町営の土地改良事業の工事等が完了して原状回復が社会通念上不可能となった場合であっても、右事業の施行の認可の取消しを求める訴えの利益は消滅しない。
土地改良事業の工事等が完了して原状回復が社会通念上不可能となった場合と右事業の施行の認可の取消しを求める訴えの利益の帰すう
行政事件訴訟法9条31条,土地改良法96条の2第1項
判旨
土地改良事業施行認可処分の取消訴訟において、事業計画の工事及び換地処分が完了し、原状回復が社会通念上不可能となったとしても、訴えの利益は消滅しない。このような社会的・経済的損失等の事情は、行政事件訴訟法31条に基づく事情判決の適用において考慮されるべき事柄である。
問題の所在(論点)
土地改良事業の施行認可処分の取消訴訟において、工事及び換地処分が完了し、原状回復が社会通念上不可能となった場合に、行政事件訴訟法9条1項の「法律上の利益」が消滅し、訴えの利益が失われるか。
規範
取消訴訟において、処分の効果が期間の経過その他の理由により消滅した後においても、処分の取消しによって回復すべき法律上の利益を有する者は、訴えの利益を失わない(行政事件訴訟法9条1項後段参照)。土地改良事業のように、先行する認可処分を前提として後続の換地処分等がなされる一連の手続において、工事完了等により原状回復が社会通念上不可能であるという事情は、訴えの利益を消滅させる理由にはならず、同法31条の事情判決の適否において考慮されるべきである。
重要事実
D町が行う土地改良事業について、被上告人が事業施行認可処分(本件認可処分)を行った。上告人は、本件事業が土地改良法上の必要性等を欠く違法なものであるとして取消訴訟を提起したが、訴訟係属中に工事および換地処分がすべて完了した。一審および原審は、社会的・経済的損失の観点から原状回復が社会通念上不可能であり、違法状態を除去する実益がないとして、訴えの利益を否定し訴えを却下した。
事件番号: 昭和59(行ツ)318 / 裁判年月日: 昭和61年2月13日 / 結論: その他
市町村営土地改良事業の施行の認可は、取消訴訟の対象となる行政処分に当たる。
あてはめ
本件認可処分は、施行者に事業施行権を付与するものであり、後続の換地処分等は認可処分が有効に存在することを前提とする。したがって、認可処分が取り消されれば、換地処分等の法的効力も影響を受ける。工事完了等により原状回復が社会通念上不可能であるとしても、それは処分を取り消すことが公共の福祉に適合しないかどうかという事情判決(法31条)の問題として処理すべきである。これを理由に直ちに訴えの利益を否定することは、行政処分の違法性を争う権利を不当に制限することになり、認められない。
結論
事業完了や原状回復の困難性は、事情判決の適用において考慮されるべき事柄であり、上告人の法律上の利益を消滅させるものではない。したがって、訴えの利益は認められる。
実務上の射程
開発許可や土地改良事業など、後続処分を伴う一連の行政手続における訴えの利益の存否を論じる際に必須の判例である。特に「原状回復が困難=訴えの利益なし」という被告側の抗弁に対し、事情判決の枠組み(31条)で解決すべきであることを示す論法として用いる。ただし、建築確認のように工事完了により処分の効果が完全に尽きる場合との区別に注意を要する。
事件番号: 平成9(行ツ)24 / 裁判年月日: 平成11年10月26日 / 結論: 棄却
市街化区域内にある土地を開発区域として都市計画法(平成四年法律第八二号による改正前のもの)二九条による許可を受けた開発行為に関する工事が完了し、当該工事の検査済証の交付がされた後においては、右開発区域内において予定された建築物についていまだ建築基準法六条に基づく確認がされていないとしても、右許可の取消しを求める訴えの利…
事件番号: 昭和46(行ツ)63 / 裁判年月日: 昭和50年11月28日 / 結論: 棄却
住宅地区改良事業の事業計画の認可は、抗告訴訟の対象となる行政庁の処分にあたらない。
事件番号: 昭和41(行ツ)77 / 裁判年月日: 昭和48年2月2日 / 結論: 破棄自判
土地区画整理法一〇三条による換地処分がなされたときは、右処分における従前の宅地についてなされた仮換地指定処分の取消を求める訴の利益は失われる。