一 開発区域内の土地が都市計画法(平成四年法律第八二号による改正前のもの)三三条一項七号にいうがけ崩れのおそれが多い土地等に当たる場合には、がけ崩れ等により生命、身体等に直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に居住する者は、開発許可の取消訴訟の原告適格を有する。 二 開発行為によって起こり得るがけ崩れ等により生命、身体等を侵害されるおそれがあると主張して開発許可の取消訴訟を提起した開発区域周辺住民が死亡したときは、右訴訟は当然終了する。
一 がけ崩れのおそれが多い土地等を開発区域内に含む開発許可の取消訴訟と開発区域周辺住民の原告適格 二 開発許可の取消訴訟を提起した開発区域周辺住民の死亡と訴訟承継の成否
行政事件訴訟法9条,都市計画法(平成4年法律第82号による改正前のもの)29条,都市計画法(平成4年法律第82号による改正前のもの)33条1項7号,都市計画法施行令28条,都市計画法施行規則23条,都市計画法施行規則(平成5年建設省令第8号による改正前のもの)27条,民訴法208条
判旨
都市計画法33条1項7号は、がけ崩れ等による直接的な被害が想定される開発区域周辺住民の生命・身体の安全を個別的利益として保護する趣旨を含む。したがって、当該被害の予想範囲内に居住する者は、開発許可の取消訴訟における原告適格を有する。
問題の所在(論点)
開発許可の基準を定める都市計画法33条1項7号(地盤の安全性等)が、近隣住民の個別的利益を保護する趣旨を含むか。また、それに基づき住民らに原告適格(行訴法9条1項)が認められるか。
規範
行政事件訴訟法9条1項にいう「法律上の利益を有する者」とは、当該処分を定めた行政法規が、不特定多数者の具体的利益を一般的公益に吸収させるにとどめず、個々人の個別的利益としても保護する趣旨を含む場合に、その利益を侵害されるおそれのある者を指す。この判断に際しては、当該法規の趣旨・目的、保護しようとしている利益の内容・性質等を考慮すべきである。
事件番号: 平成8(行ツ)180 / 裁判年月日: 平成13年3月13日 / 結論: その他
土砂の流出又は崩壊,水害等の災害により生命,身体等に直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に居住する者は,森林法(平成11年法律第87号による改正前のもの)10条の2による開発許可の取消訴訟の原告適格を有する。
重要事実
D社らが急傾斜の斜面(開発区域)を掘削・整地し、共同住宅を建築する目的で都市計画法29条に基づく開発許可を受けた。これに対し、当該区域の上方または下方の近接地に居住する住民らが、がけ崩れ等により生命・身体を侵害されるおそれがあるとして、開発許可の取消しを求めて提訴した。
あてはめ
同法33条1項7号、施行令28条等は、がけ崩れ等の災害防止のため具体的・詳細な審査を課している。この規定が保護する利益は、開発区域内外の一定範囲の住民の生命・身体の安全であり、直接的な被害が予想される範囲の住民については、個別的利益として保護する趣旨と解される。本件住民らは開発区域に近接する土地に居住しており、がけ崩れ等による直接的な被害を受けることが予想される範囲内にあれば、原告適格が認められる。
結論
開発区域内の土地ががけ崩れのおそれがある場合、直接的被害の予想範囲内に居住する住民は、開発許可の取消しを求めるにつき原告適格を有する。
実務上の射程
行訴法9条2項(平成16年改正)の判断枠組みを先取りした重要判例である。答案では、処分の根拠法規の具体的条文(本件では33条1項7号)を摘示し、その保護利益の個別性を論証する際のスタンダードとして活用する。また、本判決は被害利益が「生命・身体の安全」という一身専属的なものであることから、原告の死亡により訴訟が終了する点(相続の否定)についても言及している。
事件番号: 平成9(行ツ)7 / 裁判年月日: 平成14年1月22日 / 結論: その他
建築基準法(平成4年法律第82号による改正前のもの)59条の2第1項に基づくいわゆる総合設計許可に係る建築物の倒壊,炎上等により直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に存する建築物に居住し又はこれを所有する者は,同許可の取消訴訟の原告適格を有する。
事件番号: 平成27(行ヒ)301 / 裁判年月日: 平成27年12月14日 / 結論: 棄却
市街化調整区域内にある土地を開発区域として都市計画法(平成26年法律第42号による改正前のもの)29条1項による開発許可を受けた開発行為に関する工事が完了し,当該工事の検査済証が交付された後においても,当該開発許可の取消しを求める訴えの利益は失われない。