被告人が強姦等の犯行状況とされるものを撮影録画したデジタルビデオカセットについて,被告人の委託を受けて保管していた弁護士である弁護人により証拠請求がされ,更にその複製DVDが公判期日で被告人及び弁護人の異議なく取り調べられているなどの本件事実関係(判文参照)の下では,上記デジタルビデオカセットは,刑訴法105条の「他人の秘密に関するもの」に当たらない。
弁護士である弁護人が被告人の委託を受けて保管している同人の犯行状況とされるものを撮影録画したデジタルビデオカセットについて,刑訴法105条の「他人の秘密に関するもの」に当たらないとされた事例
刑訴法99条1項,刑訴法99条3項,刑訴法105条
判旨
弁護人が保管する証拠物であっても、被告人の意思に基づく訴訟活動によりその内容が公判等で開示され、客観的に「秘密」でなくなった場合には、刑事訴訟法105条の押収拒絶権を行使することはできない。
問題の所在(論点)
被告人の犯行状況を録画した媒体が、弁護士による証拠提出や公判での取調べを経た後においても、刑事訴訟法105条の「他人の秘密に関するもの」として押収拒絶権の対象となるか。
規範
刑事訴訟法105条にいう「他人の秘密に関するもの」とは、公開されることによって本人が不利益を被るおそれがある、未だ公にされていない情報を指す。弁護人が被告人から委託を受けて保管する物であっても、被告人の意思に基づく訴訟活動の結果として、当該物品に記録された情報の全てが既に法廷等で開示されている場合には、もはや「秘密」としての保護に値しないため、同条の押収拒絶権は認められない。
重要事実
弁護人らは、強姦等被告事件の被告人から、犯行状況が録画されたビデオカセット4点の保管を委託されていた。このうち一部は、主任弁護人が捜査段階で警察に任意提出し、その後還付を受けたものであった。また、全てのカセットの複製DVDが、弁護人による証拠開示や証拠請求、あるいは検察官の証拠請求に対する同意を経て、公判期日で証拠として取り調べられていた。被告人自身もこれらの取調べに異議を述べていなかった。検察官の没収求刑に伴う裁判所の提出命令に対し、弁護人らは「被告人が所有権放棄を拒んでいる」「原本にのみ記録された会話がある可能性がある」として、105条に基づき提出を拒んだ。
事件番号: 平成19(し)424 / 裁判年月日: 平成19年12月25日 / 結論: 棄却
1 刑訴法316条の26第1項の証拠開示命令の対象となる証拠は,必ずしも検察官が現に保管している証拠に限られず,当該事件の捜査の過程で作成され,又は入手した書面等であって,公務員が職務上現に保管し,かつ,検察官において入手が容易なものを含む。 2 取調警察官が,犯罪捜査規範13条に基づき作成した備忘録であって,取調べの…
あてはめ
本件ビデオカセットは、主任弁護人による警察への任意提出や検察官への証拠開示がなされており、さらにその全内容を複製したDVDが、被告人および弁護人らの異議なく公判期日で取り調べられている。この一連の過程は被告人の意思に基づく訴訟活動の結果といえる。したがって、記録された情報の全ては、もはや未公表の「秘密」であるとは認められない。被告人が所有権を放棄していないという主権的・権利的な事情や、未知の会話が含まれる可能性という抽象的な懸念は、客観的に失われた秘密性を回復させるものではない。
結論
本件ビデオカセットは「他人の秘密に関するもの」に当たらず、弁護人らに押収拒絶権は認められない。したがって、提出命令を維持した原決定は正当である。
実務上の射程
本決定は、弁護人の秘匿特権(押収拒絶権)が、被告人の防御権行使の結果として開示された情報については及ばないことを明確にした。実務上、一度証拠として開示した媒体の原本について没収・差し押さえを免れるために本条を援用することは困難であるといえる。
事件番号: 令和6(許)5 / 裁判年月日: 令和6年10月16日 / 結論: 破棄自判
刑事事件の被疑者の1人として逮捕、勾留され、上記刑事事件について起訴されたが、無罪判決を受けたXが、上記の逮捕、勾留及び起訴が違法であると主張して国家賠償を求める本案訴訟において、検察官がAを上記刑事事件の被疑者の1人として取り調べる際にAの供述及びその状況を録音及び録画を同時に行う方法により記録した記録媒体のうちXに…
事件番号: 昭和44(し)59 / 裁判年月日: 昭和44年9月18日 / 結論: 棄却
一 裁判所のした提出命令は、刑訴法四二〇条二項にいう押収に関する決定にあたる。 二 いわゆる付審判請求事件についてなされた提出命令に対しては、刑訴法四一九条による抗告をすることができる。
事件番号: 平成23(行ト)42 / 裁判年月日: 平成23年10月11日 / 結論: 棄却
弁護士会の綱紀委員会の議事録のうち「重要な発言の要旨」に当たる部分は,次の(1)及び(2)の事情の下では,民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に該当する。 (1) 当該弁護士会の会則等の内部規則において,綱紀委員会の議事及び議事録は非公開とされており,綱紀委員会の議決に基づき懲戒委員会…
事件番号: 平成15(許)40 / 裁判年月日: 平成16年5月25日 / 結論: 破棄自判
1 刑訴法47条所定の「訴訟に関する書類」に該当する文書について文書提出命令の申立てがされた場合であっても,当該文書が民訴法220条3号所定のいわゆる法律関係文書に該当し,かつ,当該文書の保管者によるその提出の拒否が,民事訴訟における当該文書を取り調べる必要性の有無,程度,当該文書が開示されることによる被告人,被疑者等…