1 物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されているいわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレームの場合であっても,その特許発明の技術的範囲は,当該製造方法により製造された物と構造,特性等が同一である物として確定される。 2 物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されているいわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレームの場合において,当該特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは,出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか,又はおよそ実際的でないという事情が存在するときに限られる。 (1,2につき補足意見及び意見がある。)
1 物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されているいわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレームにおける特許発明の技術的範囲の確定 2 物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されているいわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレームと明確性要件
(1につき)特許法70条1項 (2につき)特許法36条6項2号
判旨
物の発明について製造方法が記載されたプロダクト・バイ・プロセス・クレームの技術的範囲は、製造方法にかかわらず構造・特性が同一の物すべてに及ぶ「物同一説」を採る。ただし、明確性要件(特許法36条6項2号)に適合するのは、構造・特性による直接特定が「不可能または非実際的」な事情がある場合に限られる。
問題の所在(論点)
物の発明の請求項に製造方法が記載されている場合(プロダクト・バイ・プロセス・クレーム)において、特許発明の技術的範囲をいかに確定すべきか。また、その記載が明確性要件(特許法36条6項2号)に適合するための要件は何か。
規範
1. 物の発明の技術的範囲(特許法70条1項)は、請求項に製造方法が記載されていても、原則として当該製造方法により製造された物と構造、特性等が同一である物として確定される(物同一説)。 2. もっとも、製造方法の記載は一般に発明の内容を不明確にし第三者の予測可能性を奪うため、プロダクト・バイ・プロセス・クレームが明確性要件(36条6項2号)を充たすのは、出願時において当該物をその構造または特性により直接特定することが不可能であるか、またはおよそ実際的でないという事情(不可能・非実際的事情)が存在する場合に限られる。
事件番号: 平成24(受)2658 / 裁判年月日: 平成27年6月5日 / 結論: 破棄差戻
物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されているいわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレームの場合であっても,その発明の要旨は,当該製造方法により製造された物と構造,特性等が同一である物として認定される。 (補足意見及び意見がある。)
重要事実
1. 上告人(特許権者)は、特定の工程a〜eを含む方法によって製造される、不純物(プラバスタチンラクトン等)の含有量が一定値未満であるプラバスタチンナトリウム(物の発明)の特許を有していた。 2. 被上告人が製造販売する医薬品は、不純物含有量の数値範囲については本件発明と同一であったが、その製造方法は工程a(濃縮有機溶液の形成)を含むものではなかった。 3. 原審は、物を直接特定することが困難な事情がない限り、技術的範囲は記載された製造方法に限定される(製法限定説)として請求を棄却した。
あてはめ
1. 特許法70条1項の解釈として、特許発明が「物」である以上、その効力は製造方法の如何を問わず、同一の構造・特性を有する「物」に及ぶと解すべきである。したがって、原審が採用した製法限定説は、物の発明の本質に反し是認できない。 2. 他方で、製造方法による特定を無制限に認めれば第三者の不利益を招く。そこで、発明の保護と公示のバランスの観点から、構造・特性による特定が「不可能」または「およそ実際的でない(著しい時間・費用の要する場合等)」という特別な事情がある場合に限り、例外的に明確性要件を充たすものと解する。 3. 本件において、原審は不適切な基準(製法限定説)に基づき判断しており、また上記「不可能・非実際的事情」の有無についても審理を尽くしていない。
結論
原判決を破棄し、本件発明の技術的範囲を「物同一説」に基づき確定した上で、「不可能・非実際的事情」の存否(明確性要件の適否)等を審理させるため、知財高裁に差し戻す。
実務上の射程
判決文からは不明(差戻し審での審理に委ねられた)。
事件番号: 平成28(受)1242 / 裁判年月日: 平成29年3月24日 / 結論: 棄却
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事件番号: 平成10(オ)604 / 裁判年月日: 平成11年7月16日 / 結論: 破棄自判
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事件番号: 平成18(受)1772 / 裁判年月日: 平成20年4月24日 / 結論: 棄却
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