信用協同組合に対し金融整理管財人による業務及び財産の管理を命ずる処分がされても,当該信用協同組合の組合員は,組合員代表訴訟を提起することができ,また,係属中の組合員代表訴訟を追行する権限を失わない。
信用協同組合に対する金融整理管財人による業務及び財産の管理を命ずる処分と組合員が組合員代表訴訟を提起し追行する権限の帰すう
中小企業等協同組合法42条,商法267条,金融機能の再生のための緊急措置に関する法律8条1項,金融機能の再生のための緊急措置に関する法律11条1項
判旨
信用協同組合に対し金融整理管財人による管理処分がなされても、組合員代表訴訟の提起・追行権限は失われず、管財人の権限専属にはならない。管財人はあくまで機関(代表者)の立場で訴訟等を行うにすぎず、組合員代表訴訟の適法性に影響を及ぼさない。
問題の所在(論点)
金融再生法に基づく金融整理管財人による業務・財産の管理処分が命じられた場合、信用協同組合の組合員は、当時の理事等の責任を追及する組合員代表訴訟(中協法42条・商法267条、268条2項準用)を提起・追行する資格を失うか。
規範
金融再生法11条1項及び18条1項は、金融整理管財人が被管理金融機関を代表する立場で職務義務違反の責任追及等の措置をとるべきことを定めたものであり、管財人が当事者として財産等管理処分権を独占する趣旨ではない。したがって、管理処分がなされた後であっても、組合員は「当該信用協同組合のため」に代表訴訟を提起でき、既係属中の訴訟を追行する資格も失われない。組合員代表訴訟への参加資格も同様に維持される。
重要事実
K信用組合の組合員A1が、元理事等の義務違反により損害を被ったとして、組合に代わり損害賠償を求める代表訴訟を提起し、組合員A2・A3が参加した。第1審係属中に、同組合に対し金融再生法に基づく金融整理管財人による管理命令が発令された。原審は、管理命令により理事の責任追及権限は管財人に専属し、組合員は代表訴訟の原告適格を事後的に喪失すると判断し、訴えを却下した。
あてはめ
会社更生法や民事再生法、破産法とは異なり、金融再生法には管財人への訴訟当事者適格の専属や、既係属訴訟の中断・受継に関する規定が存在しない。これは金融整理管財人が被管理金融機関を「代表」する地位にあるためであり、権利主体である金融機関自身が管理処分権を完全に喪失するわけではない。よって、管財人の選任によって組合員の代表訴訟追行権限が排除される法的根拠はなく、管財人は必要に応じて組合を代表して当該訴訟に参加するにとどまる。
結論
組合員は、管理命令の発令後も組合員代表訴訟を提起でき、既係属中の訴訟を追行する資格も失わない。したがって、本件訴え及び参加申出を不適法とした原判決は破棄されるべきである。
実務上の射程
金融機関の破綻処理局面における代表訴訟の帰趨を画した判例である。会社法上の株主代表訴訟においても、会社更生や破産と異なり、単なる代表者の交代(監督官庁による管理等)にすぎない手続が先行した場合には、本判旨の理が及び、株主の提訴権は維持されると解すべき場面がある。
事件番号: 平成27(行ヒ)156 / 裁判年月日: 平成28年1月22日 / 結論: 破棄差戻
漁業協同組合の理事会の議決が,当該議決について特別の利害関係を有する理事が加わってされたものであっても,当該理事を除外してもなお議決の成立に必要な多数が存するときは,その効力は否定されるものではない。