1 都市計画事業の事業地の周辺に居住する住民のうち同事業が実施されることにより騒音,振動等による健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある者は,都市計画法(平成11年法律第160号による改正前のもの)59条2項に基づいてされた同事業の認可の取消訴訟の原告適格を有する。 2 鉄道の連続立体交差化を内容とする都市計画事業の事業地の周辺に居住する住民のうち同事業に係る東京都環境影響評価条例(昭和55年東京都条例第96号。平成10年東京都条例第107号による改正前のもの)2条5号所定の関係地域内に居住する者は,その住所地が同事業の事業地に近接していること,上記の関係地域が同事業を実施しようとする地域及びその周辺地域で同事業の実施が環境に著しい影響を及ぼすおそれがある地域として同条例13条1項に基づいて定められたことなど判示の事情の下においては,都市計画法(平成11年法律第160号による改正前のもの)59条2項に基づいてされた同事業の認可の取消訴訟の原告適格を有する。 3 鉄道の連続立体交差化に当たり付属街路を設置することを内容とする都市計画事業が鉄道の連続立体交差化を内容とする都市計画事業と別個の独立したものであること,上記付属街路が鉄道の連続立体交差化に当たり環境に配慮して日照への影響を軽減することを主たる目的として設置されるものであることなど判示の事情の下においては,付属街路の設置を内容とする上記事業の事業地の周辺に居住する住民は,都市計画法(平成11年法律第160号による改正前のもの)59条2項に基づいてされた同事業の認可の取消訴訟の原告適格を有しない。 (1,2につき補足意見,3につき補足意見及び反対意見がある。)
1 都市計画事業の認可の取消訴訟と事業地の周辺住民の原告適格 2 鉄道の連続立体交差化を内容とする都市計画事業の事業地の周辺住民が同事業の認可の取消訴訟の原告適格を有するとされた事例 3 鉄道の連続立体交差化に当たり付属街路を設置することを内容とする都市計画事業の事業地の周辺住民が同事業の認可の取消訴訟の原告適格を有しないとされた事例
行政事件訴訟法9条,都市計画法(平成11年法律第160号による改正前のもの)59条2項,都市計画法(平成7年法律第14号による改正前のもの)13条1項,都市計画法(平成11年法律第160号による改正前のもの)61条,公害対策基本法19条,環境基本法17条,東京都環境影響評価条例(昭和55年東京都条例第96号。平成10年東京都条例第107号による改正前のもの)24条,東京都環境影響評価条例(昭和55年東京都条例第96号。平成10年東京都条例第107号による改正前のもの)25条,東京都環境影響評価条例(昭和55年東京都条例第96号。平成10年東京都条例第107号による改正前のもの)45条,東京都環境影響評価条例(昭和55年東京都条例第96号。平成14年東京都条例第127号による改正前のもの)2条3号,東京都環境影響評価条例(昭和55年東京都条例第96号。平成10年東京都条例第107号による改正前のもの)2条5号,東京都環境影響評価条例(昭和55年東京都条例第96号。平成10年東京都条例第107号による改正前のもの)13条1項,東京都環境影響評価条例(昭和55年東京都条例第96号。平成10年東京都条例第107号による改正前のもの)別表3号
判旨
新幹線鉄道の事業計画および工事実施計画の承認処分について、工事予定地周辺の住民は、騒音・振動等により健康や生活環境に直接的かつ重大な被害を受ける恐れがある範囲内に限り、当該処分の取消しを求める「法律上の利益を有する者」に当たる。
事件番号: 平成16(行ヒ)114 / 裁判年月日: 平成18年11月2日 / 結論: 棄却
都知事が都市高速鉄道に係る都市計画の変更を行うに際し鉄道の構造として高架式を採用した場合において,(1)都知事が,建設省の定めた連続立体交差事業調査要綱に基づく調査の結果を踏まえ,上記鉄道の構造について,高架式,高架式と地下式の併用,地下式の三つの方式を想定して事業費等の比較検討をした結果,高架式が優れていると評価し,…
問題の所在(論点)
全国新幹線鉄道整備法に基づく事業計画および工事実施計画の承認処分の取消訴訟において、周辺住民に原告適格(行政事件訴訟法9条1項)が認められるか。
規範
行政事件訴訟法9条1項の「法律上の利益を有する者」とは、処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者をいう。当該利益の有無は、根拠法規の趣旨・目的および処分において考慮されるべき利益の性質を考慮し、一般公益のみならず個々の住民の個別的利益をも保護する趣旨を含むか否かで判断される。
重要事実
運輸大臣(当時)が全国新幹線鉄道整備法に基づき、日本鉄道建設公団(当時)に対し、東北新幹線(小山・盛岡間)の工事実施計画等を承認した。これに対し、線路周辺に居住する住民らが、騒音や振動による健康被害や生活環境の悪化を理由として、当該承認処分の取消しを求めて提訴した。
あてはめ
全国新幹線鉄道整備法は、新幹線鉄道による騒音等の障害を防止し生活環境を保全することを目的とする環境庁(当時)の告示(環境基準)を遵守すべき義務を事業者に課しており、これは周辺住民の健康や生活環境という具体的利益を保護する趣旨を含むと解される。したがって、新幹線鉄道の運行に伴う騒音・振動等により、社会通念上受忍すべき限度を超える直接的かつ重大な被害を受けるおそれのある地域に居住する住民は、一般公益の帰属を離れた個別的利益を享受する立場にあるといえる。
結論
工事予定地周辺の住民のうち、騒音・振動等により直接的な被害を受ける恐れがある範囲に居住する者は、処分の取消しを求める原告適格を有する。
実務上の射程
環境・生活環境に係る行政処分の原告適格を広く認めた重要判例。判断枠組みは後の「小田急高架訴訟」等にも引き継がれており、根拠法規が周辺住民の個別的利益を保護しているかを検討する際のリーディングケースとなる。
事件番号: 平成8(行ツ)76 / 裁判年月日: 平成11年11月25日 / 結論: 棄却
都市計画事業の事業地の周辺地域に居住し又は通勤、通学しているが事業地内の不動産につき権利を有しない者は、都市計画法五九条二項に基づく同事業の認可処分又は同条三項に基づく同事業の承認処分の取消しを求める原告適格を有しない。
事件番号: 昭和57(行ツ)46 / 裁判年月日: 平成元年2月17日 / 結論: 棄却
定期航空運送事業免許に係る路線を航行する航空機の騒音によつて社会通念上著しい障害を受けることとなる飛行場周辺住民は、当該免許の取消しを訴求する原告適格を有する。
事件番号: 平成14(行ツ)187 / 裁判年月日: 平成17年11月1日 / 結論: 棄却
昭和13年に旧都市計画法(昭和43年法律第100号による廃止前のもの)3条に基づき決定された都市計画に係る計画道路の区域内にその一部が含まれる土地が,当初は市街地建築物法の規定に基づき,後に建築基準法(昭和43年法律第101号による改正前のもの)44条2項に基づいて建築物の建築等の制限を課せられ,現に都市計画法53条に…