判旨
行政庁が上位機関の指示や方針に従って申請を拒絶した場合、その方針が合理的な範囲内であり、行政庁がそれに忠実に従ったのであれば、その処分に違法はない。
問題の所在(論点)
農産物の供出割当補正申請に対し、行政庁(村長)が上位機関(県知事)の方針に従ってこれを拒絶した行為が、国家賠償法上の違法、あるいは行政処分としての違法を構成するか。
規範
行政処分において、下位の行政庁が上位機関(知事等)の策定した運用方針や指示に忠実に従い、それに抵触する申請を拒絶した場合、当該方針自体が著しく不合理であるなどの特段の事情がない限り、その処分は適法である。
重要事実
栃木県において「昭和23年度産米、甘藷供出実施要綱」が運用されていた。同県の方針では、供出割当が決定した後の農家人口の増加は、割当量を修正(補正)する事由として認めないものとされていた。上告人は家族員が増加したことを理由に割当補正を申請したが、被上告人である村長は、栃木県知事の前記方針に忠実に従い、この申請を認めなかった。
あてはめ
栃木県知事の方針は、供出割当後の人口増加を補正事由としないという明確な基準を示していた。被上告人である村長は、この知事の方針に対し忠実にその指示に従っている。このような行政運営上の基準の適用は、行政の統一性・安定性の観点から是認されるべきものであり、本件拒絶行為に違法な点は認められない。原審が認定した事実に照らせば、特段の不合理性も認められない。
結論
被上告人村長が県知事の方針に従って割当補正の申請に応じなかったことに違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
行政指導や内部基準(通達)に基づく処分の適法性判断に際し、下位行政庁が上位機関の指示に従うことの正当性を示す一例。裁量権の行使が、上位機関の示した統一的な運用指針に依拠している場合、その指針自体が違憲・違法でない限り、それに従った処分も適法とされる傾向を示す。
事件番号: 昭和43(オ)652 / 裁判年月日: 昭和44年12月19日 / 結論: 棄却
行政処分を違法として取消す判決が確定したからといつて、不可抗力の確証がない限り国家賠償法一条の賠償義務を免れ得ないというものではない。