市街化調整区域内にある土地を開発区域として都市計画法(平成26年法律第42号による改正前のもの)29条1項による開発許可を受けた開発行為に関する工事が完了し,当該工事の検査済証が交付された後においても,当該開発許可の取消しを求める訴えの利益は失われない。
市街化調整区域内における開発行為に関する工事が完了し検査済証が交付された後における開発許可の取消しを求める訴えの利益
行政事件訴訟法9条1項,都市計画法(平成26年法律第42号による改正前のもの)29条1項,都市計画法42条1項,都市計画法43条1項
判旨
市街化調整区域内における開発許可は、工事完了後も予定建築物の建築を可能とする法的効果を有するため、工事完了・検査済証交付後であっても当該許可の取消しを求める訴えの利益は失われない。
問題の所在(論点)
市街化調整区域内にある土地を開発区域とする開発許可処分について、当該開発行為に関する工事が完了し、検査済証が交付された後において、当該処分の取消しを求める訴えの利益(行政事件訴訟法9条1項)が認められるか。
規範
開発許可が工事完了・検査済証交付により開発行為を適法に行わせる法的効果を消滅させた後でも、当該許可の存在により予定建築物の建築が可能となる法的効果が継続している場合には、その排除を求める訴えの利益が認められる。市街化区域と異なり、市街化調整区域では開発許可の効力を前提として初めて建築が可能になる(都市計画法42条1項、43条1項)ため、許可の取消しによって建築制限を回復させる法的利益が存続する。
重要事実
鎌倉市長は、市街化調整区域内にある土地について、専用住宅の建築を目的とする開発許可(都市計画法29条1項)を出した。その後、開発行為に関する工事が完了し、市長は検査済証を交付した。周辺住民である被上告人らは、当該開発許可の取消しを求めて提訴したが、工事完了後における訴えの利益の有無が争点となった。
あてはめ
市街化調整区域では、開発許可を受けた区域外では原則として建築が禁止される(法43条1項)一方、許可を受けた区域内では工事完了公告後、予定建築物の建築が可能となる(法42条1項)。このように市街化調整区域における開発許可は、建築を可能とする法的効果を発生させるものである。本件の開発区域は市街化調整区域内にあり、工事完了後であっても、許可の取消しによって「予定建築物の建築が可能になる」という法的効果を排除し、建築制限を課すことができる立場にある。したがって、市街化区域に関する先行判例(完了により利益消滅)の射程は及ばない。
結論
市街化調整区域内にある土地を開発区域とする開発許可については、工事完了・検査済証交付後であっても、訴えの利益は失われない。
実務上の射程
開発許可の工事完了後の訴えの利益について、市街化区域(訴えの利益否定)と市街化調整区域(訴えの利益肯定)を明確に区別した重要判例である。答案では、対象地がいずれの区域かをまず特定し、法42条1項・43条1項の建築制限の有無を理由として論証を組み立てる必要がある。
事件番号: 平成9(行ツ)24 / 裁判年月日: 平成11年10月26日 / 結論: 棄却
市街化区域内にある土地を開発区域として都市計画法(平成四年法律第八二号による改正前のもの)二九条による許可を受けた開発行為に関する工事が完了し、当該工事の検査済証の交付がされた後においては、右開発区域内において予定された建築物についていまだ建築基準法六条に基づく確認がされていないとしても、右許可の取消しを求める訴えの利…
事件番号: 平成7(行ツ)97 / 裁判年月日: 平成7年11月9日 / 結論: 棄却
森林法(平成三年法律第三八号による改正前のもの)一〇条の二による許可を受けた開発行為に関する工事が完了した後においては、右許可の取消しを求める訴えの利益は失われる。
事件番号: 平成2(行ツ)153 / 裁判年月日: 平成4年1月24日 / 結論: 破棄自判
町営の土地改良事業の工事等が完了して原状回復が社会通念上不可能となった場合であっても、右事業の施行の認可の取消しを求める訴えの利益は消滅しない。