市町村営土地改良事業の施行の認可は、取消訴訟の対象となる行政処分に当たる。
市町村営土地改良事業の施行の認可と取消訴訟の対象
行政事件訴訟法3条2項,土地改良法10条1項,土地改良法96条の2第1項,土地改良法96条の2第5項
判旨
市町村営土地改良事業の施行認可は、特定の地域について事業の施行を決定し、土地所有者等に一定の制約を課すものであるから行政処分に当たる。一方、これに先行する異議申出に対する棄却決定は、監督権の発動を促す手続にすぎず、処分性は否定される。
問題の所在(論点)
1. 市町村営土地改良事業に関し、都道府県知事が行う事業施行の認可(土地改良法96条の2第7項)に処分性が認められるか。 2. 認可に先立ってなされる異議申出(同法9条1項)に対する棄却決定に処分性が認められるか。
規範
行政事件訴訟法3条2項にいう「処分」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為をいう。具体的には、その行為によって、直接国民の権利義務を形成し、またはその範囲を確定することが法律上認められているものを指す。事業計画の決定や認可であっても、公告により損失補償の制限が生じ、工事着手の法的基礎となるなど、住民の法的地位に直接影響を及ぼすものは処分性を有する。
重要事実
上告人は、兵庫県知事が行った町営土地改良事業の事業施行認可(土地改良法96条の2第7項)および、これに先行してなされた上告人の異議申出を棄却する決定の取消しを求めて提訴した。一審・二審は、土地改良事業計画の決定に処分性を認めた先行判例(最判昭41・2・23)は本件に適合しないとして、いずれも処分性を否定し訴えを却下したため、上告人が上告した。
事件番号: 平成2(行ツ)153 / 裁判年月日: 平成4年1月24日 / 結論: 破棄自判
町営の土地改良事業の工事等が完了して原状回復が社会通念上不可能となった場合であっても、右事業の施行の認可の取消しを求める訴えの利益は消滅しない。
あてはめ
1. 事業施行の認可について:土地改良法上、認可は公告を伴い(96条の2第7項)、公告後は土地の形質変更等に対する損失補償が原則として制限される(122条2項)。また、認可により工事着手が可能となる一連の手続上の位置・役割に鑑みれば、国営・都道府県営事業の計画決定と同様に、住民の権利義務に直接影響を及ぼす行政処分といえる。 2. 異議申出棄却決定について:この異議申出制度は、認可前の段階で利害関係人に意見表明の機会を与え、知事の監督権発動を促す趣旨のものである。したがって、これに対する棄却決定自体は利害関係人の法的地位に何ら直接の影響を及ぼすものではなく、処分性は認められない。
結論
1. 市町村営土地改良事業の施行認可は処分性を有するため、これに対する取消請求を却下した原判決は破棄を免れない。 2. 異議申出棄却決定は処分性を有しないため、これに対する訴えを不適法とした原審の判断は正当である。
実務上の射程
土地改良事業の施行認可に処分性を認めた重要な判例である。答案上は、制度的枠組み(公告による補償制限、工事の前提)を摘示し、「国民の法的地位に直接影響を及ぼす」という処分性の定義にあてはめる際の準拠枠組みとして活用できる。また、内部的な不服申立手続(本件の異議申出)が独立した処分性を有しない点も、処分性の有無を論じる際の対比として有用である。
事件番号: 昭和46(行ツ)63 / 裁判年月日: 昭和50年11月28日 / 結論: 棄却
住宅地区改良事業の事業計画の認可は、抗告訴訟の対象となる行政庁の処分にあたらない。
事件番号: 平成15(行ヒ)321 / 裁判年月日: 平成18年9月4日 / 結論: 破棄差戻
建設大臣が,林業試験場の跡地を利用して設置される公園に関する都市計画を決定するに当たって,上記試験場には貴重な樹木が多くその保全のためには上記試験場の南門の位置に上記公園の南門を設けるのが望ましいという前提の下に,南門と区道との接続部分として利用するため,上記試験場と区道とに挟まれた土地のうち,国家公務員宿舎の敷地とし…
事件番号: 平成17(行ヒ)397 / 裁判年月日: 平成20年9月10日 / 結論: 破棄自判
市町村の施行に係る土地区画整理事業の事業計画の決定は,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。 (補足意見及び意見がある。)
事件番号: 昭和52(行ツ)71 / 裁判年月日: 昭和52年12月23日 / 結論: 棄却
土地区画整理法二〇条三項所定の利害関係者の意見書に係る意見を採択すべきでない旨の都道府県知事の通知は、取消訴訟の対象となる「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」にあたらない。