物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されているいわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレームの場合であっても,その発明の要旨は,当該製造方法により製造された物と構造,特性等が同一である物として認定される。 (補足意見及び意見がある。)
物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されているいわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレームにおける発明の要旨の認定
特許法29条1項,特許法29条2項,特許法36条6項2号
判旨
物の発明の特許請求の範囲に製造方法が記載されている場合、発明の要旨は製造方法により製造された物と構造・特性等が同一な物として認定される。ただし、出願時に構造・特性により直接特定することが不可能・非実際的であるとの特段の事情がない限り、明確性要件(特許法36条6項2号)に違反し無効理由となる。
問題の所在(論点)
物の発明の特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合(PBPクレーム)において、①発明の要旨をどのように認定すべきか、また②どのような場合に明確性要件(特許法36条6項2号)に適合するか。
規範
1. 物の発明の特許請求の範囲に製造方法が記載されている場合(プロダクト・バイ・プロセス・クレーム)、発明の要旨は、その製造方法により製造された物と構造、特性等が同一である物として認定される(物同一説)。 2. もっとも、当該記載が明確性要件(特許法36条6項2号)に適合するのは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情(不可能・非実際的事情)が存在するときに限られる。
重要事実
上告人は、特定の製造段階(工程a〜e)を経て製造される、不純物混入量が極めて少ないプラバスタチンナトリウム(医薬品成分)の物の発明について特許権を有していた。被上告人が輸入販売する製品が、本件特許の不純物基準を満たしていたため、上告人は差し止め等を求めて提訴した。原審は、構造等による特定が不可能・困難な事情がない限り、発明の要旨は記載された「製造方法により製造された物」に限定される(製法限定説)と判断し、進歩性欠如により無効とすべきものとして請求を棄却したため、上告人が上告した。
事件番号: 平成24(受)1204 / 裁判年月日: 平成27年6月5日 / 結論: 破棄差戻
1 物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されているいわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレームの場合であっても,その特許発明の技術的範囲は,当該製造方法により製造された物と構造,特性等が同一である物として確定される。 2 物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載さ…
あてはめ
1. 特許の効力は、物の発明であれば製造方法を問わず構造・特性が同一の物に及ぶ。したがって、要旨認定においても記載された製法に限定せず、物として同一であれば権利範囲に含まれると解すべきである。原審が製法限定説を採った点は是認できない。 2. 他方、製法記載は物の構造・特性を不明確にし、第三者の予測可能性を奪うおそれがある。本件のような医薬品成分において、出願時に構造等による直接特定が「不可能」または「過大な時間・費用を要し非実際的」な事情(不可能・非実際的事情)が存するかを審理せずに明確性を肯定することはできない。
結論
原判決を破棄し、知的財産高等裁判所に差し戻す。本件発明の要旨を「物」として認定した上で、不可能・非実際的事情の有無を審理し、明確性要件の適否を判断させる必要がある。
実務上の射程
PBPクレーム全般(真正・不真正を問わず)に射程が及ぶ。侵害訴訟および審査・審判のいずれにおいても「物同一説」で要旨認定を行う一方、不可能・非実際的事情の立証がない限り、一律に明確性要件違反として無効(または拒絶)とされる強力な規範である。実務上、安易な製法記載を抑制し、原則として構造・特性による特定を求める趣旨である。
事件番号: 平成28(受)1242 / 裁判年月日: 平成29年3月24日 / 結論: 棄却
1 出願人が,特許出願時に,特許請求の範囲に記載された構成中の他人が製造等をする製品又は用いる方法と異なる部分につき,同製品等に係る構成を容易に想到することができたにもかかわらず,これを特許請求の範囲に記載しなかった場合であっても,それだけでは,同製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外され…
事件番号: 平成18(受)1772 / 裁判年月日: 平成20年4月24日 / 結論: 棄却
XのYに対する特許権の侵害を理由とする損害賠償等の請求につき,Yの特許法104条の3第1項に基づく無効主張を採用して請求を棄却すべきものとする控訴審判決がされた後に,上記特許権に係る特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正を認める審決が確定した場合において,Xが同審決が確定したため民訴法338条1項8号の再審事由が存すると…
事件番号: 平成10(オ)604 / 裁判年月日: 平成11年7月16日 / 結論: 破棄自判
一 方法の発明に係る特許権に基づき、当該方法を使用して品質規格を検定した物の製造販売の差止めを請求することはできない。 二 特許法一〇〇条二項にいう「侵害の予防に必要な行為」は、特許発明の内容、現に行われ又は将来行われるおそれがある侵害行為の態様、特許権者が行使する差止請求権の具体的内容等に照らし、差止請求権の行使を実…