判旨
裁判所が重要な証拠を排斥する際には、単に措信し難いとするのではなく、人を首肯させるに足りる理由を付すべきであり、これを欠く場合は理由不備の違法となる。
問題の所在(論点)
事実認定において、証拠の証拠力を否定(排斥)する場合に、どの程度の理由提示が求められるか。特に、公文書を含む有力な証拠を排斥する場合の理由不備(民訴法312条2項6号参照)の有無が問題となる。
規範
事実認定において、特定の書証や供述を排斥し、これと反対の事実を認定する場合、当該証拠を「措信し難い」とするには、単なる結論の提示にとどまらず、人をして首肯せしめるに足りる具体的な理由を付さなければならない。これを行わない判決は、民事訴訟法上の理由不備の違法を免れない。
重要事実
被上告人が総会の特別決議があったと主張したのに対し、上告人はこれを否定する証拠(報告書、陳述書、公文書である議事録等)を提出した。原審は、これらの証拠について「措信し難い」とだけ判示し、特段の具体的理由を示すことなく被上告人主張の特別決議の存在を認めた。これに対し、上告人が理由不備を主張して上告した事案である。
あてはめ
本件における乙各号証(報告書、陳述書、公文書である議事録等)の内容によれば、総会出席者に非組合員が含まれており、特別決議が存在しなかったとの事実が肯認され得る状況にあった。このような有力な証拠を措信し難いとするには、特段の合理的理由の説明が不可欠である。しかし、原判決は何ら理由を附することなく単に排斥しており、判断の過程が客観的に示されていない。
結論
原判決には理由不備の違法があり、判決に影響を及ぼすことが明らかであるため、原判決を破棄し、差し戻すべきである。
実務上の射程
自由心証主義(民訴法247条)の下でも、主要な証拠を排斥する際には論理則・経験則に照らした説明責任があることを示す。答案上は、理由不備を主張する際の規範として、または証拠評価の合理性を争う際の論拠として活用できる。特に公文書等の証拠力が高い書証を排斥する場合には、高度な説明が要求されることを示唆する。
事件番号: 昭和27(オ)1145 / 裁判年月日: 昭和29年11月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政事件訴訟における執行停止の要件等について、原審の判断を正当として上告を棄却したものである。 第1 事案の概要:上告人が、行政事件訴訟特例法(当時)2条但書の解釈等について不服を申し立て、原判決の破棄を求めて最高裁判所に上告した事案。 第2 問題の所在(論点):行政事件訴訟特例法2条但書の解釈お…
事件番号: 昭和31(オ)154 / 裁判年月日: 昭和31年6月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分が手続上の違法を理由に取り消された場合、判決の拘束力は当該手続不備を是正すべき点にのみ及び、処分の実体的内容まで拘束するものではない。また、漁業権のように排他的権利の付与を目的とする処分において、他者への免許が有効に存続する以上、重ねて他人に免許を付与することはできない。 第1 事案の概要…
事件番号: 昭和30(オ)507 / 裁判年月日: 昭和32年10月31日 / 結論: 破棄差戻
書証の記載およびその体裁から、特段の事情のない限り、その記載どおりの事実を認めるべきである場合に、なんら首肯するに足る理由を示すことなくその書証を排斥するのは、理由不備の違法を免れない。
事件番号: 昭和33(オ)633 / 裁判年月日: 昭和35年11月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】証拠の排斥理由を判決文に逐一記載する必要はなく、裁判所の専権に属する証拠の取捨判断及び事実認定に不合理がなければ適法である。 第1 事案の概要:本件土地の売買をめぐり、当事者間の契約が知事の許可を条件とする単純な売買契約であるか、それとも上告人が主張するような譲渡担保であるかが争われた。原審は、提…