都市計画法二九条による許可を受けた開発行為に関する工事が完了し、当該工事の検査済証の交付がされた後においては、右許可の取消しを求める訴えの利益は失われる。 (補足意見がある。)
工事が完了し検査済証が交付された後における開発許可の取消しを求める訴えの利益
行政事件訴訟法9条,都市計画法29条,都市計画法81条1項1号
判旨
都市計画法に基づく開発許可に係る工事が完了し、検査済証が交付された後は、当該許可の法的効果は消滅し、また違反是正命令の発出に当該許可の取消しは不要であるため、当該許可の取消しを求める訴えは訴えの利益を欠く。
問題の所在(論点)
開発許可に係る工事が完了し、検査済証が交付された後において、なお当該開発許可の取消しを求める訴えの利益(狭義の訴えの利益)が認められるか。
規範
行政処分の取消しを求める訴えの利益(行政事件訴訟法9条1項)は、当該処分の効果が消滅した後であっても、処分の取消しによって回復すべき法律上の利益がある場合に認められる。しかし、先行処分の存在が後続の是正措置の発出を妨げる法的障害とならず、かつ処分の取消判決が是正命令の発出を義務付ける拘束力も生じさせない場合には、もはや処分の取消しを求める法律上の利益は存しない。
重要事実
上告人らは、都市計画法29条に基づく開発許可を受けた工事について、その許可及び裁決の取消しを求めて提訴した。しかし、訴訟の係属中に当該開発行為に関する工事はすべて完了し、同法36条2項に基づく検査済証の交付も既になされていた。
事件番号: 平成9(行ツ)24 / 裁判年月日: 平成11年10月26日 / 結論: 棄却
市街化区域内にある土地を開発区域として都市計画法(平成四年法律第八二号による改正前のもの)二九条による許可を受けた開発行為に関する工事が完了し、当該工事の検査済証の交付がされた後においては、右開発区域内において予定された建築物についていまだ建築基準法六条に基づく確認がされていないとしても、右許可の取消しを求める訴えの利…
あてはめ
開発許可は、工事完了によりその本来の法的効果を消滅させる。また、同法81条1項1号の違反是正命令について検討するに、同法は基準に適合する場合に限り開発を許容する趣旨であるから、客観的に基準に違反する開発が行われた場合、たとえ誤った開発許可が存在していても、その開発者は「法律に違反した者」に該当する。したがって、開発許可の存在は違反是正命令の発出を妨げる法的障害ではなく、取消判決による拘束力も生じない。以上より、工事完了後は許可の取消しを求める理由がないといえる。
結論
開発行為に関する工事が完了し、検査済証の交付もされた後においては、開発許可の取消しを求める訴えは、訴えの利益を欠き不適法である。
実務上の射程
本判決は、開発許可の訴えの利益の消滅時期を「工事完了・検査済証交付時」と確定させた。建築確認の事案(工事完了により訴えの利益消滅)と同様の流れにあるが、開発許可においては「違反是正命令との関係」から法的障害の有無を論理的に否定している点が重要であり、答案上は建築基準法との仕組みの差異にも配慮が必要である。
事件番号: 平成7(行ツ)97 / 裁判年月日: 平成7年11月9日 / 結論: 棄却
森林法(平成三年法律第三八号による改正前のもの)一〇条の二による許可を受けた開発行為に関する工事が完了した後においては、右許可の取消しを求める訴えの利益は失われる。
事件番号: 昭和58(行ツ)35 / 裁判年月日: 昭和59年10月26日 / 結論: 棄却
建築基準法六条一項による確認を受けた建築物の建築等の工事が完了したときは、右確認の取消を求める訴えの利益は失われる。
事件番号: 平成27(行ヒ)301 / 裁判年月日: 平成27年12月14日 / 結論: 棄却
市街化調整区域内にある土地を開発区域として都市計画法(平成26年法律第42号による改正前のもの)29条1項による開発許可を受けた開発行為に関する工事が完了し,当該工事の検査済証が交付された後においても,当該開発許可の取消しを求める訴えの利益は失われない。