一 裁判所のした提出命令は、刑訴法四二〇条二項にいう押収に関する決定にあたる。 二 いわゆる付審判請求事件についてなされた提出命令に対しては、刑訴法四一九条による抗告をすることができる。
一 裁判所のした提出命令は刑訴法四二〇条二項にいう押収に関する決定にあたるか 二 いわゆる付審判請求事件についてなされた提出命令に対する不服申立の方法
刑訴法99条2項,刑訴法420条1項,刑訴法420条2項,刑訴法262条1項,刑訴法352条,刑訴法419条,刑訴法433条
判旨
裁判所が発した物件の提出命令は、刑事訴訟法420条2項の「押収に関する決定」に該当し、同条1項の抗告制限を受けない。したがって、提出命令を受けた者は同法419条及び352条に基づき、高等裁判所に対して通常抗告を申し立てることができる。
問題の所在(論点)
裁判所による物件の提出命令(刑訴法99条2項)に対し、刑事訴訟法420条1項にかかわらず、通常抗告を申し立てることができるか。提出命令が「押収に関する決定」(同条2項)に含まれるか、および「判決前にした決定」に準ずるものとして扱われるかが問題となる。
規範
1. 刑事訴訟法433条の特別抗告は、決定または命令に対し同法による不服申立てができない場合に限られる。2. 付審判請求手続において裁判所がなす決定は、同法420条1項の「訴訟手続に関し判決前にした決定」に準ずる。3. 提出命令は、物件の領置により押収の効力が生じるため、同条2項の「押収に関する決定」に当たり、同条1項の抗告制限は解除される。4. 特別の禁止規定がない限り、裁判所の決定に対しては同法419条・352条により通常抗告が可能である。
重要事実
福岡地方裁判所は、特別公務員暴行陵虐等付審判請求事件において、申立人らに対し、その所持する各フィルムの提出命令(刑訴法99条2項)を発した。これに対し、申立人らは高等裁判所への通常抗告を経ることなく、直接最高裁判所に対して特別抗告を申し立てた。本事案では、裁判所が発した提出命令に対し、通常の抗告が可能であるか(特別抗告の要件である「不服申立てができない決定」に該当するか)が争われた。
事件番号: 昭和46(し)98 / 裁判年月日: 昭和46年11月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】訴訟手続に関し判決前にした決定は、刑事訴訟法433条1項にいう「この法律により不服を申し立てることができない決定」には当たらない。そのため、証拠提出命令申立却下決定に対する異議申立棄却決定について、同条に基づく特別抗告をすることはできない。 第1 事案の概要:申立人が、証拠の提出命令を申し立てたと…
あてはめ
本件提出命令は、付審判請求手続の終局決定をなす前提として裁判所が行った決定であり、「判決前にした決定」に準ずる性質を有する。しかし、提出命令は対象物件を領置することで押収の効力を生じさせる性質を持つため、刑訴法420条2項の「押収に関する決定」に該当すると解される。この結果、同条1項による抗告制限(即時抗告規定がある場合を除き抗告不可)は解除される。本件において提出命令への不服申立てを禁じる規定は他に存在しないため、申立人は法419条・352条により高等裁判所へ通常抗告を申し立てることが可能であったといえる。
結論
本件提出命令には通常抗告による不服申立てが可能であるため、直接なされた特別抗告は刑訴法433条の要件を欠き不適法である。よって、本件抗告を棄却する。
実務上の射程
裁判所による提出命令や押収に関連する裁判については、刑訴法420条1項の制限にかかわらず、同条2項により通常抗告が可能である。実務上、捜査段階の裁判官の処分(法429条1項)ではなく「裁判所の決定」に対する不服申立てのルートを判示した点で重要である。答案上は、証拠収集手続に対する不服申立ての可否を検討する際、法420条2項の該当性を判断する準拠枠組みとして活用する。
事件番号: 平成27(し)556 / 裁判年月日: 平成27年11月19日 / 結論: 棄却
被告人が強姦等の犯行状況とされるものを撮影録画したデジタルビデオカセットについて,被告人の委託を受けて保管していた弁護士である弁護人により証拠請求がされ,更にその複製DVDが公判期日で被告人及び弁護人の異議なく取り調べられているなどの本件事実関係(判文参照)の下では,上記デジタルビデオカセットは,刑訴法105条の「他人…
事件番号: 昭和46(ク)58 / 裁判年月日: 昭和47年3月31日 / 結論: 棄却
(省 略)
事件番号: 昭和34(ク)142 / 裁判年月日: 昭和34年5月18日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】行政代執行の執行停止申請を却下した決定に対しては、民事訴訟法の規定に基づき通常抗告を行うことができるため、最高裁判所に対する特別抗告を提起することはできない。 第1 事案の概要:抗告人らは、長崎地方裁判所が行政代執行の執行停止申立事件について下した却下決定に対し、最高裁判所へ特別抗告状を提出した。…
事件番号: 平成2(し)52 / 裁判年月日: 平成2年4月24日 / 結論: 棄却
逃亡犯罪人引渡法一〇条一項三号の決定に対しては、不服申立は許されない。