1 外国法に基づいて設立された組織体が所得税法2条1項7号及び法人税法2条4号に定める外国法人に該当するか否かは,まず,①当該組織体に係る設立根拠法令の規定の文言や法制の仕組みから,当該組織体が当該外国の法令において日本法上の法人に相当する法的地位を付与されていること又は付与されていないことが疑義のない程度に明白であるか否かを検討して判断し,これができない場合には,②当該組織体が権利義務の帰属主体であると認められるか否かについて,当該組織体の設立根拠法令の規定の内容や趣旨等から,当該組織体が自ら法律行為の当事者となることができ,かつ,その法律効果が当該組織体に帰属すると認められるか否かという点を検討して判断すべきである。 2 米国デラウェア州改正統一リミテッド・パートナーシップ法に基づいて設立されたリミテッド・パートナーシップが所得税法2条1項7号及び法人税法2条4号に定める外国法人に該当し,上記リミテッド・パートナーシップが行う不動産賃貸事業に係る所得が上記リミテッド・パートナーシップに帰属するものと認められるという判示の事情の下においては,当該賃貸事業に係る投資事業に出資した者は,同人の総所得金額を計算するに当たり,当該賃貸事業に係る所得の金額の計算上生じた損失の金額を同人の所得の金額から控除することはできない。
1 外国法に基づいて設立された組織体が所得税法2条1項7号及び法人税法2条4号に定める外国法人に該当するか否かの判断の方法 2 米国デラウェア州の法律に基づいて設立されたリミテッド・パートナーシップが行う不動産賃貸事業に係る投資事業に出資した者につき,当該賃貸事業に係る損失の金額を同人の所得の金額から控除することができないとされた事例
(1,2につき)所得税法2条1項7号,法人税法2条4号 (2につき)所得税法26条,所得税法69条1項
判旨
米国デラウェア州法に基づくリミテッド・パートナーシップ(LPS)は、わが国の所得税法上の「外国法人」に該当し、その事業から生じる所得はLPS自身に帰属するため、日本の居住者である出資者は当該事業の損失を自身の所得と損益通算することはできない。
問題の所在(論点)
外国法に基づき設立された組織体(本件LPS)が、所得税法2条1項7号等にいう「外国法人」に該当するか。特に、LPSが「権利義務の帰属主体」として認められるか。また、その結果として、LPSが行う事業の損益を出資者個人の所得として損益通算できるか。
規範
外国法に基づき設立された組織体が所得税法2条1項7号等の「外国法人」に該当するかは、当該組織体が日本法上の法人との対比においてわが国の租税法上の納税義務者としての適格性を基礎付ける属性を備えているかという観点から判断する。具体的には、①設立根拠法令の規定や法制の仕組みから、日本法上の法人に相当する法的地位が付与されていることが明白か否かを検討し、それが困難な場合には、②当該組織体が権利義務の帰属主体(自ら法律行為の当事者となり、その法律効果が自身に帰属する主体)と認められるか否かにより判断する。
事件番号: 平成17(行ヒ)96 / 裁判年月日: 平成18年11月16日 / 結論: その他
納税者が平成11年分の所得税の確定申告において勤務先の日本法人の親会社である外国法人から付与されたストックオプションの権利行使益を一時所得として申告したところ,同権利行使益が給与所得に当たるとして増額更正がされた場合において,(1)外国法人である親会社から日本法人である子会社の従業員等に付与されたストックオプションに係…
重要事実
日本の居住者である納税者(出資者)らは、米国デラウェア州法(州LPS法)に基づき設立されたLPSを通じて、米国所在の中古住宅の賃貸事業に投資した。出資者らは、当該事業から生じた損失を、自身の日本での不動産所得の計算上、他の所得と損益通算(所得税法69条1項)して確定申告を行った。これに対し税務署長は、LPSは外国法人に該当し、その損益は出資者に直接帰属しないとして更正処分等を行った。
あてはめ
①州LPS法はLPSを「separate legal entity」と規定するが、これが日本法上の法人に相当するかは一義的に明白とはいえない。しかし、②実質的に検討すると、州LPS法はLPSに自己の名で法律行為を行う権限を付与し、その効果がLPS自身に帰属することを前提としている。また、パートナーは特定のLPS財産について持分を有しないと規定されている。これらに鑑みれば、本件LPSは自ら法律行為の当事者となり、その法律効果が帰属する「権利義務の帰属主体」であると認められる。したがって、本件LPSは「外国法人」に該当する。
結論
本件LPSは外国法人に該当するため、賃貸事業による所得はLPSに帰属し、出資者らの課税所得の範囲には含まれない。したがって、出資者らは当該事業の損失を自身の他の所得と損益通算することはできない。
実務上の射程
外国の団体を用いた節税スキーム(パススルー課税を前提とした損益通算)の可否を判断するリーディングケースである。答案上は、まず「外国法人」の定義が不明確であることを示し、法人の本質的属性である「権利義務の帰属主体性」を基準として提示した上で、根拠法令(本件では州LPS法)の具体的な条文内容をあてはめる必要がある。
事件番号: 平成16(行ヒ)141 / 裁判年月日: 平成17年1月25日 / 結論: 棄却
米国法人の子会社である日本法人の代表取締役が,親会社である米国法人から親会社の株式をあらかじめ定められた権利行使価格で取得することができる権利(いわゆるストックオプション)を付与されてこれを行使し,権利行使時点における親会社の株価と所定の権利行使価格との差額に相当する経済的利益を得た場合において,上記権利は,親会社が同…
事件番号: 平成21(行ヒ)199 / 裁判年月日: 平成21年12月4日 / 結論: 棄却
租税特別措置法(平成14年法律第79号による改正前のもの)40条の4第1項は,「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とシンガポール共和国政府との間の協定」7条1項に違反しない。
事件番号: 平成15(行ヒ)215 / 裁判年月日: 平成17年12月19日 / 結論: 破棄自判
我が国の銀行が,本来は外国法人が負担すべき外国法人税(外国の法令により課される法人税に相当する税)について対価を得て引き受ける取引を行い,同取引に基づいて同銀行が負担した外国法人税が上記対価を上回るため,同取引自体によっては損失を生ずるが,上記外国法人税の負担を自己の外国税額控除の余裕枠を利用して国内で納付すべき法人税…
事件番号: 平成16(行ヒ)326 / 裁判年月日: 平成18年2月23日 / 結論: 破棄自判
我が国の銀行が,本来は外国法人が負担すべき外国法人税(外国の法令により課される法人税に相当する税)について対価を得て引き受ける取引を行い,同取引に基づいて同銀行が負担した外国法人税が上記対価を上回るため,同取引自体によっては損失を生ずるが,上記外国法人税の負担を自己の外国税額控除の余裕枠を利用して国内で納付すべき法人税…