他の漁場における定置漁業権免許申請において優先順位にないため競願に敗れ、その存立のため必要な漁業権を取得する見込のなくなつた者を救済するためにのみ新漁場を設定してなされた定置漁業権免許処分は、漁業法第一条に違背し無効である。
定置漁業の免許の優先順位の制度を無意味にする漁業権免許処分が漁業法第一条に違背し無効であるとされた事例。
漁業法1条,漁業法16条
判旨
漁場計画の策定は、漁業法の目的である漁業の民主化に背馳してはならず、特定の申請者を救済するために優先順位制度を潜脱する目的で新漁場を設置する行為は、裁量権の逸脱・濫用として違法である。
問題の所在(論点)
特定の申請者が法定の優先順位により免許を受けられない場合に、当該申請者を救済する目的のみで新漁場を設置し、免許を与える行為は、漁業法11条に基づく漁場計画の策定権限の行使として適法か。
規範
行政庁が漁場計画を定め、または新漁場を追加設定するに際しては、漁業法1条の目的(漁業生産力の発展、漁業の民主化)に背馳してはならない。特に、免許の適格性(14条)や優先順位(15条、16条)といった法定の基準を無意味にするような運用、または特定の私人の利益のみを図る目的での計画策定は、法の趣旨に反し、裁量権の限界を超えた違法なものとなる。
重要事実
上告人会社は、既存の漁場における免許申請において、優先順位基準に基づき他の申請者(地元漁民等)に敗れ、漁業権を全く取得できない状況にあった。これに対し北海道知事は、上告人会社を救済する目的で、もっぱら同社の利益を図るために新漁場の漁場計画を決定・公示し、これに基づき上告人両名に共同免許を与えた。農林大臣は、この免許処分を不適法として取り消す裁決を下したため、上告人らが裁決の取り消しを求めて提訴した。
あてはめ
漁業法が詳細な優先順位制度を設けているのは、漁業の民主化という理念に基づき、公平な免許付与を実現するためである。本件において、知事が新漁場を設置した動機は、優先順位基準により免許を得られなかった上告人会社を「救済するため」であり、かつ「もっぱら同会社の利益を図る目的」であった。このような計画策定は、法定の優先順位制度を実質的に無意味にするものであり、同法の根底にある民主化の目的理念に明白に背馳すると評価される。したがって、本件漁場計画の策定およびこれに基づく免許処分は、職権の目的外利用として違法である。
結論
特定の私人の利益を図る目的で、法定の優先順位制度を潜脱する形で行われた漁場計画の策定および免許処分は違法であり、これを取り消した裁決は適法である。
実務上の射程
行政庁に広範な計画裁量が認められる場面であっても、その目的が特定の私人の救済や利益付与に偏り、法が定める選別基準(優先順位等)の趣旨を没却する場合には、目的違反または不当な動機として裁量権の逸脱・濫用が認められることを示す射程を持つ。答案上は、裁量権の行使が法の目的・趣旨に合致しているかを検討する際の考慮要素として活用できる。
事件番号: 昭和31(オ)154 / 裁判年月日: 昭和31年6月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分が手続上の違法を理由に取り消された場合、判決の拘束力は当該手続不備を是正すべき点にのみ及び、処分の実体的内容まで拘束するものではない。また、漁業権のように排他的権利の付与を目的とする処分において、他者への免許が有効に存続する以上、重ねて他人に免許を付与することはできない。 第1 事案の概要…