我が国の銀行が,本来は外国法人が負担すべき外国法人税(外国の法令により課される法人税に相当する税)について対価を得て引き受ける取引を行い,同取引に基づいて同銀行が負担した外国法人税が上記対価を上回るため,同取引自体によっては損失を生ずるが,上記外国法人税の負担を自己の外国税額控除の余裕枠を利用して国内で納付すべき法人税額を減らすことによって免れ,最終的に利益を得ようとする目的で上記取引を行ったという事情の下においては,上記外国法人税を法人税法(平成10年法律第24号による改正前のもの)69条の定める外国税額控除の対象とすることは,外国税額控除制度を濫用し税負担の公平を著しく害するものとして許されない。
外国税額控除の余裕枠を利用して利益を得ようとする取引に基づいて生じた所得に対して課された外国法人税を法人税法(平成10年法律第24号による改正前のもの)69条の定める外国税額控除の対象とすることが許されないとされた事例
法人税法(平成10年法律第24号による改正前のもの)69条
判旨
外国税額控除制度の本来の趣旨・目的を著しく逸脱する態様で納税を免れ、税負担の公平を著しく害する取引については、法人税法69条の制度の濫用に当たり、同条の適用が否定される。
問題の所在(論点)
本来は外国法人が負担すべき税負担を、国内法人が対価を得て引き受け、自己の外国税額控除の枠を利用して国内税額を減少させる行為が、法人税法69条(外国税額控除)の制度濫用として否定されるか。
規範
法人税法69条の外国税額控除制度は、国際的二重課税の排除および事業活動に対する税制の中立性確保を目的とする。この趣旨・目的に照らし、制度を本来の目的から著しく逸脱する態様で利用して納税を免れ、税負担の公平を著しく害すると認められる場合には、当該制度を濫用するものとして、外国税額の控除は認められない。
重要事実
事件番号: 平成16(行ヒ)326 / 裁判年月日: 平成18年2月23日 / 結論: 破棄自判
我が国の銀行が,本来は外国法人が負担すべき外国法人税(外国の法令により課される法人税に相当する税)について対価を得て引き受ける取引を行い,同取引に基づいて同銀行が負担した外国法人税が上記対価を上回るため,同取引自体によっては損失を生ずるが,上記外国法人税の負担を自己の外国税額控除の余裕枠を利用して国内で納付すべき法人税…
銀行業を営むX(被上告人)は、ニュージーランド法人Dらの資金運用につき、クック諸島での源泉税を回避するため、Xの外国税額控除の「余裕枠」を第三者に利用させる取引(本件取引)を行った。本件取引は、XがE社へ貸し付ける形式をとりつつ、同時に同額をF社から預金として受け入れ、預金利息を貸付利息(源泉税控除後)に連動させる内容であった。Xは手数料を得るが、外国法人税を負担すれば取引自体では損失が生じ、国内での外国税額控除を前提として初めて最終的な利益が得られる仕組みであった。
あてはめ
本件取引は、本来外国法人が負担すべき税をXが対価を得て引き受け、国内税額を減らすことで最終利益を得るものであり、取引自体では外国税を負担すれば損失が生じる。これは、わが国の納税者の負担の下に取引関係者の利益を図るものであり、国際的二重課税の排除という制度本来の趣旨目的から著しく逸脱する。したがって、免れた税額を原資として利益を享受する態様の利用は、税負担の公平を著しく害するといえる。
結論
本件取引に基づく外国法人税を法人税法69条の控除対象とすることは、同制度の濫用として許されない。したがって、更正処分等は適法である。
実務上の射程
租税回避行為に対し、個別的な否認規定がない場合でも「制度の目的・趣旨」を根拠に「権利濫用(制度の濫用)」の法理を用いて否認できることを示した重要判例。事実関係において、取引単体での経済合理性の欠如や、国内税額控除を前提とした利益捻出スキームであることが認定のポイントとなる。
事件番号: 平成20(行ヒ)43 / 裁判年月日: 平成21年12月3日 / 結論: その他
内国法人によりチャネル諸島ガーンジーに設立された子会社が,複数の課税方法のうちから一つを選択することを納税者に許していたガーンジーの法人所得税制の下で,0%超30%以下の範囲で税務当局に申請し承認された税率が適用税率になるとの制度に基づき26%の税率で所得税の賦課決定を受けてこれを納付した場合において,次の1〜5などの…
事件番号: 平成10(行ツ)77 / 裁判年月日: 平成16年9月7日 / 結論: 破棄自判
会社がその代表者に代わって同人の借入金の利息を支払ったことにより,その経済的利益に相当する同人に対する給与等(賞与)の支払があったことになって会社に源泉徴収による所得税の納税義務が客観的に成立したが,実際にされた納税の告知は,会社が同人に上記利息相当額を無利息で貸し付け,この貸付けに係る得べかりし利息相当額の経済的利益…
事件番号: 平成21(行ヒ)199 / 裁判年月日: 平成21年12月4日 / 結論: 棄却
租税特別措置法(平成14年法律第79号による改正前のもの)40条の4第1項は,「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とシンガポール共和国政府との間の協定」7条1項に違反しない。
事件番号: 平成18(行ヒ)295 / 裁判年月日: 平成19年7月6日 / 結論: その他
納税者が平成12年分の所得税の確定申告において勤務先の日本法人の親会社である外国法人から付与されたストックオプションの権利行使益を一時所得として申告したところ,同権利行使益が給与所得に当たるとして増額更正がされた場合において,次の(1)〜(3)などの判示の事情の下では,納税者が同権利行使益を一時所得として申告し,同権利…