産業協同組合法三五条の二第三項の規定による損害賠償責任を免れることができない。
漁業協同組合の理事に水産業協同組合法三五条の二第三項の規定による損害賠償責任が認められた事例
水産業協同粗合法35条の2第3項
判旨
漁業協同組合理事が特定の組合員のみを不当に差別して補償金を算定・配分した行為は、不当な職務執行として組合に対する善管注意義務違反を構成し、水産業協同組合法上の損害賠償責任を負う。
問題の所在(論点)
理事が特定の組合員のみを不利益に扱う算定基準を用いて補償金を配分した行為が、水産業協同組合法35条の2第3項(現行35条の4等に対応)にいう「任務を怠った」場合としての不当な職務執行に該当するか。
規範
漁業協同組合の理事は、組合員間の公平を期すべき職務上の義務を負う。特定の組合員に対し、合理的な理由なく他の組合員と異なる基準を適用して不利益な扱いをすることは、善管注意義務に違反する不当な職務執行にあたり、法(水産業協同組合法35条の2第3項)に基づく賠償責任を免れない。
重要事実
上告人(漁協理事)は、被上告人を含む組合員らへの補償金を算定する際、他の組合員については全期間の水揚高を考慮したにもかかわらず、被上告人についてのみ、昭和44年度及び45年度の水揚高を除外して算定を行った。
あてはめ
上告人は、補償金の算定において被上告人のみ特定年度の水揚高を除外しており、このような取扱いに合理的な根拠は認められない。これは組合員間の公平性を著しく害するものであり、理事として尽くすべき善管注意義務を尽くしていない「不当な職務執行」であると評価される。したがって、これにより組合員(被上告人)が被った損害に対し賠償義務を負うものと解される。
結論
特定の組合員を差別的に除外した補償金算定は不当な職務執行であり、上告人は損害賠償責任を負う。
実務上の射程
役員の任務懈怠(善管注意義務違反)の判断において、特定の構成員に対する「不当な差別的取扱い」が有力な考慮要素となることを示している。会社法423条1項の任務懈怠の解釈においても、裁量権の逸脱・濫用を基礎付ける事由として同様に援用可能である。
事件番号: 昭和45(オ)528 / 裁判年月日: 昭和48年2月16日 / 結論: 棄却
一、商法六九〇条は、民法七一五条に対する特則として、船長その他の船員がその職務を行なうにあたり故意または過失により他人に加えた損害については、船舶所有者において、当該船員の選任・監督に関する過失の有無にかかわらず、その賠償の責に任ずべき旨を定めたものと解すべきである。 二、漁船の船長兼漁撈長が、海上で右漁船によつて操業…