建築基準法六条一項による確認を受けた建築物の建築等の工事が完了したときは、右確認の取消を求める訴えの利益は失われる。
工事が完了した場合における建築確認の取消を求める訴えの利益の有無
行政事件訴訟法9条,建築基準法6条1項
判旨
建築確認の効力は工事着手を可能にする点に留まり、工事完了後は建築確認の取消しによって検査済証の交付拒否や違反是正命令を義務付ける法的拘束力も生じないため、工事完了をもって訴えの利益は消滅する。
問題の所在(論点)
建築確認を受けた建築物の工事が完了した場合、当該建築確認の取消しを求める訴えの利益(行政事件訴訟法9条1項)は失われるか。
規範
処分後に生じた事情により、処分の取消しによって回復すべき法律上の利益(行政事件訴訟法9条1項)が失われた場合には、訴えの利益が消滅する。建築確認は工事着手前に計画の適合性を公判断する行為であり、工事着手を可能にする法的効果を有する。しかし、工事完了後の検査済証交付や違反是正命令の可否は、建築確認の存否や計画との一致ではなく、建築物現況の法令適合性を基準に判断される。したがって、建築確認の取消判決がなされても、これら後続の措置を拘束する効力は生じないため、工事完了後は確認の取消しを求める訴えの利益は失われる。
重要事実
建築主である相手方が、建築基準法6条1項に基づき建築主事から建築確認を受けた。これに対し、周辺住民等である上告人が当該建築確認の取消しを求めて提訴した。しかし、訴訟の係属中に当該建築物の工事がすべて完了し、建築主事による完了検査等が行われる段階に至った。
あてはめ
建築確認の主な法的効果は、これを受けなければ工事ができないという点にある(同法6条5項)。工事が完了した以上、この効果は既に目的を達している。また、完了後の検査済証の交付(7条)や違反是正命令(9条1項)は、建築物の現況が建築関係規定に適合するかを基準とするものであり、建築確認の計画通りか否かを基準とするものではない。さらに、是正命令の発出は特定行政庁の裁量に属する。よって、建築確認が違法として取り消されたとしても、当然に是正命令等を義務付ける法的拘束力が生じるわけではなく、取消しによって回復される利益は認められない。
結論
本件各建築確認に係る建築物の工事は既に完了しているため、上告人がその取消しを求める訴えの利益は失われたものといわざるを得ない。
実務上の射程
建築確認の取消訴訟において、工事完了が訴えの利益の消滅事由になることを示したリーディングケースである。答案上は、行訴法9条1項後段の「処分…の効果が期間の経過その他の理由によりなくなつた後においても…取消しによつて回復すべき法律上の利益」の有無を検討する文脈で使用する。建物が完成してしまった以上、建築確認の効力(工事を可能にする効力)を争う意味がなくなるため、実務上は工事完了前に執行停止を申し立てることが極めて重要となる。
事件番号: 平成9(行ツ)24 / 裁判年月日: 平成11年10月26日 / 結論: 棄却
市街化区域内にある土地を開発区域として都市計画法(平成四年法律第八二号による改正前のもの)二九条による許可を受けた開発行為に関する工事が完了し、当該工事の検査済証の交付がされた後においては、右開発区域内において予定された建築物についていまだ建築基準法六条に基づく確認がされていないとしても、右許可の取消しを求める訴えの利…
事件番号: 平成9(行ツ)7 / 裁判年月日: 平成14年1月22日 / 結論: その他
建築基準法(平成4年法律第82号による改正前のもの)59条の2第1項に基づくいわゆる総合設計許可に係る建築物の倒壊,炎上等により直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に存する建築物に居住し又はこれを所有する者は,同許可の取消訴訟の原告適格を有する。
事件番号: 平成7(行ツ)97 / 裁判年月日: 平成7年11月9日 / 結論: 棄却
森林法(平成三年法律第三八号による改正前のもの)一〇条の二による許可を受けた開発行為に関する工事が完了した後においては、右許可の取消しを求める訴えの利益は失われる。