森林法(平成三年法律第三八号による改正前のもの)一〇条の二による許可を受けた開発行為に関する工事が完了した後においては、右許可の取消しを求める訴えの利益は失われる。
工事が完了した後における林地開発許可の取消しを求める訴えの利益
行政事件訴訟法9条,森林法(平成3年法律第38号による改正前のもの)10条の2,森林法10条の3
判旨
開発許可処分の取消し等を求める訴えにおいて、当該開発行為に関する工事が完了し、検査済証が交付された場合には、もはや当該処分の取消し等によって回復すべき法的利益は失われる。
問題の所在(論点)
開発許可処分の取消訴訟等において、開発工事が完了し、かつ検査済証の交付がなされた後であっても、なお処分の取消し等を求める訴えの利益(行政事件訴訟法9条1項)が認められるか。
規範
行政事件訴訟法9条1項にいう「法律上の利益」は、当該処分によって侵害された利益が、当該処分の取消し等によって回復し得るものであることを要する。開発許可処分のような工事の実施を目的とする処分については、工事が完了し、検査済証が交付される等の事態に至れば、処分の効力を取り消すことによって現状を回復し、または紛争を解決する実益が失われるものと解される。
重要事実
上告人は、本件土地における開発行為に関する各開発許可処分の取消しおよび無効確認、ならびにこれらに対する裁決の取消しを求めて提訴した。しかし、訴訟の進行中に、本件各開発行為に関する工事は既に完了し、さらに検査済証の交付も既になされていた。
あてはめ
本件において、開発行為に関する工事は既に完了しており、さらに開発許可の内容に適合していることを証する検査済証の交付も完了している。この段階に至ると、開発許可処分の効力を取り消したとしても、既に物理的に完了した工事を遡及的に阻止することはできず、また都市計画法上の手続も完結している。したがって、当該処分の取消し等によって回復すべき法律上の利益はもはや存在しないと評価される。
結論
工事が完了し、検査済証の交付がなされた以上、開発許可処分の取消し等を求める訴えの利益は失われており、本件各訴えは不適法として却下されるべきである。
実務上の射程
本判決は、開発許可の訴えの利益の消滅時期を「工事完了+検査済証交付」としたものである。ただし、建築確認の事案(最判昭59.10.26等)と同様に、工事完了により事実上の法的状態が固定されることを重視する立場といえる。答案上では、取消しによって除去すべき法的・事実的な効果が存続しているか否かの検討において、本法理を適用する。
事件番号: 平成9(行ツ)24 / 裁判年月日: 平成11年10月26日 / 結論: 棄却
市街化区域内にある土地を開発区域として都市計画法(平成四年法律第八二号による改正前のもの)二九条による許可を受けた開発行為に関する工事が完了し、当該工事の検査済証の交付がされた後においては、右開発区域内において予定された建築物についていまだ建築基準法六条に基づく確認がされていないとしても、右許可の取消しを求める訴えの利…
事件番号: 平成27(行ヒ)301 / 裁判年月日: 平成27年12月14日 / 結論: 棄却
市街化調整区域内にある土地を開発区域として都市計画法(平成26年法律第42号による改正前のもの)29条1項による開発許可を受けた開発行為に関する工事が完了し,当該工事の検査済証が交付された後においても,当該開発許可の取消しを求める訴えの利益は失われない。
事件番号: 昭和58(行ツ)35 / 裁判年月日: 昭和59年10月26日 / 結論: 棄却
建築基準法六条一項による確認を受けた建築物の建築等の工事が完了したときは、右確認の取消を求める訴えの利益は失われる。