市街化区域内にある土地を開発区域として都市計画法(平成四年法律第八二号による改正前のもの)二九条による許可を受けた開発行為に関する工事が完了し、当該工事の検査済証の交付がされた後においては、右開発区域内において予定された建築物についていまだ建築基準法六条に基づく確認がされていないとしても、右許可の取消しを求める訴えの利益は失われる。
市街化区域内における開発行為に関する工事が完了し検査済証が交付されたが予定建築物についていまだ建築確認がされていない場合における開発許可の取消しを求める訴えの利益
行政事件訴訟法9条,都市計画法(平成4年法律第82号による改正前のもの)29条,建築基準法6条
判旨
都市計画法に基づく開発許可の取消訴訟において、開発行為に関する工事が完了し、検査済証が交付された後は、予定される建築物の建築確認前であっても、訴えの利益は失われる。
問題の所在(論点)
開発許可に基づく工事が完了し、検査済証が交付された場合、その後に予定されている建築物の建築確認が未了であっても、開発許可の取消しを求める訴えの利益は失われるか。
規範
都市計画法上の開発許可(同法29条)は、開発行為そのものを規制するものであり、当該開発行為に関する工事が完了し、検査済証の交付(同法36条2項)がなされた場合には、許可の取消しによって復元すべき工事前の状態が消滅するため、特段の事情がない限り、処分の取消しを求める法的利益は消滅する。
重要事実
1. 被上告人(開発業者)は、福岡市長から都市計画法29条に基づき、市街化区域内の土地について開発許可を受けた。2. その後、当該開発行為に関する工事が完了し、市長は開発業者に対して同法36条2項に基づく検査済証を交付した。3. 上告人らは本件許可の取消しを求めて提訴したが、本件許可に係る開発区域内に予定された建築物については、いまだ建築基準法6条に基づく建築確認はなされていなかった。
あてはめ
本件では、被告(福岡市長)により開発許可に係る工事完了の検査済証が既に交付されている。開発許可は建築物の建築そのものを許可するものではなく、土地の区画形質の変更を規律するものである。したがって、工事が完了し検査済証が交付された段階で、開発許可の目的は達せられており、たとえ建築確認が未了の状態であっても、もはや開発許可を取り消して工事前の状態に復させる必要性や法的効果を認めることはできない。
結論
本件開発許可の取消しを求める訴えの利益は失われたというべきであり、訴えは却下される(本件では上告棄却)。
実務上の射程
開発許可の取消訴訟における訴えの利益の消滅時期を確定させた判例である。建築確認の有無にかかわらず「検査済証の交付」を画期とする点に特徴がある。答案では、行政上の処分によって生じた状態が不可逆的になった場合の訴えの利益の検討において、本判例を引用して結論を導く。ただし、開発許可に付随して他の法的効果が残存する場合などの「特段の事情」がある場合には、例外的に訴えの利益が認められる余地がある点に留意する。
事件番号: 平成7(行ツ)97 / 裁判年月日: 平成7年11月9日 / 結論: 棄却
森林法(平成三年法律第三八号による改正前のもの)一〇条の二による許可を受けた開発行為に関する工事が完了した後においては、右許可の取消しを求める訴えの利益は失われる。
事件番号: 平成27(行ヒ)301 / 裁判年月日: 平成27年12月14日 / 結論: 棄却
市街化調整区域内にある土地を開発区域として都市計画法(平成26年法律第42号による改正前のもの)29条1項による開発許可を受けた開発行為に関する工事が完了し,当該工事の検査済証が交付された後においても,当該開発許可の取消しを求める訴えの利益は失われない。
事件番号: 昭和58(行ツ)35 / 裁判年月日: 昭和59年10月26日 / 結論: 棄却
建築基準法六条一項による確認を受けた建築物の建築等の工事が完了したときは、右確認の取消を求める訴えの利益は失われる。
事件番号: 平成2(行ツ)153 / 裁判年月日: 平成4年1月24日 / 結論: 破棄自判
町営の土地改良事業の工事等が完了して原状回復が社会通念上不可能となった場合であっても、右事業の施行の認可の取消しを求める訴えの利益は消滅しない。