逃亡犯罪人引渡法10条1項3号の決定に対する不服申立ての許否
逃亡犯罪人引渡法10条1項,刑訴法433条,裁判所法7条,裁判所法8条,憲法81条
判旨
逃亡犯罪人引渡法10条1項に基づく東京高等裁判所の決定は、刑訴法上の決定ではなく同法に基づき行われる特別の決定であり、不服申立てを認める規定も存在しないため、刑訴法433条1項の特別抗告をすることは許されない。
問題の所在(論点)
逃亡犯罪人引渡法10条1項に基づく東京高等裁判所の審査決定に対し、刑事訴訟法上の特別抗告(433条1項)による不服申立てが可能か。また、不服申立てを認めないことが憲法に違反しないか。
規範
逃亡犯罪人引渡法に基づく東京高等裁判所の決定は、刑事訴訟法上の決定ではなく、同法が独自に規定する特別の性質を有する決定である。当該法律に不服申立てを認める特段の規定がない限り、刑事訴訟法の特別抗告に関する規定(刑訴法433条1項等)を適用または準用して不服を申し立てることはできない。また、このような解釈は憲法81条(違憲審査権)等の憲法上の規定に違反するものではない。
重要事実
東京高等裁判所が逃亡犯罪人引渡法10条1項3号に基づき、逃亡犯罪人の引渡しを相当とする旨の決定(本件決定)を下した。これに対し、当該犯罪人は刑事訴訟法433条1項の特別抗告の規定を準用すべきであると主張し、本件決定が憲法31条、32条、34条、37条2項等に違反するとして最高裁判所に不服を申し立てた。
あてはめ
まず、本件決定は逃亡犯罪人引渡法という特別法に基づき東京高等裁判所が行った「特別の決定」であって、刑事訴訟法に基づく決定そのものではない。次に、同法を確認すると、高裁の決定に対する不服申立てを認める明文の規定が存在しない。法律に規定がない以上、独自の不服申立ては許されないと解するのが相当である。さらに、決定の性質(司法的な性質を有するものの、最終的には行政処分である引渡しの前提をなすもの)に鑑みれば、不服申立てを認めずとも憲法81条等には抵触しない(判例の趣旨)。
事件番号: 令和1(し)699 / 裁判年月日: 令和元年11月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】逃亡犯罪人引渡法10条1項3号に基づく東京高等裁判所の決定に対し、刑事訴訟法433条1項の特別抗告を申し立てることは許されない。 第1 事案の概要:東京高等裁判所は、逃亡犯罪人引渡法10条1項3号に基づき、逃亡犯罪人を引き渡すことができる場合に該当する旨の決定(本件決定)を行った。これに対し、申立…
結論
本件決定に対して不服申立てをすることは許されず、本件申立ては不適法として棄却されるべきである。
実務上の射程
逃亡犯罪人引渡手続が「刑事手続」そのものではなく、行政処分を前提とした特別の手続であることを示す射程を持つ。答案上は、特別法に基づく裁判所の判断について、刑事訴訟法の不服申立て規定が当然に適用・準用されるわけではないことを説明する際に参照すべき判例である。
事件番号: 平成2(し)52 / 裁判年月日: 平成2年4月24日 / 結論: 棄却
逃亡犯罪人引渡法一〇条一項三号の決定に対しては、不服申立は許されない。
事件番号: 令和5(し)735 / 裁判年月日: 令和5年11月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】逃亡犯罪人引渡法に基づく仮拘禁許可状の発付は、裁判官による特別の行為であり刑事訴訟法上の裁判に該当せず、同法に不服申立ての規定がない以上、特別抗告をすることは許されない。 第1 事案の概要:東京高等裁判所の裁判官が、逃亡犯罪人引渡法に基づき仮拘禁許可状を発付した(本件発付)。これに対し、被拘禁者側…
事件番号: 昭和46(し)38 / 裁判年月日: 昭和46年6月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審たる高等裁判所がした保釈却下決定に対し、刑訴法433条の特別抗告を直接申し立てることは許されず、同法428条に基づき当該高等裁判所に異議の申立てをすべきである。 第1 事案の概要:1. 控訴審たる高等裁判所が保釈却下決定を行った。 2. これに対し、申立人は高等裁判所への異議申立てを行わず、…
事件番号: 平成17(し)346 / 裁判年月日: 平成17年8月23日 / 結論: 棄却
少年法20条による検察官送致決定に対しては,特別抗告をすることはできない。