XのYに対する特許権の侵害を理由とする損害賠償等の請求につき,Yの特許法104条の3第1項に基づく無効主張を採用して請求を棄却すべきものとする控訴審判決がされた後に,上記特許権に係る特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正を認める審決が確定した場合において,Xが同審決が確定したため民訴法338条1項8号の再審事由が存するとして控訴審の判断を争うことは,次の(1),(2)などの判示の事情の下では,紛争の解決を不当に遅延させるものとして,特許法104条の3の規定の趣旨に照らし許されない。 (1) 第1審判決もYの無効主張を採用してXの請求を棄却していたものであり,Xは,少なくとも控訴審の審理において,早期にYの無効主張を否定し又は覆す主張を提出すべきであった。 (2) 上記審決はXが控訴審の口頭弁論終結後にした訂正審判請求によるものであるところ,同審決の内容やXが1年以上に及ぶ控訴審の審理期間中に2度にわたって訂正審判請求とその取下げを繰り返したことにかんがみると,XがYの無効主張を否定し又は覆すものとして上記口頭弁論終結後の訂正審判請求に係る主張を口頭弁論終結前に提出しなかったことを正当化する理由を見いだせない。 (意見がある。)
特許法104条の3第1項に基づく無効主張を採用して特許権の侵害を理由とする損害賠償等の請求を棄却すべきものとする控訴審判決がされた後に特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正審決が確定した場合において,同審決が確定したため民訴法338条1項8号の再審事由が存するとして控訴審の判断を争うことが特許法104条の3の規定の趣旨に照らし許されないとされた事例
特許法104条の3,特許法126条,民訴法338条1項8号
判旨
特許権侵害訴訟において、事実審が特許無効の抗弁(特許法104条の3第1項)を認めて請求を棄却した後に訂正審決が確定した場合、特許権者がこれを理由に原審の判断を争うことは、紛争の迅速な解決を図る同条の趣旨に照らし、原則として許されない。
問題の所在(論点)
特許権侵害訴訟の事実審で特許法104条の3第1項により請求が棄却された後、上告審係属中に訂正審決が確定した場合に、特許権者が当該訂正を理由として原判決を覆すことが許されるか。
規範
特許法104条の3は、特許権侵害紛争を訴訟手続内で迅速に解決することを目的とする。同条2項が審理を不当に遅延させる目的の攻撃防御方法を却下できるとする趣旨に照らせば、特許無効の抗弁を否定・覆すための対抗主張(訂正の再抗弁等)も却下の対象となる。したがって、特許権者は事実審の審理、特に無効の抗弁が採用された後の控訴審において、早期に訂正による対抗主張を提出すべき義務を負い、正当な理由なく原判決言渡し後に訂正審決の確定を理由として原審の判断を争うことは、同条の趣旨に照らし許されない。
事件番号: 平成28(受)632 / 裁判年月日: 平成29年7月10日 / 結論: 棄却
特許権者が,事実審の口頭弁論終結時までに訂正の再抗弁(訂正により特許法104条の3第1項の規定に基づく無効の抗弁に係る無効理由が解消されることを理由とする再抗弁)を主張しなかったにもかかわらず,その後に同法104条の4第3号所定の特許請求の範囲の訂正をすべき旨の審決等が確定したことを理由に事実審の判断を争うことは,訂正…
重要事実
特許権者である上告人は、被上告人らに対し特許権侵害に基づき差止め等を請求した。第一審で被告側は無効の抗弁を主張し、裁判所は無効理由が明らかであるとして請求を棄却。上告人は控訴審で訂正審判請求と取下げを繰り返したが、口頭弁論終結時までに有効な訂正審決を得られず、原審も無効の抗弁を認めて控訴を棄却した。上告審係属中にようやく訂正審決が確定したため、上告人はこれが民訴法338条1項8号の再審事由(行政処分の変更)に当たり、原判決には法令違反があると主張した。
あてはめ
被上告人らは第一審から無効主張をしており、第一審判決もこれを採用していた。上告人は控訴審の1年以上に及ぶ審理期間中、早期に対抗主張(訂正の再抗弁)を提出する機会があったにもかかわらず、訂正審判請求と取下げを2度繰り返すなど不自然な訴訟活動を行い、口頭弁論終結前に対抗主張を尽くさなかった。このような状況で原判決後に確定した訂正審決を根拠に争うことは、紛争解決を不当に遅延させるものであり、特許法104条の3の趣旨に反する。上告人が早期に提出しなかったことを正当化する理由は見当たらない。
結論
上告人が訂正審決の確定を理由に原審の判断を争うことは許されず、原判決に民訴法325条2項の法令違反があるとはいえない。上告棄却。
実務上の射程
特許無効の抗弁に対する「訂正の再抗弁」は、事実審(特に控訴審)の口頭弁論終結時までに出し尽くす必要がある。本判決は「特許法104条の3による制限」として構成されており、同条の趣旨から、再審事由(民訴法338条1項8号)の有無を問わず、訴訟遅延を招く後出しの主張を封じる強力な射程を持つ。答案上は、特許権者側の懈怠や審理の状況を考慮し、同条の「迅速な解決」という趣旨から遮断効を論じる際に用いる。
事件番号: 平成24(受)2658 / 裁判年月日: 平成27年6月5日 / 結論: 破棄差戻
物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されているいわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレームの場合であっても,その発明の要旨は,当該製造方法により製造された物と構造,特性等が同一である物として認定される。 (補足意見及び意見がある。)
事件番号: 平成24(受)1204 / 裁判年月日: 平成27年6月5日 / 結論: 破棄差戻
1 物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されているいわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレームの場合であっても,その特許発明の技術的範囲は,当該製造方法により製造された物と構造,特性等が同一である物として確定される。 2 物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載さ…
事件番号: 平成28(受)1242 / 裁判年月日: 平成29年3月24日 / 結論: 棄却
1 出願人が,特許出願時に,特許請求の範囲に記載された構成中の他人が製造等をする製品又は用いる方法と異なる部分につき,同製品等に係る構成を容易に想到することができたにもかかわらず,これを特許請求の範囲に記載しなかった場合であっても,それだけでは,同製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外され…