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建築基準法四八条一項但書の許可に係る建築物の敷地の隣接居住者が当該許可の取消しを求める原告適格を有しないとされた事例
行政事件訴訟法9条,建築基準法48条1項但書
判旨
建築基準法48条1項但書に基づく許可処分の取消しを求める訴えについて、周辺住民が原告適格(行政事件訴訟法9条1項)を有しないとした原審の判断を正当として是認した。
問題の所在(論点)
建築基準法48条1項(用途地域における建築制限)及び同項但書(例外許可)の規定が、周辺住民の良好な住環境を享受する個別の法的利益として保護する趣旨を含み、行政事件訴訟法9条1項の「法律上の利益」を基礎付けるか。
規範
行政事件訴訟法9条1項にいう「法律上の利益を有する者」とは、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者をいう。当該法条が不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に解消させるにとどめず、個々人の個別的利益としても保護する趣旨を含むか否かは、当該法条の目的、性質及び関係法規の構造を総合的に考慮して判断すべきである。
重要事実
上告人は、建築基準法48条1項に基づく建築許可(第一種低層住居専用地域内における建築制限の例外許可)の取消しを求めて提訴した。原審(東京高裁昭和58年12月19日判決)は、同条項の目的は良好な住居の環境を保護するという一般的公益の保護にあり、周辺住民の個別的利益を保護する趣旨ではないとして、上告人の原告適格を否定した。本最高裁判決は、この原審の判断を正当として上告を棄却したものである。
事件番号: 平成9(行ツ)7 / 裁判年月日: 平成14年1月22日 / 結論: その他
建築基準法(平成4年法律第82号による改正前のもの)59条の2第1項に基づくいわゆる総合設計許可に係る建築物の倒壊,炎上等により直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に存する建築物に居住し又はこれを所有する者は,同許可の取消訴訟の原告適格を有する。
あてはめ
最高裁は、原審の判断(同条項が周辺住民の個別的利益を保護するものではないとした点)を「結論において正当」と追認した。建築基準法48条1項の用途制限は、都市計画を通じた合理的な土地利用という一般的公益を目的とするものであり、周辺住民が受ける良好な住環境の維持という利益は、同条項が直接的に保護を図る個別の権利・利益ではなく、一般的公益の実現に伴って生じる反射的利益にすぎないと解される。
結論
建築基準法48条1項但書に基づく許可処分の取消しを求めるにつき、周辺住民は原告適格を有しない。
実務上の射程
本判決(小田急高架訴訟以前)は、用途制限規定の原告適格について否定的な立場を維持した。現在の実務では、平成16年行訴法改正(9条2項)及びその後の判例(小田急判決等)を踏まえ、個別法(建築基準法)の趣旨をより慎重に検討するが、用途地域規制一般については依然として反射的利益と解される場合が多い点に留意が必要である。
事件番号: 平成6(行ツ)189 / 裁判年月日: 平成9年1月28日 / 結論: その他
一 開発区域内の土地が都市計画法(平成四年法律第八二号による改正前のもの)三三条一項七号にいうがけ崩れのおそれが多い土地等に当たる場合には、がけ崩れ等により生命、身体等に直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に居住する者は、開発許可の取消訴訟の原告適格を有する。 二 開発行為によって起こり得るがけ崩れ等により生…
事件番号: 平成16(行ヒ)114 / 裁判年月日: 平成17年12月7日 / 結論: その他
1 都市計画事業の事業地の周辺に居住する住民のうち同事業が実施されることにより騒音,振動等による健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある者は,都市計画法(平成11年法律第160号による改正前のもの)59条2項に基づいてされた同事業の認可の取消訴訟の原告適格を有する。 2 鉄道の連続立体交差化を内容と…
事件番号: 平成8(行ツ)76 / 裁判年月日: 平成11年11月25日 / 結論: 棄却
都市計画事業の事業地の周辺地域に居住し又は通勤、通学しているが事業地内の不動産につき権利を有しない者は、都市計画法五九条二項に基づく同事業の認可処分又は同条三項に基づく同事業の承認処分の取消しを求める原告適格を有しない。
事件番号: 昭和58(行ツ)35 / 裁判年月日: 昭和59年10月26日 / 結論: 棄却
建築基準法六条一項による確認を受けた建築物の建築等の工事が完了したときは、右確認の取消を求める訴えの利益は失われる。