一 方法の発明に係る特許権に基づき、当該方法を使用して品質規格を検定した物の製造販売の差止めを請求することはできない。 二 特許法一〇〇条二項にいう「侵害の予防に必要な行為」は、特許発明の内容、現に行われ又は将来行われるおそれがある侵害行為の態様、特許権者が行使する差止請求権の具体的内容等に照らし、差止請求権の行使を実効あらしめるものであって、かつ、差止請求権の実現のために必要な範囲内のものであることを要する。 三 方法の発明に係る特許権を侵害する行為が医薬品の品質規格の検定のための確認試験において当該方法を使用する行為であって、侵害差止請求としては当該方法の使用の差止めを請求することができるにとどまるという事情の下においては、右医薬品の廃棄及びこれについての薬価基準収載申請の取下げは、差止請求権の実現のために必要な範囲を超えるものであって、特許法一〇〇条二項にいう「侵害の予防に必要な行為」に当たらない。
一 方法の発明に係る特許権に基づき当該方法を使用して品質規格を検定した物の製造販売の差止めを請求することの可否 二 特許法一〇〇条二項にいう「侵害の予防に必要な行為」の意義 三 医薬品の品質規格の確認試験においてする方法の使用が特許権を侵害する場合において右医薬品の廃棄及びこれについての薬価基準収載申請の取下げが特許法一〇〇条二項にいう「侵害の予防に必要な行為」に当たらないとされた事例
特許法2条3項,特許法68条,特許法100条1項,特許法100条2項,健康保険法43条の9第2項,平成10年厚生省告示第30号(使用薬剤の購入価格(薬価基準))
判旨
「方法の発明」は「物を生産する方法の発明」と明確に区別されるため、前者の特許権に基づき、当該方法を用いて製造された物の販売等の差止めや廃棄を請求することはできない。特許法100条2項の「侵害の予防に必要な行為」は、差止請求権の実効性確保のために必要な範囲内に限られる。
問題の所在(論点)
「方法の発明」の特許権に基づき、その方法を製造工程の一部に利用して作られた完成品の販売差止めや廃棄(特許法100条1項・2項)を請求できるか。
規範
1. 「方法の発明」(特許法2条3項2号)と「物を生産する方法の発明」(同項3号)は、条文上判然と区別されており、前者の特許権に後者と同様の効力を認めることはできない。いずれに該当するかは、特許請求の範囲の記載に基づき判定すべきである。 2. 特許法100条2項の「侵害の予防に必要な行為」とは、特許権の内容、侵害行為の態様、差止請求の具体的内容等に照らし、差止請求の実効性を確保するために必要かつ合理的な範囲内の行為を指す。
事件番号: 平成24(受)1204 / 裁判年月日: 平成27年6月5日 / 結論: 破棄差戻
1 物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されているいわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレームの場合であっても,その特許発明の技術的範囲は,当該製造方法により製造された物と構造,特性等が同一である物として確定される。 2 物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載さ…
重要事実
被上告人(原告)は、生理活性物質の測定法に関する「方法の発明」(本件発明)の特許権者である。上告人(被告)は、医薬品の製造工程において、品質規格の検定のために本件発明の範囲に属する測定方法(本件方法)を使用していた。被上告人は、上告人に対し、本件方法を用いた医薬品の製造・販売の差止め、医薬品の廃棄、および薬価基準収載申請の取下げを求めて提訴した。
あてはめ
1. 本件発明の特許請求の範囲には「測定法」と記載されており、物を生産する方法ではなく「方法の発明」に当たる。したがって、効力は方法の使用行為にのみ及び、製造された物の販売等には及ばない。 2. 上告人が製造工程で本件方法を使用することは特許権侵害となるが、本件発明は物の生産自体を目的とするものではないため、完成品である医薬品の製造・販売は侵害行為を構成しない。 3. 医薬品の廃棄や薬価申請の取下げは、方法の使用禁止という差止請求の実現に必要な範囲を超えており、「侵害の予防に必要な行為」には当たらない。
結論
本件発明は「方法の発明」であり、本件方法を使用して製造された医薬品の販売等の差止め、廃棄、薬価申請の取下げ請求はいずれも認められない。
実務上の射程
「単純方法」と「製造方法」の区別を厳格に示した判例であり、答案上、方法の発明の効力範囲を論ずる際の主要根拠となる。また、100条2項に基づく附随的請求の限界を「必要最小限度」の観点から論証する際にも有用である。
事件番号: 平成24(受)2658 / 裁判年月日: 平成27年6月5日 / 結論: 破棄差戻
物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されているいわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレームの場合であっても,その発明の要旨は,当該製造方法により製造された物と構造,特性等が同一である物として認定される。 (補足意見及び意見がある。)
事件番号: 平成18(受)1772 / 裁判年月日: 平成20年4月24日 / 結論: 棄却
XのYに対する特許権の侵害を理由とする損害賠償等の請求につき,Yの特許法104条の3第1項に基づく無効主張を採用して請求を棄却すべきものとする控訴審判決がされた後に,上記特許権に係る特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正を認める審決が確定した場合において,Xが同審決が確定したため民訴法338条1項8号の再審事由が存すると…
事件番号: 平成16(受)997 / 裁判年月日: 平成17年6月17日 / 結論: 棄却
特許権者は,その特許権について専用実施権を設定したときであっても,当該特許権に基づく差止請求権を行使することができる