判旨
行政処分が手続上の違法を理由に取り消された場合、判決の拘束力は当該手続不備を是正すべき点にのみ及び、処分の実体的内容まで拘束するものではない。また、漁業権のように排他的権利の付与を目的とする処分において、他者への免許が有効に存続する以上、重ねて他人に免許を付与することはできない。
問題の所在(論点)
手続違法を理由とする免許取消判決の拘束力が、申請者間の実体的な優先順位にまで及ぶか。また、排他的な漁業権において他者への免許が有効に存続している場合、別個の免許請求を認容できるか。
規範
行政事件訴訟法(当時の判例法理を含む)に基づく取消判決の拘束力(行訴法33条1項参照)は、判決の主文及び理由中で示された違法判断にのみ及ぶ。手続上の違法を理由として処分が取り消された場合、その拘束力は当該手続を是正すべき点に留まり、実体的な申請の当否までを決定づけるものではない。また、同一内容の排他的権利を複数の者に認めることは法律上不可能である。
重要事実
上告人と訴外Dが同一の定置漁業権の免許を申請した際、行政庁はDに対して免許を行い、上告人を拒否した。上告人はこの処分を不服として訴えを提起し、前判決によってDへの免許および上告人への拒否処分は取り消された。しかし、前判決の取消理由は「手続上の違法」のみであり、上告人とDの優先順位を判断したものではなかった。その後、Dに再度免許がなされたことに対し、上告人は自らへの免許義務の確認等を求めて本件を提起した。
あてはめ
前判決は、上告人とDの優先順位を比較して免許を取り消したのではなく、単に手続上の違法を理由として取り消したものに過ぎない。したがって、前判決に「上告人に免許すべき」という実体的な拘束力を生じさせる理由はない。また、漁業権は排他的な権利であり、現にDに対してなされた免許取消請求が認められない以上、同一の内容を目的とする上告人への免許は不可能であるといえる。
結論
上告人に対する免許をすべき旨の請求は、手続違法による取消判決の拘束力の範囲外であり、かつ漁業権の排他性から認容の余地がない。
事件番号: 昭和27(オ)1145 / 裁判年月日: 昭和29年11月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政事件訴訟における執行停止の要件等について、原審の判断を正当として上告を棄却したものである。 第1 事案の概要:上告人が、行政事件訴訟特例法(当時)2条但書の解釈等について不服を申し立て、原判決の破棄を求めて最高裁判所に上告した事案。 第2 問題の所在(論点):行政事件訴訟特例法2条但書の解釈お…
実務上の射程
取消判決の拘束力の範囲(主観的・客観的範囲)が問題となる事案で、特に「手続違法による取消し」と「実体違法による取消し」を区別する際の論拠として活用できる。排他的権利の性質を理由とする「処分不可」の論理は、競願関係にある許認可を巡る訴訟において重要である。
事件番号: 昭和36(オ)1412 / 裁判年月日: 昭和38年12月3日 / 結論: 棄却
他の漁場における定置漁業権免許申請において優先順位にないため競願に敗れ、その存立のため必要な漁業権を取得する見込のなくなつた者を救済するためにのみ新漁場を設定してなされた定置漁業権免許処分は、漁業法第一条に違背し無効である。
事件番号: 昭和31(オ)504 / 裁判年月日: 昭和32年12月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政庁の裁決の取消しを求める訴訟において、前提となる行政処分が当然無効であるとしても、そのことは裁決の適法性を左右するものではなく、裁決の取消事由とはならない。 第1 事案の概要:上告人は、農地買収計画に対して異議申立ておよび訴願を行ったが、被上告人(県知事)は訴願期間経過後の不適法なものであると…