逃亡犯罪人引渡法一〇条一項三号の決定に対しては、不服申立は許されない。
逃亡犯罪人引渡法一〇条一項三号の決定に対する不服申立の許否
逃亡犯罪人引渡法10条1項,刑訴法433条,裁判所法7条,裁判所法8号,憲法81条
判旨
逃亡犯罪人引渡法10条1項に基づく東京高等裁判所の決定は、刑事訴訟法上の決定ではなく、同法に不服申立の規定がない以上、これに対する抗告等の不服申立は許されない。
問題の所在(論点)
逃亡犯罪人引渡法10条1項に基づく高等裁判所の決定に対し、刑事訴訟法の規定を準用して特別抗告等の不服申立をすることが認められるか。
規範
刑事訴訟法等の一般的な不服申立手続は、別個の特別法に基づく手続には当然には適用されない。特別法において不服申立を認める明文の規定がない場合、その性質上、当該決定に対する不服申立は許されないと解するのが相当である。また、不服申立を認めない構成をとったとしても、手続の性質に鑑みれば憲法81条等に違反するものではない。
重要事実
東京高等裁判所は、逃亡犯罪人引渡法10条1項3号に基づき、逃亡犯罪人を引き渡すべき旨の決定(審査請求に対する決定)を行った。これに対し、抗告人は、当該決定は刑事訴訟法上の決定であるから特別抗告が可能であり、仮にこれを否定すれば憲法31条、76条3項、81条、98条2項に違反すると主張して不服を申し立てた。
事件番号: 令和1(し)699 / 裁判年月日: 令和元年11月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】逃亡犯罪人引渡法10条1項3号に基づく東京高等裁判所の決定に対し、刑事訴訟法433条1項の特別抗告を申し立てることは許されない。 第1 事案の概要:東京高等裁判所は、逃亡犯罪人引渡法10条1項3号に基づき、逃亡犯罪人を引き渡すことができる場合に該当する旨の決定(本件決定)を行った。これに対し、申立…
あてはめ
まず、本件決定は逃亡犯罪人引渡法に基づく「特別の決定」であり、刑事訴訟法上の決定にはあたらない。次に、逃亡犯罪人引渡法の条文を概観しても、当該決定に対する不服申立を認める規定は存在しない。不服申立制度は立法政策に委ねられる側面があるところ、同法の決定は行政処分に先行する司法的な審査手続としての性質を有しており、独立した不服申立を認めない制度設計であっても、憲法81条等の諸規定に抵触するものではないといえる。
結論
本件決定に対しては不服申立をすることは許されず、本件申立は不適法であるため棄却を免れない。
実務上の射程
行政不服審査法や刑事訴訟法の一般的準用が制限される「特別の手続」に関する射程を持つ。答案上は、逃亡犯罪人引渡手続の法的性格(司法審査を伴う行政手続)を論証する際や、明文のない不服申立の可否を論考する際の根拠として活用できる。
事件番号: 平成6(し)111 / 裁判年月日: 平成6年7月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】逃亡犯罪人引渡法10条1項に基づく東京高等裁判所の決定は、刑訴法上の決定ではなく同法に基づき行われる特別の決定であり、不服申立てを認める規定も存在しないため、刑訴法433条1項の特別抗告をすることは許されない。 第1 事案の概要:東京高等裁判所が逃亡犯罪人引渡法10条1項3号に基づき、逃亡犯罪人の…
事件番号: 令和5(し)735 / 裁判年月日: 令和5年11月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】逃亡犯罪人引渡法に基づく仮拘禁許可状の発付は、裁判官による特別の行為であり刑事訴訟法上の裁判に該当せず、同法に不服申立ての規定がない以上、特別抗告をすることは許されない。 第1 事案の概要:東京高等裁判所の裁判官が、逃亡犯罪人引渡法に基づき仮拘禁許可状を発付した(本件発付)。これに対し、被拘禁者側…
事件番号: 昭和44(し)59 / 裁判年月日: 昭和44年9月18日 / 結論: 棄却
一 裁判所のした提出命令は、刑訴法四二〇条二項にいう押収に関する決定にあたる。 二 いわゆる付審判請求事件についてなされた提出命令に対しては、刑訴法四一九条による抗告をすることができる。
事件番号: 昭和24(ク)2 / 裁判年月日: 昭和24年2月7日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する抗告は、訴訟法において特に最高裁判所に申し立てることが許された場合に限り認められ、それに該当しない抗告は不適法である。 第1 事案の概要:抗告人は、長崎地方裁判所が人身保護請求事件について下した決定に対し、不服を申し立てる趣旨の書面(上告状と題する書面)を最高裁判所に提出した。裁…