定期航空運送事業免許に係る路線を航行する航空機の騒音によつて社会通念上著しい障害を受けることとなる飛行場周辺住民は、当該免許の取消しを訴求する原告適格を有する。
定期航空運送事業免許の取消訴訟と飛行場周辺住民の原告適格
行政事件訴訟法9条,航空法100条,航空法101条
判旨
定期航空運送事業免許につき、飛行場周辺住民が騒音障害を理由に取消訴訟を提起する場合、当該免許の根拠法が個々人の個別的利益を保護する趣旨を含むときは、社会通念上著しい障害を受ける者に限り原告適格が認められる。もっとも、自己の法律上の利益に関係のない違法事由のみを主張することは、行政事件訴訟法10条1項により許されない。
問題の所在(論点)
1. 航空法に基づく定期航空運送事業免許の取消訴訟において、飛行場周辺の住民に原告適格(行訴法9条1項)が認められるか。 2. 騒音被害を理由に原告適格が認められるとしても、騒音とは直接関係のない違法事由(手続不備等)を主張して処分の取消しを求めることができるか(行訴法10条1項)。
規範
行政事件訴訟法9条1項にいう「法律上の利益を有する者」とは、処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいう。当該処分を定めた行政法規が、不特定多数者の具体的利益をもっぱら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には、かかる利益も「法律上保護された利益」に当たる。その趣旨の有無は、当該行政法規及びそれと目的を共通する関連法規の関係規定によって形成される法体系の中において、当該処分の根拠規定が、当該処分を通して個々人の個別的利益をも保護すべきものとして位置付けられているかによって決すべきである。
重要事実
事件番号: 平成16(行ヒ)114 / 裁判年月日: 平成17年12月7日 / 結論: その他
1 都市計画事業の事業地の周辺に居住する住民のうち同事業が実施されることにより騒音,振動等による健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある者は,都市計画法(平成11年法律第160号による改正前のもの)59条2項に基づいてされた同事業の認可の取消訴訟の原告適格を有する。 2 鉄道の連続立体交差化を内容と…
上告人は、大阪国際空港周辺に居住する住民である。運輸大臣(当時)が日本航空株式会社等に対し、定期航空運送事業免許を付与したところ、上告人は当該免許に係る路線の航空機騒音により障害を受けるとして、免許の取消しを求めて提訴した。上告人が主張した違法事由は、着陸帯等の供用開始手続の不備や、路線の利用目的・輸送力の供給過剰といった点であった。第一審及び原審は、上告人の原告適格を否定して訴えを却下した。
あてはめ
1. 航空法1条の目的に騒音障害の防止が含まれ、101条1項3号の免許基準(事業計画の適切性)の審査においては、周辺住民の騒音障害の有無・程度を考慮すべきである。航空機騒音の被害は周辺の一定範囲の住民に限定され、居住地が経路に接近するほど増大する性質を持つ。したがって、航空法は一般的公益のみならず、著しい騒音障害を受けないという「個々人の個別的利益」をも保護する趣旨を含むと解される。よって、社会通念上著しい障害を受ける者は原告適格を有する。 2. しかし、本件で上告人が主張する違法事由は、着陸帯の供用手続や路線の社会的需要に関するものであり、これらは周辺住民が受ける騒音被害という「自己の法律上の利益」とは直接関係がない。したがって、行訴法10条1項により、これらの主張に基づく取消請求は認められない。
結論
上告人に原告適格を認めうる場合であっても、主張された違法事由が自己の法律上の利益に関係しないときは、主張自体失当として棄却されるべきである(本件では不利益変更禁止の原則により、却下した原判決を維持し上告棄却)。
実務上の射程
原告適格の判断枠組み(個別的利益保護性の判断手法)を示したリーディングケース。答案では「法律上の利益」の定義に続けて、航空法の構造(1条の目的、免許基準、関連法規)を分析する流れで使用する。また、原告適格が認められても、行訴法10条1項により主張可能な違法事由が制限されるという実務上の留意点(自己の利益に関連する違反のみ主張可能)を論じる際に不可欠な判例である。
事件番号: 昭和40(行ツ)101 / 裁判年月日: 昭和46年10月28日 / 結論: 棄却
道路運送法三条二項三号に定める一般乗用旅客自動車運送事業である一人一車制の個人タクシー事業の免許にあたり、多数の申請人のうちから少数特定の者を具体的個別的事実関係に基づき選択してその免許申請の許否を決しようとするときには、同法六条の規定の趣旨にそう具体的審査基準を設定してこれを公正かつ合理的に適用すべく、右基準の内容が…
事件番号: 昭和57(行ツ)149 / 裁判年月日: 昭和60年12月17日 / 結論: 棄却
公有水面埋立法(昭和四八年法律第八四号による改正前のもの)二条の埋立免許及び同法二二条の竣功認可の取消訴訟につき、当該公有水面の周辺の水面において漁業を営む権利を有するにすぎない者は、原告適格を有しない。
事件番号: 昭和42(行ツ)84 / 裁判年月日: 昭和50年5月29日 / 結論: 棄却
一、一般乗合旅客自動車運送事業の免許に関し運輸審議会の公聴会が開催された場合には、陸運局長の聴聞手続の瑕疵は、免許の許否に関する運輸大臣の処分の適法性に影響を与えない。 二、諮問の経由を必要とする行政処分が諮問を経てされた場合においても、当該諮問機関の審理、決定(答申)の過程に重大な法規違反があることなどによりその決定…
事件番号: 平成20(行ヒ)247 / 裁判年月日: 平成21年10月15日 / 結論: その他
1 自転車競技法(平成19年法律第82号による改正前のもの)4条2項に基づく設置許可がされた場外車券発売施設の周辺において居住し又は事業(文教施設又は医療施設に係る事業を除く。)を営む者や,周辺に所在する文教施設又は医療施設の利用者は,自転車競技法施行規則(平成18年経済産業省令第126号による改正前のもの)15条1項…