都知事が都市高速鉄道に係る都市計画の変更を行うに際し鉄道の構造として高架式を採用した場合において,(1)都知事が,建設省の定めた連続立体交差事業調査要綱に基づく調査の結果を踏まえ,上記鉄道の構造について,高架式,高架式と地下式の併用,地下式の三つの方式を想定して事業費等の比較検討をした結果,高架式が優れていると評価し,周辺地域の環境に与える影響の点でも特段問題がないと判断したものであること,(2)上記の判断が,東京都環境影響評価条例(昭和55年東京都条例第96号。平成10年東京都条例第107号による改正前のもの)23条所定の環境影響評価書の内容に十分配慮し,環境の保全について適切な配慮をしたものであり,公害対策基本法19条に基づく公害防止計画にも適合するものであって,鉄道騒音に対して十分な考慮を欠くものであったとはいえないこと,(3)上記の比較検討において,取得済みの用地の取得費等を考慮せずに事業費を算定したことは,今後必要となる支出額を予測するものとして合理性を有するものであることなど判示の事情の下では,上記の都市計画の変更が鉄道の構造として高架式を採用した点において裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法であるということはできない。
都知事が行った都市高速鉄道に係る都市計画の変更が鉄道の構造として高架式を採用した点において裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法であるとはいえないとされた事例
都市計画法(平成4年法律第82号による改正前のもの)13条1項,都市計画法(平成4年法律第82号による改正前のもの)21条2項,都市計画法(平成11年法律第87号による改正前のもの)18条1項,公害対策基本法19条,東京都環境影響評価条例(昭和55年東京都条例第96号。平成10年東京都条例第107号による改正前のもの)23条
判旨
鉄道事業法に基づき鉄道施設工事の施行を認可するにあたり、その前提となる都市計画決定に裁量権の逸脱または濫用がある場合、当該認可処分も違法となる。本件では、騒音対策等の環境配慮において、都市計画決定の基礎となる判断に重要な事実の誤認や社会通念に照らし著しく妥当性を欠く点は認められず、裁量権の範囲内として認可処分は適法である。
問題の所在(論点)
都市計画法に基づく都市計画決定の裁量権の限界、およびそれを前提とする鉄道事業法上の認可処分の適法性。
規範
都市計画決定には専門的・技術的判断が必要とされるため、行政庁に広範な裁量権が認められる。当該判断が違法となるのは、(1)決定が基礎とした事実の認定に重要な誤りがある場合、または(2)事実に対する評価が明らかに合理性を欠くか、判断の過程に社会通念に照らし著しく妥当性を欠く点がある等により、裁量権の範囲を逸脱またはこれを濫用したと認められる場合に限られる。
事件番号: 平成16(行ヒ)114 / 裁判年月日: 平成17年12月7日 / 結論: その他
1 都市計画事業の事業地の周辺に居住する住民のうち同事業が実施されることにより騒音,振動等による健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある者は,都市計画法(平成11年法律第160号による改正前のもの)59条2項に基づいてされた同事業の認可の取消訴訟の原告適格を有する。 2 鉄道の連続立体交差化を内容と…
重要事実
小田急小田原線の複々線化事業(連続立体交差事業)について、東京都知事が都市計画決定を行い、運輸大臣(当時)がこれに基づき鉄道施設工事の施行を認可した。周辺住民は、高架方式の採用による騒音・振動等の環境悪化を理由に、地下方式を採用すべきであったとして認可の取消しを求めた。当時、環境影響評価書の作成段階では、遮音壁の設置やバラストマットの敷設等の防音対策を講じることで、騒音値は当時の要請(昼間60デシベル以下等)をほぼ下回ると予測されていた。
あてはめ
まず、地下方式か高架方式かの選択において、地下方式は工費が膨大(高架の約3倍)であり、地下埋設物や既存駅の構造から技術的困難が伴う一方、高架方式は防音壁等の適切な対策により環境への影響を一定範囲内に抑制可能と判断された点は、合理的な比較検討を経たものといえる。次に、環境配慮の点では、予測された騒音値が目標値を概ね下回っており、当時の技術水準に照らして可能な騒音低減措置が計画に含まれていた。したがって、代替案(地下方式)を不採用とし、高架方式を選択した行政庁の判断が、調査・検討に欠けるところがあった、あるいは社会通念上著しく不当であるとはいえず、裁量権の範囲を逸脱・濫用したものとは解されない。
結論
本件認可処分の前提となった都市計画決定に裁量権の逸脱・濫用は認められず、認可処分は適法である。原告らの請求は棄却されるべきである。
実務上の射程
小田急線高架化訴訟(最判平成18年11月2日)。都市計画決定の裁量審査について「小田急裁量基準」とも呼ばれる枠組みを確立した重要判例である。
事件番号: 平成15(行ヒ)321 / 裁判年月日: 平成18年9月4日 / 結論: 破棄差戻
建設大臣が,林業試験場の跡地を利用して設置される公園に関する都市計画を決定するに当たって,上記試験場には貴重な樹木が多くその保全のためには上記試験場の南門の位置に上記公園の南門を設けるのが望ましいという前提の下に,南門と区道との接続部分として利用するため,上記試験場と区道とに挟まれた土地のうち,国家公務員宿舎の敷地とし…
事件番号: 平成8(行ツ)76 / 裁判年月日: 平成11年11月25日 / 結論: 棄却
都市計画事業の事業地の周辺地域に居住し又は通勤、通学しているが事業地内の不動産につき権利を有しない者は、都市計画法五九条二項に基づく同事業の認可処分又は同条三項に基づく同事業の承認処分の取消しを求める原告適格を有しない。
事件番号: 昭和55(行ツ)99 / 裁判年月日: 昭和59年2月16日 / 結論: 棄却
土地収用法三四条の三の規定に基づく手続開始の告示は、抗告訴訟の対象とならない。
事件番号: 平成14(行ツ)187 / 裁判年月日: 平成17年11月1日 / 結論: 棄却
昭和13年に旧都市計画法(昭和43年法律第100号による廃止前のもの)3条に基づき決定された都市計画に係る計画道路の区域内にその一部が含まれる土地が,当初は市街地建築物法の規定に基づき,後に建築基準法(昭和43年法律第101号による改正前のもの)44条2項に基づいて建築物の建築等の制限を課せられ,現に都市計画法53条に…